farewell to paradise @Palau [Palau]
エスカレーターもない階段を上がり、出国に向かった。
レンタカーのキーのことはすっかり忘れ去り、
出国ゲートに向かうと係官が鎮座するブースの手前で呼び止められた。
てっきりパスポートのチェックであろうとポケットからパスポートを差し出した。
「パスポートはいいですよ。US$35、お願いします」
「は? なんです、それ?」
いきなり金額をいわれ、一気に警戒心が高まった。
発展国以外では、出入国に関しては係官のアヤシイ行為がままある。
そう、旅行者を狙って私腹を肥やそうとする、アレだ。
タイからカンボジアへ入る際はツーリスト・ヴィザ代をごまかされたし、
ラオスからタイへの入国でも長距離バスの乗客は丸ごと理由のわからない金を払わされた。
もっともラオスの件に関しては、バンコクで謎解きがされはしたのだが。
http://delfin.blog.so-net.ne.jp/2008-09-03 (カンボジア入国)
http://delfin.blog.so-net.ne.jp/2010-12-21 (ラオス越境)
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これらの不正が行われるのはもっぱら数の多い陸路に限ってのことなので、
空港でそんなことが、とクエスチョンマークが浮かんだ。
旅先では疑問に思ったことはすぐに解決したほうがいい。
「なんのお金ですか? 空港使用料ならチケットに切り込んであると思うけど」
「グリーン税です、政府が定めたものです」
とっさのことで気づかなかったが、
係員が座るテーブルにはしっかり「グリーン税」の説明書きと金額が明示されていた。
ソレを読み、財布からドル札を差し出す。
係員は慣れた手つきで領収書と笑顔を差し出し、出国ブースへと促してくれた。
説明書きに領収書とくれば、不正はない。
悪さをするようなやつは証拠に残るようなことはしないのだ。
カンボジアの係官がいい例だ。
とっさに疑った自身を呪いつつ、この楽園が腹黒い国でないことに胸を撫で下ろした。
(後日、調べるとパラオはチケットに切り込まれた空港使用料のほかに、
出国税+グリーン税=$35を出発時に現金で徴収する、と明示されていた。
単純にわたしが知らなかっただけなのでした)
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出国の手続きを終え、X-rayの手荷物検査へ進む。
出国の後に手荷物検査ってヘンだよな、と思いつつ、荷物を流し込むと、
警備員のおばちゃんに呼び止められた。
「カバン開けていいかしら?」
キャスターバッグひとつの旅、常に機内持ち込みにするため、
検査に引っかかるようなものは入れていない。
開けられて困るわけでもないので、不思議に思いながら、カバンを開けた。
「これ、ダメです」
どこかのホテルもらったアメニティのシャンプー、ボディーソ-プ、
バンコクで買ったヘア・ジェルが彼女の手で取り出された。
「え? なんで? 100ml以下じゃないですか」
「パラオではこれらの液体は持ち出せないことになっているんです」
「ユナイテッドは100ml以下はOK出しているけど?」
「パラオの取り決めです」
文句をいうこちらの表情を見て、規約が書かれた書類を差し出してきた。
英文には「この国では自然保護のためにあらゆる液体類の持ち出しは禁止」と書かれていた。
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「これ、廃棄していいですか?」
「ダメ、といったら?」
「ジップの袋に入っていればダイジョウブなんだけど、持ってる?」
「持ってないですよ。そういうのってそちらがくれるものでしょ?」
「ここにはないのよ。となると廃棄しかないわね」
「断って、戻ってバゲージ・チェックインするといってもできないでしょ?
もう出国手続きしちゃってるもんね」
「そうね、そういう例はないわねえ」
出国する人間の液体物を没収してもその国の自然保護にどうつながるのか、
まったくもって理解ができなかった。
ジップに入れればOK、というのも輪をかけて理解ができない。
買ったばかりのヘア・ジェルが捨てられることに瞬間的に腹を立てていたが、
書類に明文化されているのではどう立ち向かっても勝てるわけがなかった。
瞬時にクールダウンして、廃棄を承知し、キャスターバッグを閉じた。
「政府が決めたことだろうから、あなたに文句をいってもしかたないけど、
これって、手順といい、ルールといい、ヘンですよね?」
「そうね、でもわたしの口からは『ヘン』とはいえないわね」
「あ、そうですね。まあ、いいや。
でもきちんと対応してくれたので、パラオに悪いイメージを持たずに済みましたよ」
「わたしもそうであることを願うわ。楽しいフライトを」
「ありがとう。パラオともお別れです」
レンタカー、グリーン税、X-ray検査・・・。
ひたすらなにもなく、静かに過ぎていた連日を覆すかのように、
出発前に来て、畳み掛けるように煩雑なことが重なった。
3つのゲートだけが並ぶ国際空港の小さな小さなロビーに腰を下ろした。
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twilight of paradise @Palau [Palau]
空港に到着したのは約束の時間から30分遅れの18時半だった。
空港内にある「TOYOTAレンタカー」のカウンターは、
半分シャッターが閉まっていて、誰もおらず、返すはずのキーを渡すことができない。
備え付けの電話から市中の事務所にかけても誰も出ないし、
10分ほど待っていても誰かが戻ってきそうな気配はなかった。
出発は20:50なので、アセりはしなかったが、
連絡もつかず、あてもない無人のカウンター、
できることといえば、途方に暮れることぐらいだった。
確かに約束の時間に遅れたコチラが悪い。
空港に向かう途中の橋で夕焼けを撮ることに夢中になり、
約束の18:00から大きく遅れてしまっていた。
出発のフライトも時間も伝えてあったので、
アバウトに考えていたのが、裏目に出たようだ。
ちなみにコロール島と空港のあるバベルダオ島を結ぶこの橋の名は「エクストラドーズド橋」、
正式名は「Japan-Palau Friendship Bridge」。
以前、1977年に韓国企業の落札で「KB(Koror-Babeldaob) Bridge」が造られたが
手抜き工事のため、1996年に崩落事故を起こし、首都機能が麻痺、
非常事態宣言まで出される騒ぎとなった。
その後、日本のODAにより、現在の橋が作られた、という裏話つきの橋だ。
チェックインを済ませ、ボーディング・パスを受け取って、
カウンターに戻ってたが、やはり誰もいない。
困り果てて、インフォメーションの女性に尋ねてみた。
「すみません、トヨタ・レンタカーのスタッフの人、知りませんか?」
「いないの? 食事にでも行ったのかしら?」
「カウンターは半開きなので、そうかもしれないけど、
30分以上、誰も戻ってこないんですよ。
約束に遅れたこちらも悪いんですけど、
スタッフの携帯電話とか知りませんか?」
「顔馴染みだから会えばわかるけど、携帯はわからないわ」
ツーリスト・インフォのスタッフに尋ねること自体が筋違いなのだが、
到着便もなく、手が空いていた彼女はこちらの話に乗ってくれた。
時計は19時を回っている。
「出発まで時間はある?
でもここで待っているのも辛いわね、座るところもないし」
小さなロビーは中国人と韓国人のツアー客でごった返ししていた。
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「いや、こちらの責任でもあるので待つのはいいんですけど」
「キー、預かろうか?」
「え? いいの?」
思いがけない申し出に飛びついてしまっていた。
「いいわ。顔馴染みだし、返却だけで支払いがないなら問題ないわ」
一瞬、逡巡したが、彼女の提案が最良な策であることは明白だった。
「出発は20:50だから、もう少し待ってもいいんだけど」
「待っても一緒でしょ? キー、預かるわよ。
あ、わたしはジェニファー。
後日、問い合わせがあったらツーリスト・インフォのジェニファーって言って」
「支払いもないし、ドアはロックしてきたし、問い合わせはないと思うけどね。
一応、名前、書いておくね。必要ならID、コピーする?」
「いいわよ、そんなの。じゃ、キー、預かったわ」
「ほんと、ありがとう」
彼女に鍵を渡した後もカウンターを覗いてみたが、そこに変化はなかった。
「気をつけて、いいフライトを!」
混み合ったロビーで見送りの言葉をもらい、出発ロビーの階段を上がった。
まさか一人旅で見送りの言葉をいただけるとは。
これでパラオの旅も終わりか、と思ったのだが、まだ終わっていなかった。
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peaceful paradise @Palau [Palau]
「海、行ったの?」
ガソリンスタンドの店員はBGMに合わせ、
カラダを揺らしながらそういった。
「なんで?」
「スゴイ焼けているからさ」
「この日焼け? 違うよ、バベルダオブ島を一日ドライブして、このザマさ。
見てよ、右腕だけひどく焼けてるだろ?」
フランクな店員に合わせて、ジョーク交じりに答える。
左腕と右腕を比べて見せると彼は大げさに目を覆ってみせた。
反時計回りに島を一周したものだから、
北を目指し走っている時は東、つまり右から、
そして南に下っているときは西日、つまりこれまた右側から、
みごとに片側だけ日が当たり、右腕だけが日焼けしたのだ。
途中、気づいて、シャツで右半身を覆い隠したりしたものの、
南の島の太陽の前ではムダな足掻きでしかなかった。
それにしてもパラオの人たちは明るい。
目が合っただけでも声をかけてくるし、
見ず知らずの人からも当たり前のように話しかけられる。
アメリカなどでもすれ違いざまやエレベーターでは、
「ハーイ」とか「What s up?」なんて軽くアイサツを交わす。
人種も文化も異なる人間が集う国だから、
常に互いに敵意がないことを確認しあうのが当たり前になっている。
バックパックを背負って、初めてアメリカを回ったとき、
自分よりも大きな黒人がフッと道を開けることが何度もあり、不思議に感じた。
「譲る」というよりは「避ける」という感じだったので不思議な印象が残ったのだ。
日本人からすると巨漢の黒人は大いに畏怖の対象だが、
彼らからすると得体の知れない黄色人種が恐怖でもあったのだ。
「鋭い目つきをした黄色いヘンなヤツ」という感じで避けていたのだろう。
こちらにも少しばかりのアドバンテージがあったことは確かだ。
ネイビー・ベースがある街に育ち、
高校生のときから米兵と玉突きして遊んでいたので、
黒人に悪いイメージを持っていなかった。
合わせて180cmを超える身長があるので、
見下ろされるような目にあわずに済んだも大きいかもしれない。
もっともアメリカ人の側からしたら、
ただのきったねえバックパッカーを嫌悪していただけだったのかもしれないが。
それにしてもパラオの人たちのフランクなこと。
日本人とわかると拙い日本語や「じゃぱーん」なんて言葉を投げてくれたり、
同じように明るい韓国のオバハンとはまた異なる明るさで、
こちらを大いに和ませてくれる。
肩に力を入れて歩きがちな旅行者としてはふと、ガス抜きされた気になる。
ガソリンは1ガロン(約3,78L)=$5,25、リッターあたり¥110ほどか。
ガソリンを入れ終わったものの、
レンタカーを返す約束の18時まではまだ時間があった。
夕食を摂るには早すぎるし、ランチの量が多かったこともあり、腹も減っていない。
とはいえ、島は走りつくしてしまっていた。
メイン・ストリートにあるパレイシア・ホテルにクルマを入れ、
テラスになっているバーに足を向けた。
マンゴ・ジュースを頼み、バーテンダーと話しをしながら、夕焼けを待った。
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strange paradise @Palau [Palau]
少しばかり拍子抜けした「首都」をあとにまたクルマを走らせた。
白亜のドームを有した建物の周りには食堂や店もなく、
ジャングルの中にポツンと真新しい建物だけがあるというフシギな空間だった。
6月のこの時期、あるいは政治もオフ・シーズンなのかもしれない。
10分ほど走ると、キレイな橋が架かる場所に出くわした。
脇にはバイ(パラオ式の東屋)があり、
ビーチで駆け回る子供を日陰から家族が遠目に眺めている。
その手前に小さな小屋がある。
この島に来て初めての売店だ。
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「ミルク・コーヒー、あります?」
冷蔵庫の横に貼られた手書きのメニューに「ミルク・コーヒー」と書かれていた。
こちらではあまりそういう書き方をしないので、
キンキンに冷えたアイス・オ・レを期待して、オバチャンに聞いてみた。
「ないわ」
「じゃあその隣の『カプチーノ』は?」
「ないわ、コーヒーはないわ」
メニューに書いてあるものを読み上げるように伝えただけなのだが、
オバチャンはつたない英語で「ない」を重ねた。
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「コーヒーないのか。ならレモンティでいいや」
「ないわ」
おいおい。
「じゃあ、なにがあるの?」
「ダイエット・ペプシ、クランベリー・ジュース、
それとビールが山ほどよ」
背の高いガラスケースの冷蔵庫の扉を開けて見せてくれる。
中の棚の半分以上をビールが占めていた。
「クルマじゃ、ビールは飲めないよ」
「知ってるわ、クルマで来たの見ていたから。
でもコーヒーは切れちゃって、まだ入荷してないのよ」
近隣に住民がいるわけでもなく、
ビーチに人が来るときぐらいなのだろう、商売になるのは。
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「ビールしか売ってない売店」というのがおかしくて声を上げて笑ってしまった。
つられたのかオバチャンも笑っている。
メニューはなんのためだ、と思ったが口には出さないでおいた。
「じゃあ、ダイエット・ペプシ、ください。
ダイエット・コークはないの?」
こうなるとオバチャンの定番コールが聞きたくなっていて、
冗談半分の質問をぶつけていた。
「ないわ」
期待通りのご回答。
客が来ないせいか、受け取った缶はキンキンに冷えていた。
さらに北に上がり、小さな村を訪れた。
このあたりはコロールの島と異なり、
目の前には少しばかりの白砂のビーチが広がっている。
あいかわらずひと気がない。
真昼間の熱い時間だから人がいないのか、
あるいはコロールに働きに出ているのかはわからない。
自分だけポツンと置かれたような時間が続いた。
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inorganic paradise @Palau [Palau]
ランチで苦しくなった腹を抱え、バベルダオブ島一周に乗り出した。
この島には大きく外周を巡る道があるだけなので、
右回りだろうが左回りだろうが、
走り続けていれば元の場所に戻ってくる。
その長い一本道を島の真南側から反時計回りに走り出した。
時計の針でいうと6時の方向に空港がある。
夜にはそこから出発することになるので、レンタカー旅もここが終着。
場所の目星をつけておこうと、まずは空港に向けてクルマを走らせた。
空港へのエントランスを横目で確認し、通り抜けて行く。
周辺には背の高いビルもなく、大げさなカンバンもハデな広告もない。
国際空港らしさは微塵もなく、軍事施設の名残りであろうフェンスが、
無機質に連なっているだけだ。
そのフェンス越しに滑走路を眺めつつ、北へ向かった。
ドミノ・ピザがLサイズを全品半額に!世界10000店達成記念!
対面通行の道路、すれ違うクルマが次第に少なくなっていく。
道路脇には店もなければ家もない。
それどころかアスファルト以外に人工物らしいものはなく、
時折、見通しのいい小高いところから見渡すと、
揃えたような高さの木が鬱蒼と茂っているだけだ。
先方を塞ぐクルマも遮る信号もないドライブは気分がいい。
無理して飛ばすこともないので、FMラジオのボリュームを上げ、
のんびりクルージングを楽しみ、東側にある新首都のマルキョクを目指した。
ところが10分程度走ったところで、トンだトラブルが巻き起こった。
日本人旅行者に人気のホテルが毎日値下げ・バーゲンハンター
それまで心地よいロックを流していたラジオが沈黙してしまったのだ。
3~4局はあったであろうFM局のチャンネルを探ってみるが、
どのチャンネルも少し流れてはノイズに変わっていく。
最後にはどのチャンネルもノイズだけになり、
あれこれイジってみても砂嵐を連想させる音が出るだけだった。
そう、ラジオが圏外になってしまったのだ。
パラオの生活拠点はコロールが中心で、この島に住民は少ない。
そのため、20kmほど北に上がってくるとラジオの電波も届かないのだ。
鳴らなくなったカーステのスイッチを切ると、
開け放っている窓からの風切り音が騒々しくなる。
オープンカー乗りとしてはこちらのほうが自分のクルマに似た感じではあったが、
単調なロング・ドライブに音楽がないのは少々痛かった。
ラジオの電波がない、とは思わなかったぜい。
ドミノ・ピザ・Lサイズを9月26日から30日まで5日間限定! Lサイズピザを全品半額!
バッグからMP3プレーヤーを引っ張り出してもよかったが、
それも煩わしくて、風の音に混じって、
自分の車の排気音だけが響くクルージングを続けた。
30分ほど走り、道路標示を見つけた交差点を右に折れる。
谷を下り、小高い丘に上がると、白亜の建物が異彩を放っていた。
Melekeok(マルキョク)にあるニュー・キャピタル、
2006年に遷都したばかりのパラオの首都だ。
http://www.palau-style.com/kankou/melekeok.html (マルキョク州)
ところがこの国の中心であるはずの場所だが、ひと気がない。
観光客はモチロン、働いていそうな人もいない。
国の主要建築物であるなら警備員がいて、公務員がいて、
出入りの業者でごった返していて、と思ったのだが、駐車場すらガラ空きだ。
昼間だからか?
なーんにもなくてだーれもいないのーんびりした空間がただ広がっていた。
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delicious paradise @Palau [Palau]
6月12日、旅は6日目。
7時に目覚め、デリで買っておいたツナ・サンドを頬張る。
フロント脇にコーヒーの無料サーブがあるのでそれを取りに降り、
部屋に戻るとカンタンな朝食を済ませ、
またコーヒーを注ぎ直すとしばらく原稿書きに没頭した。
気づけばパラオもラスト・デイ、20:50のフライトまでが滞在リミットだ。
ランチには少し早い時間に部屋を引き払い、
レンタカーにバゲージを積み込み、部屋のキーを返して、
チェックアウト完了。
「Come Again」
文字にしてしまうと味気ない英語だが、
宿のスタッフの口をついて出た言葉は「またおいで!」とやわらかい感じ。
わずか5泊の滞在なので、社交辞令かもしれないが、
そういってくれる気持ちがうれしかった。
「何時に日本に帰るの?」
「20時のフライトだよ。今日は一日、
バベルダオブ島を巡ってみるつもりなんだ」
握手をして、別れを告げ、クルマを走らせた。
たらば蟹が3000円引き!特割裏情報
島巡りのロング・ドライブの前にまずは腹ごしらえ。
キャプテンに教えてもらい、気になっていた「YANO’s」へ向かう。
店はメイン・ストリートの中心ポイント「WCTC」の隣。
ランチタイムには早かったが、頻繁に客が出入りしていた。
店内はこじんまりしたサイズで、
肉や野菜の惣菜、チャーハンや白飯がパック詰めされ、木肌の棚に置かれている。
パンや果物、飲み物もあって、
奥のガラスケース内には出来上がったばかりのオカズが並んでいた。
好きなものをレジに持って行き、会計を済ませるデリ・スタイルの店で、
ホトンドのお客は持ち帰りのようだが、
店内の右手奥にはテーブルとカウンターもあり、
そこでのイート・インもできるスタイルになっていた。
地元の人は馴れた手つきで目当てのものを手にし、レジに向かうが、
要領がつかめないこちらは気遅れして、狭い通路を塞いでしまっていた。
自分で戸惑いを割り増しにしてしまうような感じだ。
コリコリとした歯ごたえと潮の香りがたまらない!【送料無料】 漁協で獲れた新鮮シャコ貝!
なにを食べるか目移りしていると、奇妙な日本語で話しかけられた。
「タロイーモ、エイヨ~マンテン」
常連のオジイサンだろうか、馴れた感じでパックを選び、手にとっている。
こちらの戸惑いを見透かしたようにタロイモやチャーハンのパックを指差しては、
変なイントネーションの日本語を繰り返している。
「チャハン、オイシー、オイシー。エイヨ~マンテン」
「そうね~、炒飯はおいしいわなあ」
こちらに話しかけているのか、はたまた独り言なのか、判断がつかなかったが、
他に日本人も見当たらなかったので、答えを返してみた。
「エイヨ~マンテン」がお気に入りフレーズのオジイサンは、
こちらの答えを気にも留めず、
レジで会計を済ませるとトットと出て行ってしまった。
すっかりフラれた気分だったが、気を取り直し、
ガラスケースの向こうにいたオバサンに声をかけた。
【期間限定割引!】沖縄県産 食用 活きシャコ貝
「あの、シーフードはなにがありますか?」
「『シャコ貝のクリーム煮』、『エビの炒め物』、それと後ろの『フリッター』かしらねえ」
「!」
ようやくここに来て、名物「シャコ貝」登場だ。
昨日のレストランでも探したのだが、メニューになかったのだ。
「じゃあ、『シャコ貝』をください」
「量り売りだからどれにする?」
シャコ貝はアルミホイルの器に入っていて、食べやすく刻まれている。
サカナのフリッターも食べてみたかったので、小さそうなのをお願いした。
「食べてくの? これで後ろのレジでお金払ってね」
そういうと皿に盛ったシャコ貝にソースをかけてくれ、
計りから打ち出された値札を渡してくれた。
『シャコ貝のクリーム煮』約$4、『白身魚のフリッター』$3、『ライス』$1、
会計を済ませ、カウンターに腰掛ける。
小さ目を選んだのだがドレもコレも量が多くて、食べ過ぎのラインを超えていた。
味? 教えなーい。
「賢者は旅の話しをし、愚者は料理の話をする」ってのがモットーです。
これ、モンゴルの諺だそうで。
ああ、あのシャコ貝、また食べたい!! とだけは書いておこう。
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serene paradise @Palau [Palau]
夕刻の情景に別れを告げ、誰も待っていない夕食に向かった。
気になっていたレストランにクルマを走らせる。
アラカベサン島をまた奥に進む形で「ローズ・ガーデン・ホテル」を目指す。
ここはホテルの下がテラス・スタイルのレストラン・バーになっている。
小高い丘で少しばかり眺めもよいのだが、それにも増して風の抜けがいい。
食後、アイスティでも飲みながら、静かに本も読むこともできるし、
あるいはWi-Fiが使えるのでメール・チェックもできる。
退屈な旅先の夜の時間をここなら潰せそうな気がしていた。
【期間限定】今しか食べられない季節のアイスクリームセット
南国の島国、ということもあり、パラオはネット環境が悪い。
大きなホテルには完備されているようだが、
泊まっている安モーテルにWi-Fiはない。
まあ、これは安宿の宿命。
プリペイドのWi-Fiカードを使えば繋げないこともないのだが、
速度が遅い上に高いのだ。
そもそも島の人たちもネットカフェを使うか、
プリペイドのカードを購入するかなので、
結構割高なネット環境を強いられている、ということがわかっていた。
ここはホテルに隣接するレストランなので宿泊客は無料。
外の客は「食事をすればWi-Fi接続無料」ということを昼間、教えてもらい、
「夕食のときにPC担いで出直して来るよ」と告げておいた。
30%オフでお得!期間限定福袋プラン
白身魚と豆腐のソテー、セットメニューで$10。
ガーリック風味の醤油が豆腐に合う。
豆腐ってこういう食べ方もあるのね、という感じで、
帰ったら真似して作ってみたくなった。
大きな液晶TVではブラジル対アルゼンチンのワールドカップ予選が行われている。
3対3の激しい攻防、数組の客しかいないので、従業員は画面に釘付けだ。
アイスティを頼み、Wi-Fiのパスワードをもらい、PCを立ち上げる。
スカイマークで国内旅行も格安に!
カヌーの面々が去った後、
眩しいカクテル光線の中でプレイするソフトボールを見物した。
フィールドはしっかり「野球場」していて、
スタンドがあり、バックネットがあり、外野はフェンスで囲われている。
日本の草野球場よりも数段上の設備だ。
家族連れで応援している姿が目立つ。
当たり前のようにオトコのコと一緒にオンナのコもプレイしていて、
彼女らが活躍すると一段と高い声援が上がっていた。
フィールドを抜ける潮風が心地よい。
観覧席の外側ではおかまいなしにBBQの煙が上がっている。
シートを置いて、ビール片手に観戦だ。
どうやら身内が守りのときには腹ごしらえ、打席に立つと応援に熱を入れるらしい。
BBQにも攻めと守りがあるのですな。
沖を進むカヌーにしろ、このフィールドにしろ、
すべてがゆったりしていて本当にストレスがない。
最新機器に追いかけられ、最新のファッションに追い立てられ、
新しい味覚を追い続け、最新のスポットを追い求めることは、
そんなに大事なことなのだろうか。
現地の生活を背負い込んでいない旅人は勝手にそんなことを思う。
なかなか進まないPCの画面にストレスを感じながら、さっきの夕景を思い返していた。
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twilight paradise @Palau [Palau]
晩夏の「毎月ソウル」を挟み、すっかり更新が滞っておりました。
帰国してからバタバタと動き回っており、慌しい日々といいつつも、
夏並みに熱かった先の3連休には連続でテニス、テニス、テニス。
NFLも開幕し、試合観戦(TVですよ)も忙しくて、グッタリ。
やはりアフォです。
帰国したら涼しいはず、と踏んでいたら、暑いし。
この週末は「旅博」へ。
http://www.tabihaku.jp/ (JATA旅博)
メディア・デイに出向き、次なる取材への商談などを重ねてきました。
次はドコに飛ぶかは秘密でゴザンス。
実はこの週末、シンガポールの友人に「ボルネオ行き」を誘われていたのですが、
その隙間がなく、これは断念。
ああ、行きたかったなあ。
ようやく秋の訪れを感じるような気温になり、
がんばって「パラオ紀行」、記してまいります!
=================
機動力を得て、パラオの陸巡りがはじまった。
島内は対面通行で交通量も少ない。
なにせメイン・ストリートには信号すらない。
不思議なもので、道が空いていると飛ばそうとも思わない。
40km前後でゆったりノンビリ心地いい。
すべての窓を開け放っておけば、
エアコンを入れなくても快適な風が流れていく。
信号、というのは人が快適に暮らすための社会のルールだが、
あれはあれでストレスの根源になっているのだなあ、とつくづく思う。
ヨーロッパ人に言わせると、
「ルールは人が快適に暮らすために人が作ったものなのだから、
不快な場合は守る必要がない」そうだ。
顕著な例が深夜、クルマも人もいない交差点で、
赤信号が変わるのを待っている日本人ドライバーの画像。
こいつがネットに上がって、世界中で話題を振りまいていたっけ。
クルマはすぐにコロールの西、マラカル島の西端にたどり着いた。
シャコ貝の養殖場を眺めるも興味を惹かれるものも画になるものもなく、
行き止まりをすぐに折り返した。
イーナドットトラベルなら、いま、空席確認できます。
観光局事務所があった交差点を北に折れ、
アラカベサン島に渡り、小高い山を越え、走り続けるが、
こちらも15分ほどで行き止まり。
島の先端を占めるパラオ・パシフィック・リゾート(PPR)ホテルでデッドエンドだ。
海の楽園には陸に見るべきものはなく、ただのどかさだけが広がっていた。
枚数の進まない一眼レフを助手席に置き、来た道を戻る。
雑誌やテレビで大人気!irinaのロールケーキタワー
陽が落ちかけた時間、きらびやかなカクテル・ライトに惹きつけられ、
路地に入ると煌々と明るい野球場でソフトボール大会が催されている。
その向こうの波打ち際には船着場が開けていて、夕刻の海が出迎えてくれた。
遠い夕焼けにレースをなびかせたかのようなスコールの幕が降りている。
あのシャワーはこちらに来るのだろうか、
それとも向こうに去っていくのだろうか。
夕方の静かな海を眺めながらぼんやりそんなことを考えていた。
『最低価格保障!差額+5,000円クーポンプレゼント!』
レースのカーテンがうまく撮れないか、広角レンズを合わせていると、
海上でなにやら動いているものを見つけた。
小島? パラオじゃ島も動くのか?
漁船? この時間に?
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望遠レンズに付け替え、ふたたびファインダーを覗き込んだ。
カヌーだ。
冷静に考えたら、この船着場、自分の横にはカヌーが横たわっているじゃないか。
ひょっとして、ここに帰ってくるのだろうか。
業界最安値!エクスペディアの最低価格保証について【他社より1円でも高ければ差額+1,000円返金します】
カッター競技のように集団で漕いでいて、かなりのスピードが出ている。
遠目に見ているとシャワーから逃げて来ているようにも映る。
リズムよく進む船体は大きく右に周り込み、向き直ると、
次第に速度を落とし、スロープになっている船着場の波打ち際に寄せた。
集団は馴れた感じで大きな船体を持ち上げ、注意深い足取りで上陸してきた。
25種類25個のロールケーキで作る4段ケーキタワー
「ハイ」
「コニチハ」
気軽に声をかけると集団の一人がおどけて日本語で返してきた。
「こんにちは」
「ハロ~、ジャパン」
「ニッポンデスカ?」」
「ゲンキ?」
日本語で応えると次々、アイサツが返ってくる。
激しくカヌーを漕いできた疲れもみせず、声は明るい。
秋の連休シーズンはじゃらんnetで海外旅行がおトク!
どこかの学校のクラブ活動かと思ったが、
体格のいい若者からひょろっとした体形の幼い顔も見え、年代はバラバラだ。
あれこれ聞きたかったが、船を置くと円陣を組み、ミーティングがはじまっていた。
パラオ辺りだと町内で「カヌー訓練」があるのかもしれない、
あるいは非常時のための「カヌー教室」というのはどうだ。
たぶんただの「カヌー・サークル」の練習だろうけど。
夕景の写真に夢中になっていたため、
グループの正体を尋ねる間はなく、若者は散り散りに帰っていた。
帰ったらきっと夕食が待っているに違いない。
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unexpected paradise @Palau [Palau]
午前中とはいえ、南国全開で暑さに容赦がない。
エアコンの効いた部屋でやり過ごしているとノックの音が響き、
ドア越しに掃除のオバチャンの声が続いた。
「アンタ、クルマ頼んだ?」
時計を見ると11時、約束通り、レンタカー屋が来てくれたようだ。
先日、会ったオヤジサンが玄関先でニヤっと笑っていた。
今日はビンローを含んでいないようだが、
その口元はなんとなく赤いような気がした。
10月の3連休に泊まれる宿
「おはようございます。あれ? クルマ、ヴィッツじゃん」
予約したクルマは$50のジムニーだったはずだ。
「$30のヤリスが空いたから持ってきたよ」
「え~、ホントに? それはラッキーだよ、ありがとう!」
どうでもいいことだが「ヴィッツ」のヨーロッパ名が「YARIS(ヤリス)」、
「マーチ」も「MICRA(マイクラ)」という名で売られている。
「$30ね、キャッシュかしら?」
オヤジサンとのやり取りを気にも留めず、
一緒に来たオンナのコは書類を突き出し、IDの確認とサインを求めてきた。
記載を終え、現金で$30を渡した。
「ガソリンは少ししか入ってないから。
満タン返しじゃないから使う分だけ入れなよ」
「OK、わかった。でも安いクルマ持って来てくれてありがとう」
オヤジサンの説明を受け、そう礼を返すと、彼はニヤリと笑い、親指を立てた。
笑った口元はやっぱり赤かった。
伴走してきたクルマで去る二人を見送ると、後ろから声をかけられた。
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「お! クルマ来たんだね」
体格のいい年配男性が隣に止まったバンのドアを開けていた。
「あ、今日から借りたんですよ。
そうだ、クルマで行けるオススメの場所、あったら教えてください。
あ、でもダイビングで周っているならお門違いか」
「いや、ボクはノン・ダイバー、このバンで行ける浜辺で潜っているだけさ。
もっぱらスノーケリングだけだよ。
オススメのランチはどうだろうか?」
彼はオレゴンから来ているアメリカ人で、
すでにリタイアしていて、年2~3回は訪れるパラオ・リピーター。
ここを定宿にし、バンで島を巡る「バジェット・トラベラー」だ。
パラオに男一人旅、いるんですねえ。
ハンドルを握り、彼に教えてもらった食堂へ向かう。
その店は大通りに出る手前にあり、拍子抜けするぐらい宿からすぐだった。
なんのことはない、到着直後の夜に歩いたガソリンスタンドの手前じゃないか。
クルマ、いらねえぞ。
人気のスーツケースから便利な旅行グッズまで!
「PINOI」と書かれた店の扉を押し開け、中に進む。
照明が少ないためか、薄暗く、ひっそしりている。
奥のカウンターには大きなバットに入った料理が7~8品並んでいて、
傍らには大きな魚のフライが置かれていた。
ブッフェ・スタイルのように見えもしたが、
地元の人たちはカウンターに取り付き、アレコレ指差し、注文している。
少しばかり気おくれして眺めていると、
なんのことはないアジアによくあるワンプレートのスタイル。
好きなオカズを頼んで、ご飯を盛ったプレートにかけてもらう、
いわゆる「ブッカケ飯」方式だ。
中でも魚のフライが人気らしく、次々になくなっていく。
奥のキッチンからは次々にできたてのオカズが運ばれくる。
ランチタイムには少し早い時間、準備しながら客をさばいているのだろう。
湯気を立てているオカズからおいしそうなニオイが漂ってくる。
空いていてひっそりしているな、と思った店内だが、
次から次に客がやってきては手際よく注文して、去っていく。
店内で食べるよりも持ち帰る客が多いようだ。
「持ってくの?」
「いや、ここで食べます」
待っていても客の流れが切れそうもなく、
勇気を持って、忙しそうに働くオカアサンに声をかけた。
ストロガノフのような牛肉煮込み+ライスで$3,5。
さあ、味はどうかな?
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miscellaneous paradise @Palau [Palau]
6月11日、旅は5日目。
朝6時に目覚めてしまった。
ジェリーフィッシュ・レイクの興奮が冷めやらず目覚めてしまったなら、
ちょっとばかりロマンティックな感じではあるが、
興奮して寝付けなかったんじゃ、まるでコドモだ。
あるいはスノーケリングの疲れで目覚めてしまったのだとしたら、
お年寄りのようで悲しすぎる。
ガッツリ目覚めてしまったので、
キッチンのコーヒー・サービスを取りに降り、
買っておいたサンドウィッチで朝食を済ませ、原稿書きに精を出した。
そうです、この仕事は旅先でもできるのですよん。
とはいえ、シティ・ホテルにカンヅメならカッコいいけど、
旅先の安モーテルじゃあ、カッコつきはしませんが。
大人気の備蓄パンセット 缶deボローニャ3種(プレーン、メープル、チョコ)+534(ファイブ・スリーフォー)ブレッド3個
昨日のスノーケリング・ツアーはまだ明るい17時前に船着場に戻ってきた。
「コロールでシーフードがおいしい店、教えてくれませんか?」
送迎のバスが出るまで少し間があったので、
ひと仕事終え、一服していたキャプテンにそう聞いた。
「一人だろ? じゃあ、レストランとかじゃなく、食堂のほうがいいよな。
『JYANOS(ヤノズ)』という店があるよ、WCTCのすぐ横さ。
なあ、あそこは安くてうまいよなあ」
「ああ、そこはおれたちもよく行くぜ。でもランチしかやってないよ」
一緒に一服している仕事仲間がそう答える。
「うれしい情報だな。かならず行ってみます、ありがとう!」
例をいうと「ハイ・ファイブ」を求められ、それぞれと交わし、送迎のバスに向かった。
エクスペディア 72時間セール
ちなみに「ハイ・タッチ」は日本語、英語では「High・Five」。
「Give Me a Five」といえばパチン、となるわけ。
手の高さによって「Middle・Five」や
腰をかがめる「Low・Five」なんていうのもあります。
17時過ぎ、最初にモーテルで降ろされる幸運、そそくさとシャワーを浴び、出かけた。
早速、教えてもらった「ヤノズ」に向かう。
『JYANO’s』とカンバンを出していたのはWCTCの真横で連日、目にしていた店だった。
「ランチタイムだけ」という言葉通り、すでに入口を閉ざし、暗かったので、
道路を渡った反対側の店々を眺めて歩いた。
プリンターで打ち出しました感満載の長いメニューが貼られている。
店先にはそれぞれ英語と中国語と日本語の長ったらしい紙がぶら下がっていた。
その中に気を惹く文字を見つけた。
山形尾花沢スイカサイダー 200ml×30本
『Water Melon Shake』
おお!
ここでも逢えたか!
スイカ・シェイク=$3を迷わず、注文。
店先のテーブルでシェイクを飲みながら長い張り紙のメニューを眺める。
オススメのシーフード食堂はダメモトで来てみたので、喰いっぱぐれた感じはなかったが、
ちょっとばかり口の中が「シーフード」になっていた。
「おばちゃん! イカフライ・プレート、ひとつ!」
夕方の日差しが残るテーブルは暑かったが、$4のディナー、悪くない。
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paradise in paradise @Palau [Palau]
ボートはふたたびアイランド・ホッピングへ。
今度は島には寄せることなく、海上の浅くなったエリアに停まった。
「パラダイス・コーナー」と呼ばれるこのエリアは、
珊瑚礁で盛り上がっていて、1~3mほどの深さの浅瀬が広がっている。
その環礁に鮮やかな色をしたサカナが集まっているらしい。
船上から眺める分には写真を撮る気も起きないただの海面だ。
「では、ここでしばらくスノーケリング・タイムです。
クマノミの巣が見たい方はわたしについて泳いできてくださ~い」
ガイドに促され、次々と海へ。
地球の歩き方 リゾート 世界のダイビング
ゴーグル越しの環礁は傍目とは異なり、表情豊かな海の世界が広がっていた。
海底も見え、ところどころ手が届くような深さなので、
フローティング・ジャケットはジャマでしかなく、ボートに戻した。
6月のパラオは雨季に当たるが、
海はベタ凪が続き、ダイビングやスノーケリングには適した季節らしい。
プールのように波の立たない海面を目の当たりにして、
キャプテンに問いかけたら、そう教えてくれた。
ノン・ダイバーなのでそんなことも調べずにやって来た無頓着な旅行者は誰だよ。
サメがいた~とか、クマノミ~とか、バラクーダーきた~とか、方々から声が上がる。
小一時間のスノーケリングでボート・ツアーはピークを迎えていた。
そんな声を遠くに聞きながら、
ジェリーフィッシュの感動にシビれたアタマがようやく現実を取り戻していたが、
すでにメインディッシュのクラゲに満腹していて、
デザートのパラダイス・コーナーはやや食傷気味でもあった。
環礁をひと回り泳いで、ボートに上がった。
人気スターのハマリもの!韓流スターが愛する韓国グルメ&美肌のヒミツ
「あれ? もういいんですか? まだ時間ありますよ~」
客を案内し終えた韓国人ガイドが心配そうにいう。
「うん。メインはジェリーフィッシュだったからね。ここはオマケ、もう満足」
配られたペットボトルのお茶で塩辛い口を濯ぎながら話しを続ける。
「どう? 半年間暮らしてみて、パラオは? やることなくて死なない?」
「正解です。仕事はすごくいいんですが、オフがヒマで死にそうです」
「シンガポールの現地旅行会社にいたんだけど、あの国でさえヒマだったもん。
島は退屈だよね。『楽園』というのは住む人には酷だな」
「はい、そろそろソウルに帰りたくなってきました。
でも韓国は経済状況がよくないので、帰っても就職があるかどうか。
そう考えるとびみょ~です」
「だろうねえ。いろいろ大変だ~。ファイティン!(がんばれ!)」
彼は半年ほど前にパラオにやって来て、ガイドの仕事をはじめたという。
ツアー会社のスタッフにしろ、ガイドにしろ、どうやら韓国系の人が多く働いているようだ。
彼の役割は「通訳アテンド」、
同行しているパラオ人のオンナのコが「ローカル・ガイド」、
彼女がライセンスを持っているのだろう。
ボジョレー・ヌーヴォー解禁日は11月15日(水)!今年も期待大♪
世界各国の観光スポットでは、
「有資格のローカル・ガイド+無資格の通訳ガイド」ペアのアテンドが多いです。
これは観光業において、外国人が現地の人の仕事を奪ってしまわないためのもの。
世界的観光立国のイタリアなど、
グループを連れた添乗員が教会の前で説明しているだけで逮捕で罰金ものです。
これ実話で、罰金取られた添乗員、知ってます。
国からの資格を持っている「ローカル・ガイド」なのですが、
訪れた外国人グループのすべての言語に対応しているはずもなく、要通訳となるわけです。
その結果、「通訳の日本人」が案内を果たすことになり、
「ローカル・ガイド」はただグループに一日付いて周るだけの人、となってしまうのですね。
ツアーのお客さんからは「何しているの? あの一緒に来る人?」、
なんて無神経な質問が沸いて出たりします。
特にヨーロッパなどは日本語ができる現地の人は少ないので、
通訳ガイド(大抵は日本人)が声を張り、観光案内し、
そこにライセンスを持ったローカル・ガイド(現地人)が付いて周り、
時間や行程などを管理する日本から来た添乗員(日本人)がいる、
という図式になるわけです。
と、これは大都市の場合。
田舎の小さな町などでは「イングリッシュ・ガイド」のみで、
添乗員が「通訳」させられる、なんてことも多々あります。
添乗員にも「通訳」分の日当払えってハナシ。
まあ、それはさておき、20~30人のグループで3人もチャーターするんだから、
ツアーが割高になるわけ、わかるでしょ。
スノーケリングでグッタリ疲れたツアー客を乗せ、ボートが帰り道を辿ると、虹が見送ってくれた。
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impressive paradise @Palau [Palau]
ジェリーフィッシュ・レイクの衝撃にシビれたまま、ボートに戻った。
別にクラゲの毒にあたったわけではないのです。
現にジェリーフィッシュ・レイクのクラゲたちは、
外敵のいないその特殊な環境から無毒化してしまっているのだから。
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木製のデッキから湖にエントリーし、しばらくはなにもない湖面を泳ぐ。
するとポツリポツリと赤茶色をまとったクラゲが現れはじめる。
おお、と思っていると、それは途端に数を増し、
辺りは大小取り混ぜたジェリーフィッシュに覆われはじめる。
これでもかなりの驚嘆ものだが、
さらに湖の中心に向かって泳ぐ行くとその数は尋常じゃないことになり、
クラゲたちを掻き分けて進むぐらいの密度になる。
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もっとも濃いところだと器に入ったみつ豆の寒天を掻き分けるかのごとく、
あるいは夜店の金魚すくいのような濃密さで、
こちらの想像を遥かに超え、ただオドロキの声が出るばかりだ。
もう、酢醤油持ってこーい、って感じ。
ゴーグルをつけ、スノーケルをくわえているのだが、
そんなことはおかまいなしにワアワアと驚嘆の声を出してしまう。
想像を超えるシーンに出遭うと人は声を出さずにはいられない。
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淡水に近い汽水の中、フローティング・ジャケットを着て泳いでいるので、
クラゲとともにポワポワと水に浮いている状態。
360度、いや上下左右、どこを見てもクラゲ、くらげ、海月、水母。
もはやクラゲの宇宙です、Theクラゲ。
フィンをつけているので、その気になればクラゲよりは早く動けるが、
慌しく動くよりも彼らと一緒にただ漂っているのがいい。
そう、やはりここでもなにもしない刻(とき)がただただ心地よいのです。
世界中でもここにしかない場所、その感動といったらない。
いっそ「文章にできないぐらい」なんて書いてしまおうか。
走り出したボートに揺られ、そんなことを考えていた。
いえいえ、ハッキリ書きますが、
クラゲと漂うだけのために飛行機代出してくる価値アリです。
そうした本人がいうのだから、信憑性あるぜい。
ONE and ONLYとはまさにこのこと。
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really true paradise @Palau [Palau]
一瞬のシャワーにオドロカされたものの、ランチタイムはのどかに過ぎた。
満腹したツアー客を乗せるとボートはまた容赦なく、波を蹴りはじめた。
ランチを詰め込んだばかりで船酔いしそうなほどのスピードだったが、
オープン・エアのボート、心地よい風、別世界の風景がそんなことは忘れさせるのだろう。
「乗り物酔い」というものにとんと無縁なのでそんな風に考えていたが、
幸い、不調を唱える客もなく、ボートは小さな島々の間を縫いながら、
ジェリーフィッシュ・レイクのある島を目指していた。
「クラゲの島に着きました、事務所で渡したパーミットを用意してください。
荷物は置く場所がないので、全部ボートに置いていってくださいね~」
船着場のすぐ前に小屋があり、一人一人、パーミット(許可証)をチェックしている。
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「この後は少し山道を歩きま~す、履物はサンダルじゃないほうがいいですよ~。
ライフジャケットは着てしまってくださ~い。
フィン、スノーケルはその背中に刺しま~す」
船を降り、山道を越えて、クラゲの湖に辿りつくようだ。
履物は世界中、どこに行っても革のデッキ・シューズなので、山道だろうが心配はない。
HushPappy、Sabago、TopSiderなどのデッキ・シューズを愛用しているが、
今回はスノーケリングを予想していたので、水でツブしてもいい古いSebagoでやって来ていた。
旅行先に下ろした手の新しいクツで来るのはやめましょうね。
足に合うかわからないし、旅先では日常生活の倍以上も歩くので、
なるべく履きなれた靴でくるのが得策です。
おろしたて~、と書いてあるような新品は旅先で苦労しますぜ。
なんなら古い履き慣れたやつで来て、新しいクツを買って帰ってもいいぐらいです。
お店で「この古いの捨てちゃって~」なんて言ってみてはいかが。
なんで「革のデッキ・シューズ」かというと、
まず、足のむくむ機内、あるいは長距離バスなどの乗り物で脱ぎ履きがラク、
革なのでドレスコードがあるようなレストランやホテルなどでも格好がつく、
冬以外は素足で履けるので荷物にソックスがいらない、と利点が多いのです。
長い旅の経験で荷物減らしたい! と考えた挙句です。
ビーチサイドからレストラン、ジャケットにまで合うクツ、ってなかなかないんですね。
とまあ、万全のように記してますが、このデッキ・シューズが旅の最後に悲劇にみまわれます。
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容易に手間取るほかの客を無視して、許可証を見せ、ズンズン先に進む。
一眼レフのバッグを担いでいたので、ガイドが気を利かせて声をかける。
「カバン、ダイジョウブですか?」
「ああ、湖にはいるんだから、岩場とかデッキとかあるでしょ?
そこに置き去りにするからケンチャナヨ~(だいじょうぶ)」
「それならOKです。行けるなら先に進んでください。
わたしは最後のお客さんと行きますから」
トレッキングに近い山道を進んでいくが、みな、水着姿なので、なんとも奇妙だ。
山道はほとんど整備されていない。
手作りの石段を踏みしめ、鎖を手繰り寄せて進むと、
この辺りには人の手があまり入っていないことが想像できる。
TV生放送中にー6cmの即効ダイエットで関係者もビックリ
「許可証、値上がりしたんだから、階段ぐらい作ってよね」
「コレでも鎖とか手すりとか、マシになったんですよ~」
誰かの戯言にガイドがそう答えていた。
小山をひと越えする形で、湖にたどり着いた。
湖畔は船着場のように木製のデッキが設えてある。
「着きましたよ~。もうすぐですよ~」
先頭で到着したので、後方の面々にそう伝えると安堵の声が返ってきた。
思った以上にワイルドな山道だったので、ご年配は息も絶え絶えだったのだ。
さあ、憧れていたクラゲと戯れの時間だぜい。
加筆;
水中カメラがないため、肝心のクラゲの写真はありませぬ。
一眼レフで取れたのは、4・5枚目の入水箇所までです。
ここからはクラゲの姿は見られず・・・
「Jellyfish Lake」で画像検索していただければ、
水中でデジカメ撮影なさっている方の画像がたくさん出てきますので、
そちらでイメージの補填を。
Jellyfish Lake
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uninhabited paradise @Palau [Palau]
のんべんだらりとしたひと時を過ごすとボートは動き出した、
「出発するよ。カヤック組をピックアップしたら、無人島でランチタイムだよ」
キャプテンはそう声を張ると眠っていたエンジンを叩き起こすと、
さきほどの浮島までおかまいなしに飛ばし、カヤック組を拾い上げた。
ふたたびエンジンを唸らせ、洋上のクルージングを楽しむと、
広い砂浜に囲まれた無人島が見えたところでエンジンを停めた。
惰性だけになったボートは砂浜の手前で止まり、
乗客は浅瀬に降り立ち、履物を抱えて上陸した。
「こちらでランチタイムです。一時間ぐらいで帰るときには声をかけますね」
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パラオ式なのだろうか、このツアーでは「XX分まで」という時間の区切りがない。
ピークシーズンは対応が異なるのかもしれないが、
時間的な制約を設けないこのやりかたはなかなかステキだ。
20名ぐらいのワンボートならスタッフも全員に目が届くし、
客同士も顔が知れ、声を掛け合ったりする。
ヘンに時間の縛りがないのは気楽でいい。
島では先客がBBQの煙を立てていた。
無人島のはずなのだが、方々に砂浜が広がり、上陸するのに容易いからか、
すでにさまざまなグループでにぎわっていた。
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野趣あるBBQの煙にそそられたが、
こちらにはプラスティックの幕の内スタイルの弁当が配られた。
遠方にBBQを眺めながら、それぞれが弁当を抱え、
日陰やテーブル、波打ち際などに気に入った場所を見つけ、腰を据える。
テーブルを囲む相手もいないこちらは、
これまた一人で弁当をつついている韓国人ガイドと肩を並べた。
弁当は日本スタイルのオカズが入っていて、
こういう場所で供されたのしては悪くない味付けだ。
酒盛りするわけではないので、手軽で清潔な弁当のほうが理に適っているかもしれない。
日本の弁当なのに「チャプチェ」が入っているのがおかしかったが、
これがヤケにウマかった。
やっぱり本場の冷麺!本場のキムチ!
「イゴ、チャプチェ、マシッソヨ(これ、ちゃぷちぇ、おいしいね)」
「うちの会社が知り合いの韓国レストランで作ってもらっているんですよ。
おいしかったならレストランにそう伝えますね~。
え~でもなんで、韓国語デキルデスカ?」
「ソウルによく行くんです。
韓国語はしゃべれないけどね、単語だけスコシワカリマス。
でもまさかパラオでも韓国の人と韓国の味に会うとは思わなかったよ」
「わたしも韓国語を話す日本人のお客さんに会うとは思いませんでした。
弁当は『OBENTO』として町の売店でも売られてますよ。
日本語、同じ言葉です」
おお、今日はやたらと街なかでみかけた単語の謎解きがされる日なのだ。
そう、パラオは占領下からの影響で、今もたくさんの日本語が残っている。
「OBENTO」「YASUMI」「MATA ASHITA」など単語からアイサツまで。
ちなみに仕事終わりの一杯は「ツカレナオス」というらしい。
人の多い無人島、ランチタイムのひと時が過ぎていく。
Kemurbeab
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relaxation paradise @Palau [Palau]
ミルキーウェイの興奮を船内に残したまま、ボートは動き出した。
「泥」という言葉が似つかわしくない海底から現れた真っ白なそれは、
肌理の細やかさから「美白効果」を詠ったせいか、
客たちの腕や足、顔までも白く染め、笑顔とともに船内を大いに散らかしていた。
子供の「おイタ」が大人の都合で終わらせられるかのように、
それらは出発する前には海水でキレイサッパリ洗い落とされた。
ガイドやキャプテンは手馴れた感じで、しかも荒っぽく洗い流しはしたが、
シートの隙間や誰かの水着には忘れられたように白いこびり付きを残していた。
「次はシー・カヤックのポイントに向かいます。
カヤック・ツアーに申し込んでない方はその間、
別のスノーケリング・ポイントに案内しますね」
ふたたびけたたましい音を立てはじめたツインの船外機に負けないよう、ガイドが叫んでいる。
リピーター続出!!化粧品を超えた泥パックDX
しばらく走ると小島の間に設えた浮島が現れた。
その上でカヤック専属の担当が待ち受けていて、
ボートから渡ったカヤック・ツアー参加組のそれぞれに2人乗りのカヤックをアレンジしている。
あなたは朝からそこにいるのかい?
生憎、お金を払って働く気はなかったので、カヤック・ツアーは見合わせた。
汗水垂らして櫓を漕ぐよりもだらけてボートの上で本でも読んでいるほうが性に合っている。
ボートから8割方が降り、家族旅行の大きなグループと年配と呼ぶには早いご夫婦と、
一眼レフを持ったアヤシイ一人旅オトコが船内に残った。
「楽しんできてね!」
ガイドの先導に連なる面々に声をかけるとみなが笑顔で手を振っていた。
少しばかり警戒心が解けたのだろうか、こちらの問いかけに応えてくれる。
あるいはアヤシイオトコから遠ざかっていけるので、安心しているのかもしれない。
セット限定【980円】美顔革命!この価格が実現したワケ
軽くなったボートは外海を大きく回り、スノーケリング・ポイントでアンカーを下ろした。
外海に向かって開けた場所なのだが、あまり深くなく魚が多くいるポイントらしい。
潜ったところでローカル・ガイドが渡すスナック菓子を手にするとサカナまみれになれるようだ。
最後にメインどころのスノーケリング・ポイントが繰り込まれていたので、
ここでは海に入らず、デッキでのんびり文庫本を開いた。
デッキ、といっても舳先の小さなスペースだが、
ノイズもない世界、静かに揺れる小船でのひとときはなかなか至福だ。
「海、入らないの?」
エサやりを終え、上がってきたローカル・ガイドのオンナのコが話しかける。
「まだあとにも潜れるポイントあるんでしょ? 楽しみは取っておくよ。
それにジェリーフィッシュ・レイクがメインなんだ、それまでに泳ぎ疲れちゃうよ」
「それはいい作戦かもね。後半はクタクタになっているお客をよく見るわ」
「ねえ、彼はナニしているの?」
客のいない船尾ではキャプテンがバケツを抱え、なにか細かい手作業をしていた。
尋ねながら近寄って手元を覗き込む。
「ナニ作ってんの?」
「コレかい?『TET』だよ。わかる? こうやって齧るのさ」
なにやら木の実をむしり、それを白い石灰の粉と一緒に葉っぱに巻き、
巻きタバコのようなものができ上がると口に放り込んだ。
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「ソレが『てっと』か!
ビンロウの実だろ、英語でなんというか知らないけど、わかるよ」
「わたしはコッチが好き、これは『KEBUI』というのよ」
彼女は『ケブイ』と呼ばれる葉のほうを口に含んだ。
「『TET』に『KEBUI』ね、売店に貼ってあったアレか!」
「あ、そうそう。みんな街なかの売店で買うわ。アナタも噛んでみる?」
「いや、やめとくよ。そうか、張り紙の単語のナゾがようやく解けたよ。
どこの店にもデカデカと張り出してあるからフシギだったんだ。
へえ、こうやって作るんだ」
「でもこれは売店で買ったやつじゃなくて、今朝採ってきた新鮮なやつさ。
だから一味違うのさ」
体格のいい船長がその体型に似合わない細かい手先の作業を繰り返す。
『TET』と石灰(後に『AUS』とわかる)を『KEBUI』に巻き込み、
出来上がったものを『BOO』と呼ぶらしい。
彼はキレイに出来上がったモノをうれしそうにひけらかし、自慢げに口に含んだ。
チャポチャポと波に揺れ、船底は小気味よい音を立てる。
なにをするでもなく、他愛無い会話が交わされるこのひと時が心地よい。
ああ、ノンビリすぎて、その写真を撮り忘れた。
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white paradise @Palau [Palau]
「ミルキーウェイ」と呼ばれるスポットにはすでに3~4艘の先客がいた。
入り江、という言葉が正しいのかわからない。
袋小路のように入り組んだ小島の合間の海面がそこだけ白っぽく浮かび上がっていた。
辺りは鬱蒼とした木々が水面に覆いかぶさっている。
岩場や砂浜はなく、島側からアプローチできるような場所はない。
抽選で【JTB】旅行券5万円分プレゼント!
ボートはエンジンを切ると、惰性で先客たちのボートに沿い、舳先を連ねた。
エンジン音が収まると辺りが静かだったことを思い出させてくれる。
白い海面には他の船の客たちの奇声が響くだけだ。
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韓国人のガイドはカンタンに説明をすると、
反応の悪い客を船上に残し、白い海面に飛び込んでいった。
すでに潜っていたローカル・ガイドの女のコと共に海中に消える。
男性も!女性も!髪に悩む人に!!奇跡の泥パックでヘアケア♪
すぐに浮かんできた二人は両手に真っ白な砂を掬い、
船内のバケツにそれを入れた。
船内から「わあっ」と声が上がりはしたものの、
みな、どう振舞っていいのかわからず、躊躇しているようだった。
傍から見ていると「採ってきた白砂を見守る観光客」の図である。
エステティシャンが監修の究極の泥パック。是非その効果を体感して下さい!
指をくわえて見守っているのもアホらしく、
シビレを切らし、再び潜って浮かんできたガイドに声をかけた。
「ねえ! 海、飛び込んでいいかな?」
「え? 問題ないですよ、OK、オケ~」
答えは判りきっていたので、間髪入れずに飛び込んだ。
アクアクララ 今ならボトル3本が1本分のお値段!!
今の会話を聞いてか、おかまいなしに飛び込んだバカなコチラを見てか、
他のツアー客もそそくさと荷物をシートの下にしまったり、
ライフ・ジャケットを着込んだりと、おもむろに海に入る準備をはじめた。
ガイドくん、君の説明は悪くないんだけど、日本の人には言葉足らずなのよん。
否定する前に試してみなきゃもったいない泥パック
ミルキーウェイの海底を覆い尽くす砂は、
砂というよりは「泥」という感じで、感触は「粗めの片栗粉」というような感じだ。
水着や肌につくとベットリとまとわりついて、
しっかり洗い流さないとカンタンには落ちてくれない質感だ。
潜っては掴み、潜っては掴み、繰り返し不思議な感触を楽しんでいると、
ガイドのふたりに即席の「泥パック」をプレゼントされた。
髪も顔もドロドロで見分けがつかない白海坊主、見参。
手馴れたふたりは潜って姿をくらまし、
泳いでいる客の後ろに回りこんでは「泥パック」の攻撃を繰り返している。
気づくと自分たちのボートの周りも他の船と同じように奇声に包まれていた。
Milky Way
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entrance to paradise @Palau [Palau]
6月10日、旅は4日目。
朝から日ざしががんばっていて熱い。
約束の8:45、ロビーはすでに暑くなっていたが早々に下り、
ツアーのピックアップを待っていると、フロントの電話が鳴った。
「ツアー会社ですけど、10分ぐらい遅れます」
スタッフから受け取ったコードレス受話器の向こうの声は悪びれもせずそう告げた。
ああ、日本人としての正確さが恨めしい。
おそらく他のホテルでツアー客を拾うのに手間取っているのだろう。
業界事情がわかる身としては、おとなしく待つだけだ。
「ピックアップ来たら教えてね」
フロントにそう告げ、カップにコーヒーを注ぎ、エアコンがある部屋に上がった。
朝とはいえ、表にいるのは暑過ぎるのだ。
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ピックアップのマイクロバスは予告どおり10分後にやってきた。
ガイドにうながされ、乗り込むとほぼ満員の車内がこちらに気まずい視線を向ける。
その視線に負けないように「コンニチハ」と告げてみるが、
景気よく返事をしてくれたのはガイドだけで、
残りの乗客は生きているのか死んでいるのかわからないような目をしていた。
欧米系が乗っていなかったので、日本語でアイサツをしたのだが、
「ニイハオ」か「アンニョンハセヨ」のほうがウケがよかったのかもしれない、と
悔い改めていると、ガイドが日本語で車内に説明をはじめていた。
見知らぬ同士とはいえ、ツアーで一日を共にするのだから、
アイサツぐらい交わせばいいのにナニか損するとでも思っているんだろうか。
こういうとき、日本人の旅行ベタを痛感する。
カップルや夫婦、家族連ればかりのようだから、
ただ単に「オトコ一人で乗り込んできた」ヤツをアヤシんでいただけかもしれないが。
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車窓を楽しむまでもなく、クルマはすぐに到着した。
船着場にツアー会社の事務所が併設されているようで、
車内の説明の通り、エアコンが効いた建物の中で受付を済ませる。
「支払いオネガイシマス。
ジェリーフィッシュ・レイク、パーミットはコチラでツクリマス」
カウンターでパラオ・ローカルの色黒の男性がたどたどしい日本語で説明してくれる。
「苦情じゃないんだけど、パーミット$100って高いよね。
ツアー代金の$90より高いんだぜ? 政府、ヒドくない?」
他の客にわからないように英語でツブやいてみると、
彼は急に笑顔になり、捲くし立てるように話し出した。
「3倍の値上げはヒドいですよ。でも政府の決定、会社、利益ないです。
でもオキャクサンたち、かわいそう。高いネ~」
環境保護対策、あるいは増えすぎた観光客への対抗策だろう、わからないでもないが、
「持っているところからとりましょうね」というのはどこの政府も考えるところだ。
あまりの値上げに観光客を失いかねないツアー会社からなどは陳情を上げているらしい。
受付の書類を記しながらそんな裏事情を教えてもらった。
「これ、パーミット、できました。
アッチでフィンとゴーグル、借りてくださいね。出発のとき、呼びます」
【耳より情報】 英語が突然聞きとれる新技術!
たいして待たされることもなく、屋根つきのトレジャー・ボートに乗り込んだ。
両側2席ずつ、7~8列ほどのシートはほぼ埋まっていて、
ピックアップの時よりも人数が増えているようだった。
プラスティック製のシートは中に荷物が入れられるようになっていて、
スノーケリングで上がっても荷物を濡らさずに済む、というわけだ。
韓国人のガイドがこの船のキャプテンとローカル・ガイドの女性を紹介する。
どうやらこの3人が本日の案内役らしい。
説明が終わるのを待って、ツインの船外機がけたたましい音を立てはじめた。
船底が波を叩く音と風を切る音が激しい。
会話がままならないほどのスピードに達し、船は気づくと外海を走り出していた。
海はほとんど凪に等しいといってもいい表情で、パラオの海の穏やかさを印象付ける。
それでも海面を叩いて走るボートのノイズは強烈だ。
次第に遠目に小島がポツポツと現れはじめた。
すべての島は波の当たる裾の部分をえぐられていて、
頭デッカチの奇妙なスタイルを保っている。
たぶん石灰質の岩が削られ、硬い部分が島として残ったのであろう。
ベトナム・ハロン湾を思わせる風景が広がったが、
旅先の情景を他の土地に重ねるのはあまりに愚かなので、頭の中でそれを打ち消した。
http://delfin.blog.so-net.ne.jp/2009-01-05 ハロン湾
15分ほど走ると船は極端にスピードを落とし、小島の合間を縫って進んだ。
最初の目的地「ミルキーウェイ」が近づいてくる。
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stunning paradise @Palau [Palau]
熱い時間をドーナツ屋でやり過ごし、外に出た。
路地裏を歩くと日陰や軒先で昼寝する姿をちらほら見かける。
島だろうが大陸だろうが、熱い時は無理に動くことはない、
「シエスタ」が正解なのだ。
スペイン語を借りて、そう言ったほうが響きがいいよね。
観光局でもらったパンフで、
「TOYOTAレンタカー」が一番安いクルマを抱えていることがわかっていた。
大きなホテルに「Hertz」や「budget」のカウンターもあったがそれらは無視して、
T-dockという場所に近いミドルクラス・ホテルの事務所に向かった。
ホテルのロビーはひと気がなく、薄暗くひっそりとしていた。
スタッフを呼ぼうかと見渡すと、
左手に「TOYOTAレンタカー」の緑色のプレートが掲げられていた。
海外でレンタカー
ノックし、ドアを開くと、白髪で色黒のオジサンが慌ててこちらに向き直った。
「レンタカー、ここでいいのかな?」
そう声をかけるとオジサンは赤く染まったツバをティッシュに吐き出した。
それは台湾などで愛用されている「ビンロウ(檳榔)」というやつで、
椰子の一種の実や葉を口に含み、噛みタバコのように楽しむ。
後々、わかるのだが、パラオでは実の部分を「TET(テット)」、
葉っぱを「KEBUI(ケブイ)」というらしい。
「OBENTO」と一緒に売店の店先に張り紙されていたのはコイツのことだったのだ。
近年、発ガン性が高いことが指摘され、
台湾辺りでは利用者が減りつつあるようだが、ここでは普通に売店に並んでいた。
台湾でビンロウを口にする人を知っていたので、さして驚きもせず、話を続けた。
「クルマ、明後日から借りたいんですけど」
「ちょっと待ってね、あさってね。クルマはどのタイプがいい?」
「安いのに越したことはないけど。一番安い$30のがあればうれしいですね」
時折、ツバを吐き出しながら、ホワイトボードに刻まれた予約表をチェックする。
接客中でもビンロウはやめないのね。
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「明後日からなら$50のジムニーだなあ。$30のヴィッツは埋まっているなあ」
「う~ん、$50ですかあ。
保険入れてトータルでいくらになります? ガスは入ってます?」
「全部で$80ぐらいかな。ガソリンは自分で入れるんだ」
アメリカだと保険代、燃料費込みの割安なパッケージがあったりするのだが、
ここパラオではどうやらレンタル料の5割ほどの保険料がかかるらしい。
「これって、24時間の料金ですよね?
明後日、11日の昼に借りて、
12日の夕刻18時に空港戻しだといくらになりますか?」
「いま、オフシーズンで予約詰まってないから、
そのぐらいなら1日分の料金でいいよ」
「それはうれしいなあ! でも$50がねえ、一番安いの借りたかったから」
「$30は3台あるんだけど、長期予約が入っちゃってんだよね。
それなら10%OFFにするから、どうだい?
どうせ$50のクルマは予約入ってないから割り引くよ。
保険もいらないんじゃない? その分、セーブすれば$45だけで済むよ?」
ポンポンとハナシが展開し、終いにオジサンは大胆なことをいいはじめた。
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「保険いらないって?」
「だってここはパラオだよ。いつ保険が必要なのさ」
(オジサン…。おもろすぎるよ、ビンロウでハイになってるのかい?)
たしかにここ数日、メイン・ストリートも裏通りも歩いてわかっていたのだが、
パラオの人たちはとても安全運転だ。
広い通りでも40km以上は出すことはないし、
交差点にはなにせ信号がないのだが、譲り合って、粛々とすれ違っていく。
震災の停電で信号が消え、交差点がパニックになるどこかの国とは交通事情が違う。
「そういうなら、$45のアイデアに乗っかっちゃおうかな」
ロー・シーズンゆえのアドバンテージで、あっという間に旅先の足は確保された。
「泊まりはドコ? 明後日、何時に行けばいい?」
「宿にピックアップに来てくれるの? 助かるなあ。じゃあ、11時はどうですか?」
「ピックアップじゃなくて、デリバリー。宿に持っていくよ。
返却は空港に18時ね。支払いはクルマを渡すときだから用意しておいて」
まさにトントン拍子の展開、だがこのリズムはこれだけでは終わらなかった。
T-dock
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fortunate paradise @Palau [Palau]
朝から景気よく照り続ける日差しの中、メイン・ストリートを歩いた。
到着日からすでにこの通りを何往復しているのだろうか。
ここ以外、うろつくところもないのだからしかたがないが、
すでに大通りには飽きていたので裏手にズレ込んでみた。
メイン・ストリートに沿うように平行に走っている裏通りは、
日本スタイルの「居酒屋」やミドルクラスのホテルが並び、
やはりどこでも見かける売店が間を埋めていた。
メイン・スポットのWCTCの裏手にまでくると、
BARやCAFEのカンバンが増えはしたが、
日の高いこの時間には灯りを消して、まったくやる気をみせていない。
通常の観光客はおそらく海に繰り出している時間であろうから、
彼らが戻ってきてからネオンを灯し、営業に熱を入れるのだろう。
「Best Coffee & Donuts House」という店は「OPEN」表示を出していた。
どうやら昼間でも営業しているらしく、クルマが乗り付け、人の出入りがある。
ランチにドーナツを決め込むほどアメリカン・ナイズされてはいないが、
人の動きに惹きつけられるようにドアを開け、中に進んでみた。
そういえば朝食にドーナツ、というアメリカの食習慣は馴染みはしたが、
コーヒーにドーナツを浸して食べる、ってのは未だに馴染めないぞ。
こんなことじゃ、立派なボストンの警察官にはなれそうにないな。
ついでに数年前に起きた「クリスピー・クリーム~」の行列はナンだったの?
あのドーナツ屋って所謂「ドライブイン・ドーナツ」ですぜ。
NFLの現地取材でレンタカー駆って、
ガス・ステーション(ガソリンスタンドって日本語英語ね)に立ち寄ったとき、
コーヒーのついでに口にするぐらいのものだったので、
それをあんなに行列して食べるものなのかあ、と不思議だったなあ。
どうせなら「INandOUT」よ、日本上陸してくれないか。
横長のこじんまりとした店は、
入ってすぐ正面にガラスのショーウィンドウがあり、その右にレジが据え付けられている。
右手の奥はイート・イン・スペースらしく、4人がけのテーブルが4つほど置かれている。
「ハーイ」と声をかけ、中に進み、レジのオバチャンに話しかけようとすると、
窓際の2つのテーブルを陣取っていたオヤジサンたちにジロリと睨みつけられた気がした。
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「甘くないものってありますか?」
「サンドウィッチかバーガーがあるわよ、人気はこれね」
レジにいたオバチャンは気さくに答え、ガラス・ケースの中を指差す。
その先にはバーガー状のハムエッグ・サンドとツナ・サンドが並んでいた。
「じゃあ、ハムエッグとコークください」
「これ、ハムエッグ・チーズ・サンドだけど、ダイジョウブ?」
「え? チーズも入っているの? それならもっとうれしいな」
ハムエッグ・チーズ・サンド$1,85+コーク$85で$2,70を支払う。
「Go or Here?(持ち帰るのか、ここで食べるのか?)」
「エアコンが効いているから、ここでゆっくりしてもいいかな?」
「もちろんよ」
トレイを持って、テーブルにつくと、
5~6人いたオヤジサンたちは自分たちのハナシに夢中になっていた。
先ほどの視線にヨソモノが地元の人たちの憩いの場をジャマしてしまったかと危惧したが、
どうやらコチラの考え過ぎだったようだ。
乱入したニホンジンのささやかなランチタイムなど誰も気に留めてないようで、
保険がどうの、支払いがどうのという単語が飛び交うハナシがひと段落すると、
それぞれが帰っていったり、コーヒーをおかわりしたりと、自分の時間に戻っていた。
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日中の一番熱い時間、快適なエアコンの元でしばらく読書を続けた。
ドーナツ屋は人気のお店らしく、人の出入りが激しい。
箱で買っていく人もいれば、子供にひとつずつドーナツを食べさせ、帰っていく夫婦もいる。
近所の子供が大勢できて飲み物だけ頼む姿など見るとさながら駄菓子屋のように思えた。
文庫本をめくる合間にそんな光景を見ては楽しんでいた。
「ドーナツとコーヒーのセットもらえますか?」
「気を使って追加注文しなくてもいいわよ、
気にせず涼しいんだから長居して」
オーナーなのだろうか、レジをチェックしていたオバアチャンが優しい一言をくれた。
「いや、ホントにお腹が減っているんですよ。ランチにサンド一個でしたから」
座って文庫本を読んでいただけだったのだが、すっかり小腹が減っていた。
ドーナツ2個とコーヒーのセットで$2,25。
ちなみに読書というやつは時間的にはジョギングと等価でカロリーを消費するらしい。
いかがです「読書ダイエット」、読めば痩せる! なんて。
生憎、マンガ本ではダメらしいですぜ。
それよりもドーナツ2個も食ったらダイエットにはならないよな。
豪奢ではないが、ステキなくつろぎの時間。
Best Coffee & Donut House
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sad paladise @Palau [Palau]
6月9日、旅は3日目。
昨夜は夕食も食べずにベッドに沈んでしまった。
こう書くとカッコよく聞こえるが、
ただ単にフライトの疲れが残っていたのと、
ただ単に歩き過ぎで電池切れになったに過ぎない。
なにせ自転車で軽快にパラオの風を切って過ごす予定だったのが、
地べたを歩き回り、南の島の暑さでドベドベに汗をかき、
大して得るものもない一日を過ごすことになったのだから疲れは割り増しだ。
今日も同じように無為の時間を過ごすわけにはいかず、できることからはじめた。
まずはフロントに頼み、スノーケリングのツアーをブッキングする。
スタッフの彼は慣れた手つきで電話番号を押してくれた。
レジャーボートで白い砂が沈む「ミルキーウェイ」、
それに「ジェリーフィッッシュ・レイク」を巡り、
合間に「スノーケリング」、ランチがついてのワンデイ・トリップ。
$90のアイランド・ホッピング・ツアー。
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ここでは「オフ・シーズン」というアドンバンテージが効いて、
あっさりと翌日のツアーをブッキングすることができた。
ところが同時に悲しいお知らせが電話口に響く。
「ジェリーフィッッシュ・レイク」のパーミット(許可証)が値上がりしたという。
この6月1日から$35が$100に上げられたのだ。
上げるにしても3倍は激しすぎないか、パラオ政府よ。
ツアー料金より高いし。
政府発行の許可証なので、ツアー会社に文句をいってもしかたがないので、
明朝8:45、モーテル・ピックアップの約束をもらい、電話を切った。
しかし自転車屋にしろ、許可証にしろ、一週間ほど待ってくれないか。
下調べもしないで飛び込んでくる愚かさは一応、棚に上げておこう。
「自転車どうなった?」
退屈そうに電話が終わるのを待っていた彼に問いかけた。
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昨日はレンタル・ショップのバケーション表示にやられ、
描いていた予定は真っ白、おまけにアタマの中身も白くなっていた。
闇雲に街歩きを続け、自転車やバイクが置いてある店で尋ねてみたものの、
予想通りの答えを繰り返しもらうだけで収穫はなく、時間が過ぎた。
メイン・ストリートを東の端で折り返し、西の端にある「パラオ観光局」まで歩く。
観光局の小さな事務所に入り、エアコンで汗を乾かし、カラダを冷やしながら、
レンタル自転車に関して尋ねてみたが、やはり同じ店の名前が出てきた。
彼によるとパラオで自転車を貸す店はあの一軒しかないらしい。
「オフ・シーズンだからね。今のうちにバケーションをとったんだろうね。
あなたも休暇? どちらから?」
「日本からですよ。仕事ですけどね。
南のリゾートにオトコ一人休暇で来る趣味はないんで」
どう見てもアジア顔をしているのだが、
181cmという身長にサングラス、というのが日本人らしくないのかもしれない。
「ニホンジンでしたか。
いや、英語に臆せず話してくるので、別の国の人かと思いました」
「ははは、ニホンで覚えた英語じゃないので。発音がヘンでしょ?
自転車がダメだとするとバイクを貸してくれるところはないですかね?」
「ないですねえ。パラオはこの陽気ですからね。
借りるとすればレンタカーでしょう」
日本人旅行者に人気のホテルが毎日値下げ・バーゲンハンター
日が落ちかけた頃にモーテルにトボトボと帰ってくると、夕涼みのスタッフがいた。
「今日はなにしたの?」
自転車を借りるはずのアテがはずれ、予定が狂い、
しかたなくメイン・ストリートを歩き尽くしたことを伝える。
「歩いたの? コロールを一日? スゴイネ~。
それなら知り合いが自転車持ってないか、聞いてあげようか?」
「そいつはうれしいな。ダメモトで頼むよ~」
ひょっこり沸いて出たハナシの答えを尋ねたのが先の「自転車どうなった?」だ。
「あったけどさ、ブレーキがイカレてるからダメだね」
売店の向こう側、別棟の中に古いマウンテンバイクが置かれていた。
チェックするとタイヤやギアは健全に役目を果たしていたが、
ブレーキ・ワイヤーはこれ以上張れないぐらい引かれていて、
工具を借りてイジってみるが、その役割を思い出す気はないほど頑固な状態だった。
「コレ、ダメだね。いくらパラオののどかな交通事情でもこれじゃあ死ぬよね。
ダメとなるとあとはレンタカーしかないか」
ツアーをブッキングして、明日の予定が確定したことで安堵が広がったせいか、
昨夜の会話を思い出していた。
だが今日を含め、残り4日のうちの1日分の予定が埋まっただけでしかない。
依然、写真を撮り歩く足は確保できておらず、安堵に浸るには早い。
まずはランチで燃料補給、作戦会議はその後だ。
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disappointment in paradise @Palau [Palau]
あれだけ屋根を叩いていたスコールが蛇口を捻ったように止まった。
昨夜、歩いた道を同じように辿り、メイン・ストリートを目指す。
まずは自転車を借りに行くのだ。
レンタカーを借りるつもりでいたのだが、
ひょっこりレンタルの自転車屋があるという情報を見つけたので、
旅の前半は自転車で、必要があればレンタカーで、という算段を立てた。
クルマでもかまわないのだが、
こいつはいい画になりそうな場所を見つけた際、
急に止まるという荒業が効かない上に停める場所にも気遣いがいる。
その点、自転車やバイクは止まるにも停めるにも融通が利く。
コロールのメイン・ストリートのド真ん中にWCTCというショッピングモールがある。
その真向かいにショップがある、ということなので、歩きでそこを目指した。
ちなみにあとで調べてわかるのだが、
WCTCは「Western Caroline [Islands] Trading Company」の略称。
コロールのメイン・ストリートは「Main」という名の通りで、
まさに「メイン・ストリート」だった。
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昨夜到着まもなくして歩いたメイン・ストリートはすでに暗く、
どことなく寂しい感じがした。
21時だというのに道を歩く人は少なく、
ヘッドライトを灯したクルマだけが行き交っていた。
道行きに冷静に観察すると、
ガソリン・スタンドに併設されたショップに出入りする人は多く、
となりの体育館ではバスケットボール・プレーヤーの声が響いていた。
暗さと寂しさの印象は慣れない土地での心持ちのせいかもしれなかったが、
街灯や明るい看板がないことがどうやらそれを割り増しにしていたようだ。
ガソリン・スタンドのショップのなかをひと通り眺め、
メイン・ストリートを西側から東に向かって歩く、空港への道を戻る形だ。
ポツンポツンと点在し、明るい光を放つレストランには、
クルマから店へ、店からクルマへと人の動きがあった。
薄明かりが漏らしている売店はクルマが横付けしては去っていく光景を繰り返していた。
それでも「首都の目抜き通り」らしさは見出せず、
長距離バスからアジアの片隅の地方都市にでも降り立ったような気分に浸っていた。
TVで紹介されたカタツムリクリーム
地図もない徒手空拳で歩いてきたので、
果たしてここがメイン・ストリートなのか、疑ったほうがいいのかもしれない。
もっとも宿が出発地点なので、疑う余地はないのだが。
こじんまりした売店が繰り返し現れるが、どこも似たような造りでおもしろ味はない。
ひと気のない店はサラリと眺めて後にし、
2~3人の客を飲み込んでいた売店に足を進めた。
入口には「OBENTO」や「TET」「KEBUI」という文字が貼られていた。
店内はスナックや飲み物を中心とした品揃えで、
そのほかに生活雑貨を置いているだけで気をひくようなものはない。
2Lのミネラル・ウォーターと朝食用にサンドウィッチを買い、宿に戻った。
レバ刺し風こんにゃく
メイン・ストリートは昨夜同様、静けさを保っていた。
昼間ということもあって、さすがに人の行き来があったが、
見渡す風景はやはり「首都の目抜き通り」にしてはうらぶれていた。
15分ほどでWCTCに到着、ここには大きなスーパーもあるので、
クルマの出入りや人の行き来が多い。
真向かいのショップに向かう。
入口のドアは閉まっていた。
ランチタイムかはたまたシエスタか、と思い、
店先を見渡すと小さな張り紙があった。
「6月6~26日まで休業します」
おいおい。
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途方に暮れかけたが、思い立って、隣の店に声をかけた。
「おとなり、休みなんですか?
「なんか昨日、休暇で日本に帰る、っていってたわよ」
おいおい。
入れ違いで日本に帰らなくてもいいんじゃないの。
自転車を駆って写真を撮る、という軽やかなアイデアは水泡に帰した。
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6月8日、旅は2日目。
出かけようと準備をしていたら、激しいスコールが窓を叩きはじめた。
朝から出鼻をくじかれた形で仕方なく食堂に降り、コーヒーを注いだ。
「あはは、出かけられないね」
「ああ、まいったよ。
まあ、到着のとき、降らなかったからラッキーかな」
昨夜、空港でピックアップしてくれた彼が玄関前で作業していた。
パラオにはいわゆる「安宿」というのがなかった。
ローカル情報を得るために旅行者と交流できる
ゲストハウスやホステルが好ましかったが、それがない。
安いものではサーファー向けの「ゲストルーム」があったが、
これは一ヶ月単位なので話にならず、途方にくれた。
なんとか調べつくすと$40のモーテルがもっとも安い、という感触を掴んだ。
知らない土地は相場がわからなくて困る。
経費を節約するため、数軒あるモーテルを選択肢に入れ、
そこから空港送迎が無料、という宿にメールで問い合わせをかけ、
結果、「Lehns Motel」に予約を入れた。
6月はオフ・シーズンということもあってか、メールの返信はすぐに来た。
直前の予約にもかかわらず、カンタンに部屋を確保することができた。
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入国を終え、到着ロビーに出ると、
ツアーや大きなホテルのピックアップ・スタッフがバナーを持って立っていた。
「レーンズ・モーテルはダレ?」
誰彼かまわず尋ねるとそのなかの一人が後方に向かって声をかけてくれた。
空港送迎に来ている面々は毎日ここに集う慣れた顔同士なので、
アレコレ探し迷うよりも誰かに聞いて仲間に呼んでもらったほうが早い。
これはシンガポールのランド・オペレーター(現地旅行会社)で覚えたワザだ。
当時、実際に空港に行く仕事ではなかったが、
「ミーティング」という名の日本からのVIPを出迎える役割があった。
そんなとき、ターミナル出口が数箇所あるチャンギ空港では、
自社のガイドを探し当てるのに他社のガイドに尋ねるのが手っ取り早かったのだ。
そのせいで今でもシンガポールに到着すると古い顔馴染みのガイドには、
「今日はなにしているの?」といわれる。
日本から来た人間にいうセリフとしてはあきらかに間違っているのだけど。
モーテルのピックアップ・スタッフは頼りない英語でこちらを確認すると、
駐車場を先導して歩いていく。
「雨、降ったんですね」
「さっきまで激しいのが降ってたんだけどね、ピタリと止んだよ」
到着時の幸運は南の島でも健在のようだ。
シャワーで濡れた路面が南の島の蒸し暑さを吸い取っていた。
空港送迎には似合わない4WDのトランクにキャスター・バッグを放り込む。
助手席に乗り込むとき、クルマが日本製のジムニーだったことに気づいた。
パラオの空港は「コロール」という名称ながら、
メイン・ストリートがあるコロール(Kror)島ではなく、
東隣の島・バベルダオブ(Babeldaob)島にある。
空港の周りには何もなく、
20時過ぎとは思えない暗さの夜道をクルマは走り出していた。
「宿まで30分ぐらいだよ」
ステアリングを切る彼はシャイな感じでボソッとそうつぶやく。
橋を渡り、西側のニギヤかなコロール島に向かうわけだが、
距離があるため、空港送迎に$2~30を求める宿が多い。
この宿は「送迎無料」を掲げていたので、大きなアドバンテージだ。
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宿にはキッチリ25分で到着した。
部屋を見せてもらうと、スイート(続き部屋)ではないが、
サービス・アパートメントのようなカンタンなキッチンがついていて、
その奥の部屋にダブルベッドが鎮座していた。
古い部屋だが清潔だ。
「希望すれば毎日、部屋の掃除とベッドメイクはするよ」
さっきまで運転手だった彼がエアコンのスイッチを入れながらそう説明する。
ベッドメイクのことはあまり気に留めなかったが、
エアコンがキッチリ効きはじめた上に質素な流しがあることがうれしかった。
フルーツを買ってきたり、なにかを食べるのにも便利だからだ。
「近くにコーヒー・ショップか売店ある?」
「今来た道の途中にあったガソリンスタンドの売店か、その並びにあるよ」
「ありがと。あとで行ってみるよ」
5泊分の宿泊代金をUSドルで$200渡し、領収書をもらうと、
いつものように部屋に荷物だけを放り込み、すぐに出かけた。
現地に着いたら飲むか食べるか、なにかを口にしたいのだ。
そうじゃないと旅がはじまる気がしない。
コーヒー片手にスタッフとしゃべりながら到着の夜を思い出していた。
Lehns Motel
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fly to paladise @Palau [Palau]
UA257の機内は「プレミア・エコノミー」のエリアに限っていえばガラガラだった。
ビジネスとエコノミーの間、機材でいうと羽の上あたりが、
「プレミア~」に割り当てられているが、
この10列ほどのワンブロックには7名しか座っておらず、
一人が一列を占拠しても大いに余る状態だ。
ちなみにこの「羽の上」というのが機内の快適さにおいて重要で、
羽についたエンジンの前と後とでは機内のノイズが倍ほども違う。
前方は吸気のモーター音程度だが、
後方はジェット音でものすごいことになる。
そのためエコノミーは「貧乏席」などと呼ばれるのだが、
この席のみなさまは異常に乾燥した機内で、
ジェット音に抗ってしゃべることを強いられるため、ノドをやられ、
到着するとカラオケあとの酔客並みのハスキーボイスとなり、
おまけも耳をやられているため、やたらと大声になるのが特徴だ。
この機ではギャレーより後方がそのエコノミーで、
前方から圧縮されたように人が詰まっていて、満席のようだ。
グアムに繰り込むのであろう、リゾートらしい帽子をかぶった顔で埋め尽くされている。
機内で帽子は必要ないと思うのだが。
前方のビジネス・クラスもすべて埋まっていた。
ほとんどが巨体を抱えたアメリカ人なので、
マイルのアップ・グレードでC席を確保したのだろう。
残念ながら「シルバー」のこちらに自動アップ・グレードは割り当てられなかった。
お気づきかと思うがこの後方に押し込められるのがツアーや格安航空券の人たちだ。
エンジン音もうるさく、料理もなくなり「チキンorビーフ」とも尋ねられることもなく、
CAは「傍若無人」「厚顔横柄」というこの席専用の特別な対応をしてくれるし、
そのうち補助席がつく、というウワサもあるぐらい詰め込まれた素敵なエリアです。
それをフライト全体に施しているのが話題の「LCC(ロー・コスト・キャリア)」ですね。
こちらも格安航空券でのご搭乗なのだが、
幸い「マイレージ・プラス」の「シルバー・メンバー」なので、
自動で「プレミア・エコノミー」が割り当てられることになる。
わずか数cm席幅が広いだけなのだが、
181cmの身長を抱えるこちらとしてはヒザをすり減らさないですむのがありがたい。
それを狙って毎年、なんとかシルバー・メンバーを維持することにしているのだ。
機内では疲労軽減と代謝を上げるため、死ぬほど炭酸水を飲み、コーヒーを浴びて、
繰り返しトイレに動くので、通路側を確保することにしている。
いつものように通路席をブッキングしたのだが、
その必要がないほどここだけが空いていた。
2-5-2席の配列の「5」を確保、これにて「貧乏人のファースト・クラス」が完成。
機内食も断り、フル・フラットで熟睡していると3時間後の14:30にグアムに到着した。
到着にはしゃぐツアー客を尻目に、トランジット・エリアに進む。
手荷物を流し込み、全身スキャンのX-ray検査。
どういうわけかわからないが、US本土よりも検査がキビシイ。
応対が丁寧なので不快感はないが、ホトンドの人がカバンを開けられている。
なぜだろうと首をかしげながら、「United Club」のラウンジに向かった。
ラウンジ利用ができるとトランジットが苦痛でなくなる。
手持ち無沙汰な出発ロビーでくつろげる場所があるというには大きなアドバンテージだ。
酒がイケる口ならラウンジで酔っ払っていればいいのだから、さらに割り増しですぜ。
3時間のトランジットのあと、搭乗時間ギリギリまでラウンジでくつろぎ、ゲートへ。
コロール行きのフライトはけっこう混んでいて、
座席幅いっぱいの体型を狭い席に押し込んでいるポリネシア系の人たちが増えていた。
フライトは2時間ちょっと、コロールの空港には20時前に到着した。
入国に進むと地方の遊園地の券売所のような木製のボックスが3つほどあり、
係官は訪れた人々のパスポートを念入りに調べ倒していた。
入国管理官は滞在日数や滞在先といったお決まりの質問を無愛想に口にする。
「帰りのチケットは?」
「E-チケットだからプリントしたものはあるけど?」
「それでいいわ、みせて」
小さな国や後進国ではその国を出て行く証(あかし)を求められることが多いので、
いつもは打ち出さないE-チケットをプリントしてきていた。
「パラオヘヨーコーソー」
「あはは、ステキなニホンゴだ」
木製のボックスに合わせて肥大化したような管理官のおばちゃんに、
判で押したようなアヤシイ日本語で歓迎の言葉をもらうと、ターンテーブルに進んだ。
ターンテーブルは1つしかなく、古びた黒いベルトが音を立てて回っていた。
バゲージを預けなかったのは正解だったかもしれない。
一国の首都空港というのに日本の地方空港よりもこじんまりしていて、
物悲しさよりも可笑しさがこみ上げてきそうになった。
あとは外に出れば到着ロビーに宿のピックアップが待っているはずだ。
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going to paradise @Palau [Palau]
ロンドンの熱狂もまだまだ冷めておりませんが、
みなさんも寝不足の日々からようやく解放されました?
メディアはあいかわらず無責任で、
「史上最多のメダル数」なんて逆上せ上がって囃し立てております。
競技・種目数が増えているんだから、
当該メダルが増えるのは当たり前だよ。
しばらくはオリンピック・バブルにすがり、
見慣れた選手が画面を覆い、
タレント(才能)を見つけてはしゃぶり尽くすことでしょうね。
しかし今大会は「感動をありがとう」という気持ち悪いセリフが少なかったですね。
感動は「与えられる」ものではなく、
自ら心「動かす」もの、ということに気づいたのかな。
夏の暑さもまだまだ衰えませんが、
みなさまはお盆休みでおくつろぎですか。
休日の暇つぶしになればと、
4・5・6月のソウルとバンコク渡航をすっ飛ばし、
6月に訪れたパラオ紀行を刻んでまいります。
残暑厳しいですが、南の島の美しい風景で
ひとときの「涼」となれば、さいわいでございます。
あ、でも文章は暑苦しいかな?
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6月7日、5時半の私鉄で成田空港を目指す。
フライトは11:10だったが、
始発に近い時間の列車に乗り込んだのは朝のラッシュを避けるためだ。
キャスター・バッグを引きずって通勤ラッシュに割り込むほど、
無神経でも酔狂でもない。
チェックイン・タイムより1時間ほど早く空港に着くことになるが、
「Priority Pass」を使えば、ビジネスクラス・ラウンジに長居できるので、
その時間が苦痛、ということにはならないで済む。
今回、観光局がらみの仕事でパラオに飛ぶことになった。
以前、代理店経由でタヒチ観光局の記事を書かせてもらったことがある。
そのときは代理店の人間だけが現地に飛び、
こちらはアリモノで記事を書くという旅行記事にありがちな仕上げのもので、
「オレモ現地ニイカセロヨオ」と歯噛みしながら、原稿を仕上げた。
タヒチ観光局とエア・タヒチ・ヌイのキャンペーンサイト『タヒチ楽園ブログ』。
http://www.airtahitinui.co.jp/special/report/index.html
今回はその逆でライターだけが飛び、
カメラ担いで現地を回って来い、というわけ。
各所、経費に関してはカツカツなので、一人で飛べる身は重宝される。
ただし日程に余裕はあるものの、協賛やバーターがないので、
手配はこちらで行い、さらに現地のアテンドもない、という状態で、
まさに「一人」で切り盛りしなくてはならないのだが、
それはそれでなにかに拘束されない分、自由に動き回れるので気は楽だった。
自由、となるとチケットから宿まで手配しなくてはならない。
このあたりは「元旅行屋」としてはお手のものだが、
旅そのものよりもあれこれ計画しているこのときが一番楽しい時で、
成田に向かうその時間が一番億劫だったりする。
ネットでチケットを検索してわかったのだが、
パラオに行くのは日本からグアムを経由し、
パラオのコロールにたどり着く、というのが定番らしい。
個人的に「南の島」というやつに縁遠くて、
ツアコン時代に社員旅行の定番グアムやハワイに数回飛んだこと、
数年前には繰り返し「PROBOWL」の取材でハワイ滞在を繰り返していたこと、
「南の島」の経験はそれぐらいなのだ。
プロボウルの取材では4~5年続けてワイキキに飛び、
一週間は現地に滞在、レンタカーで方々出向いたものの、
あまりオイシイものがないハワイの街には飽き飽きしていた。
ベトナム料理の小さな食堂が一番うまくて、そこにはハマっていたが、
リゾート地での一人メシはどんな旅先よりも割り増しで侘しさが募るのです。
振り返ると幹事の機嫌で左右される社員旅行の添乗員なんか、
今考えるとよくやっていたなと思う。
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出発日やら帰国日をいじっていると、
バンコク経由やシンガポール経由というチケットのルートが画面に現れた。
この時まだパラオの正確な位置関係を把握していなかったが、
どうやら日本への直行便のほか、フィリピン・マニラを経由して日本に帰国する、
というパターンのチケットがあるらしいことだけはわかった。
マイルを貯めている「スター・アライアンス」系列の航空会社を使うと、
コロール~マニラ~バンコク~ハネダとか、
コロール~マニラ~シンガポール~ナリタなんて、チケットが同額で現われる。
グアムからパラオに南下する距離を西に移すとマニラが肩を並べているのですね。
マニラからはスタアラ系のタイ航空(TG)でバンコクか、
シンガポール航空(SQ)を使い、シンガポールを周って日本に帰るらしく、
曜日によって、行きも帰りもこのルートが適用されるようだった。
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このとき、ひらめいてしまったのだ。
冷静に考えるとかなりオバカなことなので、
「ひらめいた」などという言葉を使うのは語弊があるかもしれない。
「頭の上に豆電球が光った」とかに留めておくほうがよいでしょうね。
「パラオ」という未踏の国のほかに「フィリピン」という国を踏めるということ、
久々、シンガポールに里帰りした上にSQにも乗れるぜい、ということで、
豆電球がコロコロと3つ4つ光った気がする。
いずれも24時間以内のトランジット扱いなので、空港使用料はかからないし、
シンガポールなら手元にSIN$を持っているので、両替の手間もない。
マニラでペソが必要だが、英語が通じる国なので、大して困ることはなかろう。
こうして豆電球はアタマの中でますます増えていった。
フライト3本もこなして目的地に行くというのは到着時点で衰弱している可能性が大なので、
このルートは帰りのオマケということにし、
フライトがある曜日にあわせて日程を定め、
行きはまっすぐグアム乗り継ぎをブッキングした。
続けてコロールの滞在先、マニラのホテルをネットでブッキング、旅の準備はこれで完了だ。
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午前の成田空港はヨーロッパ便のフライトが集中しているため、混雑していた。
この時期は価格の安いロー・シーズン、それを狙ったツアー客でロビーはごった返している。
時間帯のいい午前のアジア行きのフライトで現地に飛ぶビジネスマンはうんざり顔で、
揃えたようにデイパックを背負ったツアー客を踏み越え、
不慣れな客に引っ張られた迷惑なキャスターバッグを蹴り飛ばし、ゲートに向かっていた。
そんなビジネスマンを露払いに、ユナイテッド・クラブのラウンジにたどり着いた。
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海底真っ白のパラオから from Palau [Palau]
パラオ5日目、6月11日です。
雨季といってもスコールは少なめ。
到着日の夕方と2日目のランチ前に激しく降っただけ。
3日目の土曜はスコールでできた大きな水溜りが干上がってしまう熱さでした。
その熱さの中、汗を噴き出しながら、メイン・ストリートを行ったり来たり。
金曜日、つまり本格的に動き出した到着翌日、
自転車を借りる当てが外れ、かなり途方に暮れて、
フライト・チェンジして6日間の滞在を縮めて帰るかなあ、とまで考えましたが、
思い直して、夕刻にまずはトレジャーボート・ツアーをブッキング。
ミルキーウェイ~ジェリーフィッシュ・レイク~スノーケリング、
という$90のワンデイ・ツアーを申し込み。
とりあえず、海に出ないとはじまらないことに気がついた。
返す刀でレンタカーもブッキング。
最後、空港返却でお願いしたので最終6日目夕刻、出発までの足ができた。
借りるのにあたり、事務所のオイチャンがオモロくて、
ロー・シーズンならでは、で融通利かせてくれて、ラッキーラッキー。
さて、昨日日曜ですが、トレジャーボート・ツアーでアイランド・ホッピングに行ってきました。
まずは『ミルキーウェイ』、
3mほどの海底を肌理の細かい白い砂が覆っているポイント。
お決まりのフェイス・パックを楽しみ、白い海面にダイブ。
ランチタイムは無人島でオベントウ。
日本語が生きているパラオでは、
店先に「OBENTO」なんて文字をよく見かけます。
笑っちゃうのがオベントウに入っていた『チャプチェ』、
こいつがおいしゅうございました。
まさかパラオの無人島でチャプチェ食べるとは思わなかった。
日本語ガイドは韓国人、どうやらスタッフも韓国の人が多いみたいで、
仕出し弁当も韓国料理屋さんのモノだったのかな。
そしてメインイベントの『ジェリーフィッシュ・レイク』。
ここはもう、体験してみないとわからないスゴさです。
と書いてしまうのは文章としては卑怯ですね。
もう、ここのためだけに飛行機代費やしてくる価値あり。
というか、それを企んだ当人が言っているんだから間違いない。
他はもう見なくてもいいです。
クラゲの渦に浸るだけで価値がありますぜ。
最後のスノーケリングもまあ、魚がいるいる。
ガイドの先導でクマノミを見せてもらったり、
バラクーダーが迷い込んできたり、水族館さながら。
う~ん、この形容も稚拙すぎるな。
これでワンデイ・ツアーは終わり、16時過ぎに港へ。
帰り着いて、ホテル送迎のバスに乗ったらスコールが来る、という天の采配。
トレジャー・ボートでガンガン飛び回って、一日$90なら安いなあ。
ハワイならハナウマ・ベイに連れてってもらうだけででこれぐらい取られるぞ。
パラオの海は泳げない人、海に興味がない人に勧めたいなあ。
潜らなくてもツアーで借りるライフ・ジャケットでプカプカ浮いて、
水面からスノーケリングで眺めていても十分楽しい。
雨季でもローシーズンでもメリットは大いにあるのだ。
ノン・ダイバーでもとても楽しい海ですよ、ここは。
さあて、今日からはクルマを駆って、陸巡りがはじまるのだ。
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予定真っ白のパラオから from Palau [Palau]
パラオ3日目、6月9日です。
昨日は昼前に激しいスコールに襲われましたが、
今日は朝から南の島特有のバカみたいに熱い陽気に覆われてます。
一昨日は空港からモーテルのピックアップとミート、
事前にチャッカリしっかりポッキリ無料送迎があるか、調査済み。
到着の30分後にはなんなくチェックイン完了。
いつもの旅の癖で、部屋を確認するや否や、
荷物を放り込み、近所をフラフラ。
21時でも纏わりつくような熱気の中、
数日分の飲み物を買い込むぐらいでほぼムダに歩き回り、
フライトの疲れを上書きしてのち、シャワーを浴びてベッドへ。
昨日は街を彷徨うために自転車を借りようと、
調べておいた店に向かったのですね、揚々と。
写真を撮るにはレンタカーよりも都合がいい自転車、
こいつで現地の足は確保だぜ、と息巻いて出向いたわけです。
ところが店の前には、
「6月6~26日までお休みします」の張り紙。
え~。
イキナリ真っ白。
休暇取るの、もうちょっと待ってよ。
たしかにロー・シーズンに来たコチラが悪いけどさあ。
その後も頼りはこの足だけ。
コロールの中心地は歩きつくして、といっても、
メイン・ストリートは端から端まで30分もかからない。
浜省の歌みたい。
最後に飛び込んだ観光案内所でも聞いてみたけど、
どうやら自転車やバイクの貸し出しをしている店はないらしい。
日本人がやっているその店がかろうじての一軒のようで。
ナイス・ローシーズン。
いちおう宿のスタッフに相談。
友達か知り合いで自転車貸してくれるアテも違いないか、聞いてもらった。
可能性、薄そうなので、結局、レンタカー借りることになるのかな。
途方に暮れ、気づいたら夕飯も食べずに寝てました、2日目はやや不貞寝。
ということで、今日も徒歩で街歩き。
ランチタイム、「Best Dounuts&Coffee House」という店で、
サンドウィッチ食べながら、こいつを記してます。
さあて、午後はどうやって動こうかなあ。
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