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第六夜 -越境- @Moc Bai [Cambodia]

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午前中の充分な睡眠とプノン・ペンでの思わぬ出会いですっかり眼が冴えていた。

首都を出発してからしばらくすると、激しいスコールがバスを叩きはじめた。
車窓にはただ白い水の幕が見えるだけで、退屈しのぎの風景は幕の向こう。
また文庫本に目を落とすしかなかった。

15時過ぎにバスの動きが止まった。
スコールのせいで視界が悪くなり、事故でもおきたか、と想像をめぐらせたが、
車内の乗客はあまり騒ぎ立てもしない。

事故渋滞も日常茶飯事なのだろうか、と動かないバスにヤキモキしはじめると、
周辺には同じような大型バスやトラック、トレーラーが列をなしていた。

そこはターミナルのようなところで、クルマは順番待ちをしていたのだ。
大きな河の手前で、河渡しの船を待っている列だったのだ。

カッパを着込んだ職員が乗り込んでくる。
書類を提出したのか、チケットを購入したのか、わからないが、カッパ姿の彼が降りると、バスはゆるゆると動き出した。

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剥き出しのデッキに大型バスや大きなトラックがすし詰め状態で乗り込んでいく。
クルマが乗り込むたびに船が大きく揺れる。
積めるだけクルマを積み込むと、船はモソモソと動き出した。

濡れて汚れた窓からは、隙間なく乗り込んだクルマとオンボロ渡し船の一部しか見えない。
スコールは相変わらず激しく、船上はキシんだ音と揺れが伝わってくるだけだった。

-沈んだら、ニュースになるのかな?
そう思いつつ、バスの座席に座ったまま、観念するしかなかった。

-プノン・ペンから2時間弱南下して、河を渡った?
後ろの席でくつろいでいたガイドとアシスタントに尋ねる。
「これって、メコン川?」

「そうです、メコンです。雨でなんにも見えませんけどね」

「雨はいいけど、沈まないことを祈るよ」

「ダイジョウブですよ、いつも渡っているから」
そういうと笑いあった。

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ニュースのネタになることもなく、河を渡り、バスはまた順調に飛ばし始めた。

時計の針が17時を回るとガイドの説明が始まった。
「もうすぐボーダーです。パスポートを用意してください」
そういうとガイドは慣れた手つきで乗客のパスポートを集めて歩いた。

バスを降り、名前を呼ばれるのを待つ。
呼ばれた者はパスポートを受け取り、バスに戻る。
出席をとるような手軽さで全員が車内に戻り、カンボジア出国完了。
バベットでの出国手続きはこれでオシマイ、カンボジアともお別れだ。

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続いてバスは進み、ヴェトナム入国手続きへ。

同じようにガイドがパスポート集め、入国手続きを一括して申請してくれる。
モクバイの入国管理事務所はなにもない、ベンチもなく、その場所でただ待つだけだ。
ヴィザの関係だろうか、サスガに入国続きは40分ほど待たされた。

ゴルフバッグを抱えた5~6人のオヤジサンが話し掛けてくる。
同国人と思ったのだろう、ハングルだ。
あまりに退屈な空間だったので「サランヘヨ~(愛している)」とでも答えようかと思ったが、
「組合の人」と思われても困るので「ケンチャナヨ~(ダイジョウブ)」と答えてみた。

「日本人?韓国語うまいね~」
ヴェトナムとカンボジアの中間で韓国語を誉められてもウレシくないが、
この「ケンチャナヨ」がオヤジサンたちには大いにウケている。

しまいには周りにいたニュージーランド人やイタリア人、カナダ人、ダレカレかまわず、ハングルで話し掛けはじめる。
「なんだあ、ハングルわかんねえの? こいつはしゃべれたぜ」とこちらを指差す。
二言三言、口にしただけで思いっきり身内扱いだ。
それでも退屈で少し緊張した空間がヘンなオヤジサンたちのおかげで少し和んでいた。

そうこうしていると、名前を呼ばれ、入国手続きのカウンターへ歩みを進める。
IDを照合し、チョップ(ハンコ)をもらえば、ハイ入国。

どうやらバス会社やツアー会社のガイドが顔が利くらしく、煩雑な入国手続きを仕切っているのだろう。
会社の契約か「ソデノシタ」なのかわからないが、うちのバスは一番手早く、助かった。

なにかと厄介な陸路の国境なのだが、国際路線の直通バスを頼んだおかげで、かなり気楽。
車内の快適さ、時刻の正確さ、ガイドのサービスや国境のアシスタントがあることも考えると、
「アタリ」のチケットを買い求めた気がする。

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国境の町・モクバイから2時間もかからずに、バスはクルマのヘッドライトがあふれる町にたどり着いた。
19:40、ホー・チ・ミン・シティ到着。

雨の向こうできらめくヘッドライトの主はクルマではなく、おびただしい数のバイクだった。


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第六夜 -日式- @Phnom Penh [Cambodia]

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目の前に立っていたのはパリッとしたシャツを着た妙齢の男性だった。

お茶を運んできてくれた男性の日焼けした肌が異国人を思わせたが、
立ち居振舞いは日本人のものだった。

「日本の方ですよね?」
こちらのオドロキを察するかのように、向こうから問い掛けてきた。

「そうです、一人旅でこれからヴェトナム入りです」

「ここのところのプノン・ペンは熱いので、冷えたお茶がおいしいですよ」

「ありがとうございます。日本の方がいるとは思いませんでした」

「ここにいるとなんでもやってしまわないと事が進まないんですよ。
オフィスにどっかり座っていても仕事が進まないので、
手が空いていたらお茶も運びます。
シェム・リアップからのバスで乗り継ぎですよね?
バスは時間どおりに運航してますよ」

「それに驚いたんです。
出発時も正確に発車したし、到着も案内どおりの時間。
とてもアジアのバスとは思えなかった」

「うちの会社では時間を徹底させているんです。
あ、わたしはこのバス会社でマネージメントしてます。
他社はローカル・タイムで動いてますが、うちのドライバーには『時間だけは厳守しろ』と。
出発時間はモチロン、到着時間を設定して運転すれば、
平均速度が上がることもありませんから、事故も防げます。
遅れを取り戻そうとして、スピードを出して事故を起こすことが少なくないんですよ」

「となると、車内の清潔さやオシボリを配ったり、
ガイドさんが親切に案内したり、というのも、会社の方針で?」

「正解です。
はじめは他の会社より一割ほど料金が高いので、地元の人は敬遠しましたが、
定刻どおりに走り、定刻にきちんと到着するので、
今ではうちの会社から予約が埋まっていくようです。
時間どおり、というのはやはり地元の人にとっても助かるようですね。
オシボリなどは従業員が『サービス』を理解しながら、
気持ちよく働けるようにプラス・アルファのオマケみたいなものですね」

「実はわたしもシンガポールの旅行会社にいたとき、『ローカル・スタイル』に悩まされたので、
おっしゃることがよくわかります。
言ってやってもらえるものじゃないし、普段からの習慣は変わらないし。
クレバーなスタッフは先読みしてやってくれますけどね、
言った言葉以上を期待するのは、日本のスタイルなんですよね」

「会社の運営が変わったとき、その『日本式』を徹底して導入したんですよ。
『仕事』に対するスタイルというか、こうすれば利益につながる、っていうのを理解してもらうのが大変で。
お茶のオカワリいかがです?」

そういうと空いたグラスを運んでいった。
軽い身のこなしで歩く背中を眺めながら、シンガポールのオフィスを思い出していた。

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シンガポールで働いていた会社は、
香港人がオーナーのシンガポールの会社で日本人観光客を相手にしている旅行会社。
ツアーなどの客を受け入れる「現地旅行会社」というやつで、
日本の旅行会社のオーダーを受けては予約を入れ、アレンジを聞いては手配をしていた。

オフィスで働いているスタッフはモチロン、ガイド、ドライバーは全部シンガポリアン。
これがなかなかヤッカイで、
赤道直下のお国柄か、
シンガポールがそうなのか、
基本、ノンキ。

1をいうと1のことしかしてくれない。
モチロンそれは「罪」ではない。

例をあげると、うちのツアーを使うお客の希望でレストランとショーを手配してくれ、
というリクエストが日本から来る。
そのままオーダーを渡すとレストランとショーの予約しか入れない。
で、そのスタッフは「仕事しました!」みたいな顔でオーダーを戻してくる。
「レストランからショーの移動の手配は?」と尋ねると
「書いてないからやってない」というご回答。

「ご名答!」と手を打ちたいところだが、客は自分で移動するのかな~?

会社は旅行会社である。
しかも自分の会社のツアーで来ている客なのである。
少しだけ想像力を働かせれば、「トランスファー(移動)が必要」であることはすぐにわかり、
そこにも利益が生じることもすぐにわかる。
そのことが「罪」なのだ。
「レストラン予約して、ショーも行くとなると、移動もいるでしょうがああ、ぐぉらぁ~~」と
奥歯噛みしめて叫びたくなる。

空港で「A地点に迎えにいって」といってAに客がいないと、BやC地点を探すことはしない。
間違ってはいないのだ。

しかしこういう考え方の公式はきわめて「日本式」であることを働いていくうちに悟った。
「察する」なんてことは極めて日本スタイルなのだ。

もちろん「察して」手配を進めるシンガポリアンのガイドや
「想像して」足りない部分を埋め合わすローカル・スタッフもいる。
そういうクレバーな人はドンドン伸びて=出世していくのである。

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「バス、来ましたよ。まあ、お茶飲む時間ぐらいはありますが」
そういうとオカワリを置いてくれた。

「さっきの時間の話ですけど、うちのオフィスの前が狭いことも理由なんですよ。
通りが狭いので、大型バスが止められないでしょう。
だから途中で時間調整して、分刻みで到着するように、って指示しているんです。
でないと自社バスが詰まって身動き取れなくなりますしね」

「なるほど。それで『日式』なんですね」

「バスが到着すると客引きもすごいでしょ、
一度にバスが来るともう奪い合いの戦争ですよ。
だからうちのバスの客引きは『柵から中に入るな』って規制してるんです。
守らないヤツは客引き禁止、ってね」

「旅行客には助かりますね。
見ず知らずの土地でいきなり客引きの渦にもまれるのはかなりこたえます」

「また来ることがあったら、気軽に声をかけてください。
ご飯でも食べに行きましょう」

「短い時間でしたが、話しを聞けてよかったです。
なんかインタビューみたいになっちゃてすみません」
差し出された名刺を受け取り、バッグをバスのトランクに放り込んだ。

「いやいや、気にしないでください。わたしも他の国の情報が聞けてよかった」

「乗らないと置いていかれちゃいますね。定刻出発ですものね」

ドアの前ではガイドとドライバーが最後の客であるわたしを笑顔で待っていた。


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第六夜 -灼熱- @Phnom Penh [Cambodia]

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バスは2時間チョット走り続け、トイレ・ストップのために停車した。

大きく、キレイなレストランが目の前にある。
ガイドが30分の休憩時間を告げると、
トイレに行くもの、朝食を摂るもの、車内で眠り続けるもの、それぞれがそれぞれに振舞った。

時間を持て余し、レストランの裏手に進んでみると、問屋街と市場がいっしょになったような場所だった。

露店でコカ・コーラを買う。
1500リエル。
懐かしいリングプルの缶コーラ、30円もしない。

店のオバチャンに地名を尋ねると「カンポン」という言葉が返ってきた。
マレーやインドネシアでは「田舎」や「村」を現す言葉だ。
クメール語でも同じ意味なのか、はたまたちゃんとした地名なのか、
重ねてこちらの質問が正しく伝わっているのか、それずらもわからなかった。

外国人も旅行者もめったに来ないような街角で、
アヤシイ外国人旅行者に声をかけられ、オバチャンはあきらかにテンパっていたのだ。
隣の店の人たちは、避けるかのように店の奥に引っ込んでいる。
隠れなかったオバチャンの店でコーラを買うことにしたのだ。

それ以上話し掛けるのは、酷だった。

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バスに戻ると、路肩でドライバーとガイドがモグモグ口を動かしている。
「なに、たべてるの?」

「これ」
指差した先は、山のような佃煮。
調理された虫の山。

「虫は~~」

「おいしいよ~」
ガイドの声にあわせるように、露店のオバチャンがヒトツマミ差し出してくれた。

「スキキライないからさ、旅先でもなんでも食うけど、ムシは~~」
引きつりながら叫ぶと、みながゲラゲラ笑っていた。

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ふたたび、バスは走る。
今度も2時間チョットで大きな町にたどり着いた。

時計は12:30を指している。
2時間15分、トイレ・ストップ、そして2時間15分と、きっちりタイムを刻んでいる。

到着と同時にみながバスを降りては、荷物を受け取っている。
乗り降りが終わったら同じバスで再出発する、とのんきに車内に座っていたら、
運転手が「降りて、バス会社の事務所へ迎え」という。
ここがプノン・ペンだったのだ。

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預けていた荷物を受け取り、歩き出すと、ものすごい数のホテルやバイク・タクシーの客引きがバスの乗客を囲む。
しかも気温が高い、シェム・リアップより5度は高いだろう。
さらに湿度も高い。
人も多い。
涼しい車内に浸っていたせいもあり、プノン・ペンの熱気にやられそうだった。

事務所でチケットを見せると、パスポートを出せ、という。
なんでだ? と思っていると、乗客の誰もが自主的にパスポートを差し出している。
ほどなく名前を呼ばれ、記入済みのEDカード(出入国カード)といっしょにパスポートが戻された。

どうやらこれもバス会社のサービスで、無料で出入国カードを記入してくれるらしい。
日本の代理店なら「作成料」として二千円は取られるぞ。
無愛想にEDカードを作成しているオヤジサンにバスの時間を尋ねると
無愛想にタイムテーブルを示してくれた。

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出発は13:15。
時間があったので、あたりを歩いてみてもよかったのだが、尋常じゃない暑さがその気を奪った。
カフェも兼ね、エアコンも効いているバス会社の事務所でお茶を注文した。

「お茶、頼みました?」

明瞭な日本語に思わず文庫本から眼を上げ、声の主を見た。


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第六夜 -早朝- @Siem Reap [Cambodia]

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ピックアップの時間は「朝6時」だった。

チケットに記されたバスの出発時間は7時なのだが、
バス・ターミナルが遠いのか、
各ホテルを巡るためか、
ウンザリするような早い時間のピックアップ・タイムだ。

ホー・チミン・シティまでの所要時間を考えれば、7時出発は妥当な時間。
しかしピックアップが早過ぎないか?
そう思いつつも、それを拒んで自力でターミナルを目指すのも面倒、
乗り合いでのピックアップならそれもしかたないだろう。

まだ薄暗い時間にチェックアウトを済まし、ロビーに荷物を投げ出し、コーヒーを頼んだ。
案の定、迎えは時間に来るわけもなく、注文したコーヒーが間をつないでくれる。

ロビーには同じようにピックアップを待っているオージーの女性二人組がいた。
荷物に座り、なかなかやって来ない迎えにイラつきながら待っている。

「プノンペン行き?」
同じ方面なら同じバスかもしれないと思い、尋ねると、
「バンコク行きよ」
とつれない返事が返ってきた。
「逆方向だね」
軽く会話を交わしていると、目の前にマイクロバスが止まった。

そそくさと彼女たちは乗り込んだ。
方向が違うので違いバスが迎えに来るものだろうとのんきに構えていたら、ドライバーが、乗れ、という。
彼女たちを追うように混んだ車内に乗り込んだ。

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10分ほどでマイクロバスは、大きな広場に止まった。
後方でも次々にマイクロバスやバンが止まっては、旅行者や地元の人を吐き出していく。
ピックアップは行き先に関係なく、ターミナルまで運んで来るのが仕事なのだ。

広場にはものすごい数の大型バスが止まっている。
それぞれのバスの前には、行き先のプレートを持った人が立っていた。
地元の長距離バス、ローカルの近距離バス、国際路線を行くバスと、行き先表示はバラバラ。
電光掲示板こそないが、行き先表示されているのでわかりやすい。
それよりもバスの台数が多すぎて、自分のバスを見つけるのが大変だ。

英語で声を上げていたドライバーを見つけ、チケットを見せる。
「このバス会社はあっちだよ」

「OK。ありがとう」

教えてもらった方向でまた尋ねる。
「このバス、どこ?」

人が多い場所では、考えるよりも、声を張り上げ、人に聞いてしまったほうが手っ取り早い。

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「バス・ターミナル」といいつつもところどころ水溜りのある土の地面。
日が昇り始めた涼しい時間とはいえ、荷物を背負い、バスを探して歩いていると、汗がにじんできた。

制服を着た女のコの一団がキレイなバスの前に立っている。
それに気付いた瞬間、声をかけられた。
「プノーンペーン、ホーチミンはコッチでーす!」
外国人旅行者を見つけては声をかけている。

教えられたバスに乗り込み、指定席に潜り込んだ。
エアコンで冷えた車内が心地よい。

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汗が引いた頃、バスは動き出した。
ジャスト7時。
のんきなローカルタイムでなく、数分の狂いもない定刻どおりの出発に驚がされた。

日本のリムジン・バスに似た車内は、
清潔で手入れが行き届き、カーテンやシートもキレイだ。
制服を着た女のコはどうやらガイドさん。
クメール語と英語で、熱心にバスや行程の説明とシェムリ・アップの観光案内をしている。
彼女の案内と平行して、車内では学生のような男のコが
ミネラル・ウォーターとサンドウィッチを配ってくれた。

-日本のツアーというか社員旅行のように「いたれりつくせり」だな。

満席の車内を眺めながら、ふとそんな風に感じた。


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第五夜 -夕闇- @Siem Reap [Cambodia]

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効率よく遺跡を見られるルートを巡り、アンコール・ワットに戻った。

午後はスコールに襲われ、沿道にあった露店でコーラを飲んで過ごしていた。
気温が高いため、濡れても気にはならないが、
前も見えない激しい雨の中、自転車で走るほど、物好きではない。
文庫本に目を落として、短い時間を過ごした。
店の人たちは、客のいない店に飛び込んできて、
小さい本に目を落とす外国人をフシギそうに見ていた。

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スコールは30分ほどで駆け抜けていった。

観光した、というよりは遺跡のそばで時間を過ごした一日。
写真の枚数も思ったほど進んでいない。
この町に来たときと同じように、
アンコールの遺跡に感激はしていたが、感動はしていなかった。

気付けば、物言わぬ石の芸術に夕暮れが迫っている。

アンコール・ワットの伽藍は西が正面とされている。
日の出、日の入りのタイミングには太陽と伽藍が重なり、その姿はあまりにも有名だ。
あわよくば同じような写真を、と目論見、ふたたび歩みを進めた。

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暗さが忍び寄るこの時間帯、さすがにグループ客はいない。
地元の人々とそれに連れられた一族郎党?
あるいは彼らの友人一行?
サンダル履きでのんきに歩く姿が多い。

夕方のスコールが去り、涼しい風が駆け抜ける。

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お堀の周りでは、敷物の上に寝そべる人、
持ってきた弁当を並べ、家族のゆうげを開く人、
遺跡がもたらした恩恵を日常生活に取り込んでいる姿が微笑えましい。

水があり、風が抜けるこの場所にこぞってやってくるのは、
雨上がりの涼しいときだけなのか、毎日の日課なのかはわからない。

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そういえば、昔の日本も上手に涼をとっていた。
打ち水をした軒先や通りに縁台を並べ、
スイカを食べたり、お茶を飲んでいたり・・・。
昔見た日本の風景がアジアの各所には残されている。

空は曇り、日は雲の向こう側。
雨季にあたるこの時季、美しい夕陽はどうやらお休み。

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日を背負った姿にまみえるのは、次のチャンスに持ちこしだ。
とはいえ、次のチャンスがいつなのかは、自分自身も知らない。


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第五夜 -情景- @Siem Reap [Cambodia]

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神々の像が立ち並ぶ陸橋を閉ざすかのように『南大門』は立っていた。

「大きな街」を意味する『アンコール・トム』(Angkor Tom)への入口でもあるこの門は、
クルマがギリギリ通るほどの幅しかない。
その狭い門の前を我がもの顔で占拠して記念撮影している団体客を跳ね飛ばし、
累々と重なった屍を乗り越えながら、通り抜ける。

アンコール・ワットに浸っている間に、団体客が押し寄せていた。
涼しい午前の時間に広いアンコール・トムを巡ってしまおう、という魂胆だろう。

彼らと共に歩みを進めても、静かに写真は撮れない。
舐めるように一通り見学し、アンコール・トムに別れを告げた。

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木々で覆われた道を進む。

10分から15分ほど自転車をこぎ続けていると、唐突に遺跡が現れる。
あるいは道路の右手、あるいは左手に。

自転車を止め、遺跡に歩みを進める。
シャッターを切っては人のいない遺跡を歩く。
そしてまた自転車へ。
そのくりかえし。

キレイに修復が成されている『トマノン』(Tommanon)や『チャウ・サイ・ディヴォーダ』(Chau Say Divoda)。
未完の『タ・ケウ』(Ta Kev)に、ガジュマルや樹木に侵食された『タ・プローム』(Ta Prohm)と、
バラエティ豊かな遺跡劇場は次から次に登場し、自転車乗りを休ませてくれない。

観光客の利便性を図るものだろう、遺跡の間の道路はすべて舗装されている。
自転車の脇をグループを積み込んだバスやバンが猛スピードで走り抜けていく。
国境から続いた穴だらけの土の国道を懐かしく思い返していた。

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ほとんどの遺跡の前に出店があり、声高にミネラル・ウォーターやアイスクリームを売っている。
ここでは商売ッ気のないオバチャンがフルーツを売っていた。

「これ、冷たい?」

「冷えてるわよ。切れてるし、食べやすいわよ」

「じゃあ、一個。ここで食べていい?」

木陰に果物を並べたオバチャンの後ろに座って、パイナップルにかじりついた。

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道路の向こうの遺跡では、たくさんのグループ客が出たり入ったりしていた。
観光バスから吐き出され、記念写真を撮りまくり、時間になるとバスに吸い込まれ、去っていく。

「すごいね、グループはいつもあんな感じ?」

「そう、バスが去るときが売れる時なのよ」

それぞれが違うグループなのに、決められたルールがあるかのように同じ動きで、なんともフシギな光景。
かつては自分自身もそのフシギな仕事をしていたものなのだなあ、とのんきな感慨にふけっていた。

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パイナップルをかじりながら、眺めていると、バスが極端に減りだした。

「そろそろ昼時ね」

夢中で自転車をこいで、夢中で写真を撮っていたら、いつのまにやらランチタイム。
グループは遺跡を離れ、町なかのレストランを目指すのであろう、バスやバンが次々去っていく。

遺跡のノイズが減り、腹がノイズをかきたてていた。


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第五夜 -祠堂- @Siem Reap [Cambodia]

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アンコール・ワットへのアプローチは特にゲートもない。

寺院への道は一本橋。
点在する係員が通り過ぎる観光客のパスをチェックするだけ。
景観を崩さないみごとな管理方法だ。

橋を渡ると『西塔門』と呼ばれる入口がある。
人がふたり、肩を交わしてすれ違う幅の門の向こうにアンコール・ワットのシンボル的な部分が見える。

門をフレームに見立て、フレーム越しの中央祠堂を撮影しようと狙う。

団体客がいないとはいえ、出入場者がかならず通る門は人がなかなか去らない。
人がいない写真を撮るのが好きなのだ、待つしかないと思っていると、
同じように隣に無言でカメラ片手に立ち続けている男がいた。

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「?」

「きみもチャンス待ち?」

「そう。そちらも?」

「そう、なかなかあかないね」

彼も同じようなアングルのシャッター・チャンスを待っていたのだ。
カメラ好きの考えることはいっしょか。

「あの家族が去るまではまだかかりそうだね」
二人が見ている先では祠堂を背にして、家族が代わる代わる記念撮影していた。

「どこから?」

「シドニーだよ、来たことある?」

「仕事ならちょくちょく。旅行関連の仕事、ツアーガイド(添乗員の英語名)をしていたから」

「ほお、うらやましい仕事だ。で、今は自分の旅?ひとり?」

「そう。ひとりでね、お客は一緒じゃないから気楽なものだよ。そちらは?ひとり?」

「ガールフレンド(英語ではカノジョの意)と巡っている。6週間、インドシナ半島を巡ってるんだ」

「6週間!
こっちは3週間だよ、そちらの半分、たいしたことないねえ。
しかもガールフレンドはいないしね、たいしたことないねえ」

「あはは。たしかに!」

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朝の涼しい空気の中、観光地でのチョットした会話。
ちなみに『インドシナ』という地域名はフランス語。
『Indo-chine』と記し、フランス植民地時代の名称の名残りだ。

たわいもない話をしている間に、シャッター・チャンスがおとずれた。
すでに回廊を見学して帰るところだった彼に先を譲り、それぞれの旅の時間に戻った。

気に入った画をおさめ、中央へ向かう。

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朝の雨で洗われた石の回廊や尖塔が美しい。

1992年に『アンコールの遺跡群』として世界遺産に登録され、
1993年には中央祠堂をイメージしたカンボジア国旗が制定されている。

ヒンドゥー教のヴィシュヌ神を祀る寺院として作られ、その後、仏教寺院へ。
そして王の墳墓にも用いられ、クメール・ルージュ時代には軍事施設にも利用された。
アンコールは『王都』、ワットは『寺院』という意味だが、その佇まいはこの国のいろいろな姿を眺めてきた。

タイの遺跡寺院とは異なり、彫刻が細かく、繊細だ。
全体のイメージが先走っているが、こうして中央祠堂に上り、壁に触れてみないとわからないこともある。

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-陽が沈む前に戻ってみるか。

狭い道をワガモノ顔で占拠していた団体客に腹立たしくベルを鳴らし、
自転車をアンコール・トムに向けた。


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第五夜 -遺跡- @Siem Reap [Cambodia]

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カンボジアに別れを告げるためにも、朝一番でアンコールを目指すことにした。

ホテルの並びの店で自転車を借りる。
マウンテンバイクなら$2、ママチャリなら$1,5。
アンコール・ワットまでは舗装された道のりなのでママチャリで十分。
ホテルで借りなかったのは、金額が倍ほど違うからだ。

その店ではバスチケットも扱っていたので、ダメモトでホーチミン行きがあるのか、尋ねてみた。
すると意外な返事が返ってきた。

「直行で12時間、$22だよ」

「明日の朝一番の空きはある?」

「ダイジョウブだよ。ホテルまでピックアップにいくよ。ここにホテルの名前とサインして」

バスターミナルまでは距離があるため、バンでピックアップしてくれるらしい。
バックパックを背負ってターミナルに向かわなくてすむのは助かる。

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ヴェトナムへの道が開けたせいか、軽い気分で郊外の舗装された道をこぎ続けた。
仕事に出向く人々の流れに逆らって、緑で覆われた道を走る。
30分ほど走ると、緑が途切れ、あたりの視界が開けた。


いざ、アンコール・ワット。

肉眼に映ったその姿は大きな堀に囲まれていた。

-まるで城だな。

ひと気のないアンコール・ワットの正面でそうつぶやいていた。

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朝一番に来たのには理由がある。
団体客やツアーの客はどこの国でもホテルで朝食を食べ、バスに乗って、午前の観光に出向く。
早い時間であればあるほど彼らとかち合わないですむ。
写真をゆっくりとることが出来るし、好きな風景を好きなだけ眺めるていることができる。
朝一番をはずしたら夕方でもいい。
観光客は夕食のためにそそくさと帰ってしまうから。
この辺はツアコンで培った経験だ。

狙いどおり、朝一番のアンコール・ワットには人がいない。

とはいえ、人がいようがいなかろうが、物売りの子供たちは元気に走り回っていた。
まばらながらも到着した観光客を狙って、ワラワラ集まってくる。

「絵葉書買って」
「キーホルダー買って」
あれ買ってこれ買ってと取り囲むように寄ってくる。

ちょっとしたスター気分? それともただのカモ?
商売ッ気がないのか、外国人がおもしろいのかわからないが、
彼らはタクシーの客引きのようにカンタンに引き下がらないのが厄介だ。

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貧しい国は子供たちががんばって日銭を稼ぐ。
どこの国でも同じ光景を眼にする。

小銭を恵むのもいいかもしれないが、一人にあげたら、みなにあげないと不公平。
無碍に振り払うのも気が引けるし、子供たちには強くNoとも言いづらい。

まあ、実際には物売りを仕切っているボスがいて、
観光客のココロのスキをついて、うまいことやっているのだが・・・。

こういう場合、アメやガムをあげてオシマイ! と決めている。
甘いものがキライな子供は皆無だし、顔を覚えてくれて、助けになることもあるからだ。

実際、アンコール・ワットでも、とんでもない場所のチケット売り場を教えてくれ、
無料で止められる駐輪場を教えてくれた。

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ゲートそばで入場チケットを購入。
1日券$20、3日券$40、7日券$60。
一日券を購入したが、現地の物価からするとすごい金額。
「寺」であるアンコール・ワットへは現地の人々は当然ながらフリー・パスである。

正面入口に戻ってきて、自転車を止める。
アメだけでは少し気が引けたので、客引きに奮闘する子の店でミネラルウォーターを買った。

いざ、アンコール・ワット。


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第四夜 -停滞- @Siem Reap [Cambodia]

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シェム・リアップの町をブラついていると、
タクシーやバイクタクシーの客引きがうるさい。

「アンコールワットまでUSDで$4だよ。往復なら$8だ」
片道でその値段は高くないか?

この手の客引きは上手な断り方がある。
日本の人はつい目をそらしてしまいがちだが、
そうするとしつこく声をかけ続けられるハメになる。

先に目を合わせ、首を横に振る。
あるいは人差し指を立てて横に振る。

要は「いらない」ということを明確にすればいい。
向こうも商売、金にならないヤツに声はかけてこない。

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この日もアンコールに行く気がおきず、町を歩いていた。

セントラル・マーケットやオールド・マーケットとといった
地元の問屋と土産屋が混在している市場を巡る。

旅は序盤なので、まだ土産を買う気もないが、
買いたくなるような土産が売られてないもの実情だった。

ハミガキ粉を切らしていたことを思い出し、
地元の人で混みあう市場にズブズブと入っていく。

観光客はまったく来ないであろう薬店のおばちゃんに声をかける。
英語は通じない上に、めったに来ない外国人相手に声をかけられ、緊張の面持ち。
世間話していたお客のオバチャンとともに引きつり顔だ。

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身振り手振りで、ハミガキポーズ。

合点がいったのか、歯ブラシを差し出してくれる。

そっちじゃないの、ブラシにつけるやつ~。
と繰り返し、身振りで示すと、お客のオバチャンと一緒に笑い出した。

「この人、ハミガキコがほしいのよ」
そんな会話でも交わされたのだろう。

奥からハミガキ粉を数種類出してくれた。

「これがいいわよ、これ」
客のオバチャン、ナゾの推奨銘柄。

どれでも同じようなものだろう、いわれるままにそいつを購入。
笑顔で別れた。

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市場を出ると、結婚式が行われている。
路上を利用して、ちょっとした披露宴会場になっている。
地元の人たちの生活が垣間見えた。


歩き疲れてコーヒータイム。
ちょっとオシャレなカフェのアイスコーヒーが$3。
ランチで食べたモツ煮込みとご飯が2500リエル。
4000リエル≒$1なので物価の基準がわかりづらい。

読書しながら、行程を再検討していると、
ココでノンキにしていると、ヴェトナムの行程が短くなることに気付いた。
当たり前なのだが、全体の日程が緩やかなので、大雑把に考えていたのだ。

町歩きしながら各所にある代理店モドキで情報収集したが、
ホー・チミン・シティ行きの直行バスはないらしい。
トンサムレップ湖を横切る船の旅もアリだが、
この時季は水流が逆流するため、運航していないらしい。
どうも「らしい」情報ばかりで怪しいのだが、
このままだとプノン・ペンでの一日費やすことになりそう。

ホテルがたしか代理店業務もこなしていたな、相談するか。

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日程が足りなくなるようなら、
アンコール・ワットはやり過ごして、ヴェトナムに向かう?
ここまできてそれはもったいない?
観光客の風上にもおけない?

通過点としか考えていなかったカンボジアの日々が無為に過ぎていく。


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第三夜 -休息- @Siem Reap [Cambodia]

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17世紀、クメール人はタイ・アユタヤ王朝(シャム人)の軍勢をこの地で退けた。
「シャム人が敗れた地」=「Siem Reap」という名称がこの町に残されている。

恥ずかしい話だが、ずっとシェムリ・アップだと思い込んでいた。
なにをUPするんだか・・・(+_+)

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ハードな移動が続いたこともあり、この日は休息日、と勝手に決め込んでいた。

ホテルのカフェでコーヒーを頼み、ファンの下でひたすら読書。

旅行者にとってこの町は、アンコール・ワットを訪れるための中継点、といっても怒られることはないだろう。
ところがそのアンコールへの熱情が湧かない。
タイ・スコータイで寺院や遺跡を巡ったときのように熱が高まらないのだ。

TVや写真であまりにアンコール・ワットを観すぎたから?
誰もが「アンコールワットをいつか観てみたい」と騒ぐから?
気持ちがアンコールへ向かない。
なぜだろう?

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さすがに文庫本に目を落としていることにも飽きて、シェム・リアップの街に出た。

カメラ片手にくまなく町をブラつく。

目にとまったオープンエアの店は広くて、客も多く、テキパキ動く店員が気に入って、食べてみることにした。
オープンエア、と書くとオシャレな響きだが、アジアにある開放型の店舗だ。
店内もテーブルも掃除が行き渡っているところも気に入った。

となりのオバチャンが食べた麺がうまそうだったので、同じモノを頼む。
「これと同じやつをひとつと青菜炒め」

「OK。飲み物は?」

「お茶がいいな」

「これ」
大きな水差しをテーブルに置く。

「氷もらえる?」

「OK」

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この麺が絶品だった。
野菜がたくさん入った炒めそばなのだが、追加の青菜炒めがいらないほど、野菜が多い。
味付けもほどよく、疲れた体に染み渡った。

元気に回り続けている扇風機の下、食後のコーヒーを頼み、また文庫本に目を落とす。

店の前に頻繁にバイクが止まる。
昼飯時も夕食時も外れているのだが、食べて帰っていくもの、あるいはテイクアウトしていく人・・・。
町の外れにある店なのだが、どうやら地元の人に人気らしい。
旅先では地元の店のこういう風景が楽しい。

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「会計してよ、いくら?」 コーヒーを飲み干し、声をかけた。

店員は目の前の皿とコーヒーを勘定する。

「お茶も氷も頼んだけど」

「ああ、それは無料、気にしないで」

「じゃあ、また来るよ」

「あはは、そうだとうれしいね」

かなりの町外れだったが、連日、通える店を見つけたことで満足の午後。


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第二夜 -到着- @Siem Reap [Cambodia]

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部屋で荷物を解き、シャワーを浴びる。

日本を出てから何時間だ?
ようやく落ち着ける場所を確保、同時に旅先の暮らしも始まり。

汗と埃を落とすと、ハラが鳴っていた。
早朝の空港で軽くパンをかじっただけで、なにも食べていないことに気がついた。

夕食を探しながら、町の雰囲気をつかむために歩いた。

宿を出ると、信号もない交差点はクルマとバイクと人と自転車で埋まっていた。
ちょっと面食らいながら道を渡る。
地元の人と同じように動くのがコツ。

交差点、道路、街角・・・、街灯が少ないため、夕暮れがおとずれるとあたりは薄暗い。

オールド・マーケットに近い交差点の一角に野天の屋台が並んでいた。
そういえば、カンボジア料理って、どんなんだ?

タイ料理やヴェトナム料理はもはや日本でも珍しくないけど、
カンボジア料理って?

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屋台をヒヤカシながら眺め歩く。

野菜炒めやBBQスタイルのチキン、
フルーツやタコ焼きのようなお菓子・・・
その後ろではオヤジサンが麺をうまそうにすすっていた。

ここもアジア、味覚もやっぱりアジアなのだ。


両替は済ませたものの、物価と通貨価値がまったくわからない。

カンボジアの現地通貨は「リエル」。それ以外にもUSドルが普通に使える。

$1≒4000リエル。端数もあるがほとんど切り捨てだ。
ホテルで換えてもらったリエルで水を買ってみる。
1Lで2000リエル。
50セント、50円ちょっとか。

その水を飲みながらおばちゃんに聞く。

「コーラはいくら?」

「小さいの(500のペットボトル)が2500、大きいの(1,5L)が4000だよ、買うのかい?」

「いや、聞いただけ、ごめん」

知らない国を歩くと、まずはお金と物価に戸惑う。
土産や貴金属を買うわけではないが、金銭的な感覚をつかむまで多少の時間がかかる。

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地元の人もミネラルウォーターを愛用しているのを見て、納得。
どうやらこの国の人は水道の水を飲まないご様子。
町なかでも英語はあまり通じない、当然ながらクメール語はひとつもわからない。
歩いていると、そういう細かいことがみえてくる。

あたりは暗くなりはじめ、露店は照明をつけ始めた。
電球の光に照らされると長い一日の疲れがドッと感じられた。

フライト、空港の長イス、4時間のバスと5時間のタクシー。
背中の筋肉がこわばっていた。

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露店でオカズとご飯を買って、部屋で食べるか。
そう決めて、オカズ屋のおばちゃんに声をかける。

「おばちゃん、これとこれ、袋に入れて」

「はいよ。$2」

「白メシもつけて」

「うちはご飯はないよ、隣で買って」
英語とクメール語が飛び交うが、身振り手振りが通訳している。

「OK、そっちのオバチャン、白メシだけちょうだい」

「皿に盛るの?袋入りの?」

「袋のやつ。持っていくから」

「はい、500リエルだよ」

「ありがと」

袋に入れてもらった野菜炒めと鶏肉の炒めものとご飯をぶら下げ、部屋に戻った。

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「お。ディナーかい?」

「疲れたからね、部屋で食べるんだ」
袋をぶら下げた姿を見て、宿のスタッフが声をかけてくる。
英語で話が通じると、少し気楽だ。


もう一度シャワーを浴び、買ってきたものをテーブルに広げた。

-メシ500?オカズ2種で$2?

-たっけえじゃん!あ!オカズ屋のオババにやられた!

-$2って、8000リエルだ。一品4000って、ご飯に比べたら高すぎだ!

-あのオババ、旅行者と思ってふっかけやがった~!

-普通なら値段聞いてから買うのに、なんでそのまま頼んだ?

-疲れてたのか、おれ?


骨付きの鶏肉をかじりながら、笑って苦虫も噛み潰した。
$5のシングル・ルームで。


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第二夜 -街道- @Siem Reap [Cambodia]

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ポイペトの町を出るとひたすら未舗装の道路が続いた。

後部座席からスピードメーターを覗き込むと、針は30km前後を行ったり来たり。
いくらデキのいい日本製の中古車でも赤土で穴だらけの未舗装路では、40kmを出すのがやっとだ。

助手席の彼女は時折、カセットテープを入れ替える。
運転席の彼は時折、つたない英語で話し掛けてくる。
気を使ってくれているのだろうが、あまりの揺れに会話がままならない。
車内は伸びきったカセット・テープが、揺れに合わせるようにローカル・ミュージックを奏でるだけだった。

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途中、なぜか、運転手の家に立ち寄る。

助手席のおばさん(だったらしい?)を降ろすと、今度は弟が乗り込んできた。
若く、明るく、屈託のない表情をしている弟は、学校で英語を学んでいるという。

外国人の客を乗せているのを見て、興味津々。
運転手の兄に頼んで乗り込んできたのだ。

ところがこのカレときたら、英語がまったくできない。
「カンボジアはいつもこんなに暑いの?」とか
「名物料理は?キミの好きな料理は?」という世間話が通じない。

「HOT」や「COOKING」がわからないのだ。
学校で学んでいるのはどんな英語?
カレとの会話はあきらめて、クルマの揺れに身を任せた。

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下を噛みそうなほど揺れている車内では話も出来ず、読書もできず、ただ窓の外を眺めるだけだった。
行く先々の沿道、ハデな液体を入れたビンを並べている店が気になった、

乗っているタクシーがガス欠をおこして、初めてわかった。
ハデなビンの中身はガソリン。
ガソリンをビンに詰めて、小売しているのだ。

ガソリンスタンドが整備されていないこともあるが、小売のほうが廉価で、
バイクばかりか、クルマも店先で給油している。
ガラス製のビンもあれば、普通のペットボトルに入れられたものもある。

どうでもいいけど、ガソリンって、灼熱の太陽の下にさらしておいて平気なの?

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未舗装の道をカクテルのようにシェイクされながら、シェムリアップの街にたどり着いた。

運転手の家に寄ったり、ガス欠したりののんきな道のりで、5時間はかかっていた。
とはいえ、律儀に奮闘するドライバーを見て、「これならチップをはずんでもいいかな」と思っていた。

ゲストハウスの駐車場に横付けしてもらい、
出発時に告げたとおり、USドルを持ち合わせていたなかったため、チェックインと同時に両替を頼む。

小さなゲストハウスでは、両替するドルの持ち合わせがなかった。
フロント・マンがバイクで両替屋に連れてってくれる、というので、
タクシーには待ってもらい、二人乗りで両替に向かった。

数日の滞在に必要な額を両替して戻り、運転手に約束の金を渡す。

「お待たせ。ありがとう」

「$25にしてくれませんか、予定より時間がかかったし、ガスも食った…」

・・・最悪。

お金を払う段階になって、運転手はゴネ始めた。。。
そんなことを言い出さなければ、チップをプラスして$30を差し出そうと思っていたのに。

彼の一言で、その気は失せてしまった。

ドライバーの胸に$20を押し付ける。
「初めに$20と約束したはずだ、それは覚えているだろう?」


「あと$5・・・」 今度はホテルマンに交渉しはじめた。


「コイツは$25だって言っているけど?!」 クメール語を訳して、ホテルマンが伝えてくる。

「$20だ。ウソはついていないし、それが最初の約束だから」

タクシーに背を向け、荷物を担ぐと部屋に向かった。

時には後味の悪いこともおきる、それも旅だ。


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第二夜 -移動- @Poipet [Cambodia]

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「ミニバスやピックアップ・トラックは、昼にならないと出発しないよ」

入国手続きを済ませ、バス乗り場を探していると
英語ができるタクシー・ドライバーに話しかけられた。

彼は客引きの声をかけてきたのだが、
安いバスを探そうとするわたしに引導を渡そうとしているのか、さびしい情報を提供してくれた。

「シェムリアップに行くタクシーなら$50、あとは午後になるのを待つしかないね」

値切ればもう少し値段が落ちるかもしれないが、いずれにしろ、バスやトラックより数倍は高い。
かといって、午後になるのを待っていては、朝一番にバスに飛び乗った意味がなくなる気がしていた。

ひとまず両替所を探し、コーヒーでも飲みながら考えるか、とシツコイ客引きを振り払いながら、歩みを進める。

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国境の町・ポイペトには「町」といえるほどの設備はなく、
出来上がったばかりの巨大なカジノとホコリっぽい道路わきに並ぶ露店のギャップが奇妙に映るだけだった。

「$30でどうですか?」

気弱そうな男に唐突に声をかけられた。

「なにが$30?」

客引きの多さと、VISA窓口係員の態度で少し気分が荒れていたのだろう、強い口調の英語で切り替えしていた。

「タクシーです。シェムリアップまでです」

「一人で$30?ムリだね、払えない」

「シェアする人がいれば$10でもいいです。4人乗れますし」

「$10?」
破格の数字に思わず、食らいついてしまった。

「シェアする連れはいないよ。それにこの時間だと、ほかに観光客はいないよ」

「なら、あなた一人で$20でどうですか?」

彼が手を添えるタクシーは古い日本車、エアコンが効いているようだ。

ミニバスやピックアップ・トラックなら、もっと安くいけるだろうが、
4時間、後部座席を占有し、エアコン付きでドライブするのは悪くない。

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「いま、VISA代を払ってしまって、キャッシュがないんだ。
到着してから両替して、それから支払うことしかできないけど、それでいいなら、乗るよ」

気弱そうな彼は、うれしそうに微笑む。
「問題ないですよ、乗ってください」

最終的にこのクルマに決めたのには、ほかにもワケがあった。
助手席に女性が乗っていたからだ。

タクシーやバンの運転手が突如、強盗に変貌、なんてことはアジアでは珍しくない。
ひとまず女性連れなら、強盗などに豹変することもないだろう、という目論見。
運転手の嫁さんだろうか?
カップルで強盗?
それはないだろう?


トラックの荷台よりは、高い値段だが、確実に先へ進む足を確保した。


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第二夜 -入国- @Poipet [Cambodia]

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VISAをゲットし、晴れて入国。

うるさいタクシーの客引きを振り払いながら、カンボジア側の国境の町・ポイペトへ歩みを進めた。

カンボジアの人々はタイの人よりもさらに色が黒く、目が鋭い。
無表情の面持ちが、異質の旅行者に突き刺さってくるようにも思えた。

シュムリアップ行きのバス乗り場はどこだろう?
両替するところは?

バスの待合場所かと思った場所にはなにもなく、
人もいない空間で扇風機が風をかき混ぜている小屋を通り抜ける。

午前中というのに気温は高い。
不安と重い荷物の合体技なのか、背中には汗がつたっていた。

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歩みを進めた道の反対側には、ハデなカジノが軒を連ねている。

賭け事はご法度の仏教国・タイからの日帰り客を当てこんでいるのだろう。
できたばかりのバカデカイきらびやかな建物がホコリっぽい国境の小さな町にまったくマッチしていない。

タクシーやピックアップトラックのドライバーと値段交渉をしつつ、
相場や所用時間を確かめていると、制服姿の男に呼び止められた。

「?」

パスポートを見せろ、という。

-アヤシイな・・・

国境、制服、旅行者、パスポート・・・

-なにやらふっかけられるのか?

-VISAなら取得済みだぜ、少し高い金を払って。

後進国の国境には、無知な旅行者を狙って、
偽VISAで金をたかる男や係員を装ってダマしてくる輩は名物のようにいる。
こいつもそれか?

差し出したパスポートのページをめくると、こちらへ来い、という。

「VISAならあるじゃないか!」

「いいからこっちへ」

パスポートを持っていかれてしまったため、やむなく制服の後についていく。

トラブルを察したのか、タクシー・ドライバーが周りを囲む。
頼んでもいないのに物見遊山の人が集まってくる。

ついていった場所は、さっきのバス待合所もどき。
制服は机の引出しを開けた。

-罰金でも取られるのか?!

「これ、記入して」

「?」

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制服が差し出した紙は、EDカードだった。
出入国時に記入するアレだ。

「そこで入国の日付を押してもらって」
無表情に小さな窓口を指差す。

「チョップ?」

「そう、キミはVISAを取っただけで、カンボジア入国の手続きをしてないんだよ。
そこで入国の日時をチョップしてもらわないと」

「!」


ここが出入国の管理所?


そこは汗をかきながら通り過ぎた場所、
扇風機が熱い空気をかき混ぜていた小屋だった。

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