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最終夜 -ありがとう- @Hanoi [Vietnam]

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ハノイの空港は、一国の首都空港というには、物悲しい雰囲気だった。

建物や設備は、古い日本の地方空港のようで、
やたらとスペースを取っている免税店と並べられたブランド品が、
余計にそのギャップを際立たせた。
ロビーのだだ広いスペースと古臭いベンチは、
明るくきらびやかな免税店とかけ離れていて、
物悲しさを色濃くしていた。

食事が出来るレストランも一ヶ所だけで、しかもドルしか受け付けてない。
免税店だけでなく、お菓子を売る売店すらドル表示で販売するだけで、
旅行客が手元に残したドンは両替所で再両替するしか道はなかった。
外貨獲得に力を入れる社会主義国の一面がこんなところに垣間見える。
誰が$5もするポテトチップを買うのだろう?

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バンコク行きのエア・アジアの搭乗がはじまる。
「自由席」と案内されていたが、搭乗口にはそれほどの人はいない。
3人席の真ん中に座るようなハメには陥らなそうな気配なので、
いつものように搭乗口に人がいなくなるまでロビーに腰掛けていた。

3席と3席の並列シートの通路側に腰掛けたのを覚えているが、
機内食も出ないことをいいことに、シートベルトを締めたとたん、眠りについた。
気づいたときはバンコク・スワンナプーム空港へラウンディングした時だった。

こうして『インドシナ周遊』の旅は終わったが、
ヴェトナムを縦断しながらずっと気がかりだった謎があった。
奇しくもその謎はバンコクで解けることになる。
「解けた」というよりは「解いた気になった」が正確な表現だろうか。

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ヴェトナムを二週間歩き続け、まったく出会わなかった「言葉」がある。

「ありがとう」だ。

食事をしても、水を買っても、お金を払っても、別れを告げても、
商売や店、ビジネスのシーンでこの言葉を最後まで聞くことがなかった。

こちらがベトナム語で「ありがとう」を意味する「Cam On(カム・オン)」といっても、
英語で「Thank You」と告げても、品物を受け取り、お金を払っても、
相手の口からこの言葉が出てくることがなかったのだ。

旅行者なら誰でも経験したことがあるだろうが、
その国の言葉で「ありがとう」と告げれば、
オウム返しのように「ありがとう」という言葉が返ってくる。
あるいは英語でいうところの「どういたしまして」という言葉が返ってくる。
どちらにしても反射的に返ってくる言葉なのだ。
ヴェトナムでは何語で「ありがとう」と告げても、無言だけが返ってきた。

ことによると「外国人の一人旅」を警戒して、言葉をかけてもらえなかったのかもしれない。
あるいは「アヤシイ男のアヤシイ言葉」に慄き、声をかけてもらえなかったのかもしれない。

しかしその懸念は、バンコクの町を歩くことで霧散した。

バンコクでは、あたりまえのように「ありがとう」が相手の口から沸いてきた。
年配のオジサンからは「Khob khun Krab(コップン・クラップ)」といわれ、
時には「Khob khun Ka(コップン・カー)」と両手を合わせてあいさつされることもあった。
(タイ語では男性と女性では語尾が変わる)
こちらがなにもいわなくても、かならず相手の口から「ありがとう」がこぼれ落ちた。
こちらが両手を合わせれば、かならず相手も両手を合わせながら「ありがとう」を返してくれた。

タイが敬虔な仏教国であることを差し引いても、
旅行者としてのこちらの態度の善し悪しが原因ではなかったのだ。

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この「ヴェトナムの謎」について、いろいろと考えを巡らせてみたが、
結論は「社会主義国であったから」というところにしかたどり着かなかった。

親切な人、優しい人、シャイな人、ヴェトナムでたくさんのいい人に出会い、
「Cam On」(ありがとう)を聞けなかった理由がこれ以外に見当たらない。

かつて社会主義の大国であった「ソ連」では「『ありがとう』という文字は辞書にない」といわれた。
中華人民共和国では「『ありがとう』という言葉は有料」なんて揶揄もされている。
「ドイモイ」による開放政策が進んだといえ、この国の体制はいまだ社会主義だ。

長い間、閉ざされた国で暮らしてきた人々が、
外の国からきた人々に馴れていないことはわかるが、
「ありがとう」という言葉、
あるいはそれを口にすることにも慣れていないのではないだろうか。
滞在中の経験と記憶では、そんなヘンな結論にしかたどり着かなかった。

今度、この国を訪れたときは「ありがとう」を聞けるだろうか。

小さなクエスチョン・マークを抱え、旅を終えた。


ー完ー

22, JUN. 2007 - 10,JUL.2007

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目次

第一夜  -始動-
第二夜  -国境-
      -入国-
      -移動-
      -街道-
      -到着-
第三夜  -休息-
第四夜  -停滞-
第五夜  -遺跡-
      -祠堂-
      -情景-
      -夕闇-
第六夜  -早朝-
      -灼熱-
      -日式-
      -越境-
第七夜  -安宿-
      -市場-
      -珈琲-
      -道路-
第八夜  -酒宴-
      -路肩-
第九夜  -言葉-
      -海岸-
      -夜行-
第十夜  -朝食-
      -情報-
      -充足-
第十一夜 -熱中-
      -郵便-
      -店内-
第十二夜 -古都-
      -果物-
      -香江-
      -発見-
第十三夜 -王宮-
      -遊戯-
      -電器-
      -返品-
第十四夜 -首都-
      -確定-
      -岐路-
      -台風-
第十五夜 -団体-
      -乗船-
      -船内-
      -下船-
第十六夜 -食事-
      -圏外-
      -李果-
      -晩餐-
最終夜  -週末-
      -休業-
      -出立-
      -ありがとう-


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最終夜 -出立- @Hanoi [Vietnam]

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シャトル乗り場でチケットを買い、空港への出発を待った。

目指すランチをガッツリかき込み、シッカリ写真を撮って、時間キッチリで空港に向い、
なんて勝手に頭の中で組み立てていたプランが水泡と化し、拍子抜けしていた。
ニャチャンに続いて、なんとも食っぱぐれる旅だなあ、と思いつつ、
自分が乗るバンを探した。

チケット制のバンは満席になり次第、空港へ向かうという。
車内にはすでに出発を待つ客が席を陣取っていた。
まだ4~5席は残っているようで、すぐには出発しない。
トランクに荷物を積んでもらい、手持ち無沙汰にしていると、
駐車場のスグ脇で営業している路肩の売店から声をかけられた。

「出発までなんか飲んで待ってなよ」

手招きしていたのは荷物を積んでくれたドライバーだ。
ヴェトナム語と英語のゴチャマゼで語りかけてきた。

「ゴメン、もうドンがないんだ」

ランチとシャトルの分のドンしか残していなかったので、持ち合わせはもうなかった。
ポケットの中に残っていたありったけのドンを見せて、笑いをとる。
なにも飲む気はなかったが、小さいイスに腰掛けた。

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「そんなのダイジョウブだよ。なあ、オバチャン。ジュースかい? お茶かい? なに飲む?」

手際よく仕切るドライバーにけしかけられ、あわせるように「カフェ・ダー」と呟いた。

「『カフェ・ダー』って、ヴェトナム語がわかるのか?」

「いや、『カフェ・ダー』だけだよ。毎日飲んでいるから」

ドライバーに促され、オバチャンはアイス・コーヒーを作り始めた。

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ママゴトのような店先で、
ネッスルのビンからインスタント・コーヒーを掬うと砂糖といっしょにグラスに入れる。
クーラーボックスから水の入ったペットボトルを取り出し、注ぎ入れると手際よくかき混ぜた。
細長いスプーンがグラスを叩き、軽快な音が響く。
アイスピックで素早く氷を砕き、別のグラスをそれで満たす。
コーヒーの入ったグラスから氷の入ったグラスに注ぎ入れると、冷えたアイスコーヒーができあがった。

通常、ヴェトナムのコーヒーはアルミ製のロトに豆を挽いたものを入れ、
ホットならカップに、アイスなら氷の入ったグラスの上に乗せると、
お湯を注いでしばらく待ち、落ちきったものを飲む。

この店ではインスタント・コーヒーで即製していた。

コーヒー豆を使ったものよりも、
「ネスカフェ」と呼ばれるインスタントのほうが高級品だったりするのが東南アジア。
モチロン、豆のほうが香りがよくて、味もいいのだが。
即製で作ったアイスコーヒーはよく冷えてうまかった。

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「タバコ、吸うかい?」

ヴェトナム語はわからなかったが、そういっているのだろう。
運転手がヴェトナム・タバコの箱を差し出した。

「ありがとう。吸わないんだ」

「フライト、時間は?」

「エア・アジア、3時の便」

「じゃあ、ダイジョウブだ」

そういうとドラインバーはオバチャンが差し出した真っ赤なジュースを飲んだ。
その赤い色を奇妙な目で見ていたことに気づいたのか、
こちらの気配を察し、グラスを差し出した。

「飲んでみるか?」

ドライバーの目はそんな合図をしていた。
オバチャンにグラスをもらうと、少し分けてくれた。

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「すごい色だな」

日本語で口に出す。
小児科で出す子供用の風邪薬か、カキ氷のシロップにしか見えないジュースは、
予想通り、ひたすら甘ったるい味しかしない。

気づくと、店にいた休憩中のドライバーはみんな赤いグラスを手にしていた。


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最終夜 -休業- [Vietnam]

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昼に宿を出れば、フライトのチェックインには充分間に合う。

空港へのアクセスは、シャトルが安くて便利だよ、とフロントのニイチャンに教えてもらっていた。
宿から10分ほど歩いた街の中心に、シャトル・バンや空港タクシーの溜まり場があるという。
荷物ひとつの身としては、ギリギリに出て、急ぎ足で向かっても楽勝の距離だ。

部屋で荷物を詰めながら、時計を見つめ、計算を立てていた。
昨日、夕食を食べそびれたランチの店に、もう一度、行きかったのだ。
開店の11時前に露店に出向き、かき込んで食べて、
急ぎ足でシャトル乗り場へ行く、そして空港へ向かえばフライトには間に合う、
という計算が頭の中で成り立っていた。

あの家族の屋台のご飯で食べ納め、ヴェトナムを去る前のささやかな願いだ。
ところがその計算は思わぬことで狂ってしまった。

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フロントでチェックアウトを済ませ、ニイチャンと話しこむ。

「昨日のバイクの波はスゴかったよ」

「ああ、みんなクルマは買えないからね。それでバイクを買うんだ」

「ヴェトナムでバイクはいくらぐらい?」

「中国製なら新車でもUS$300、日本製の新車なら$1000はするね。
しかも日本製は性能がいいから中古でも高いし、人気があるんだ」

「ここにも中国製品が流れ込んでるのか」

「そう、おかげで手軽に買えるようになったみたいだよ。値崩れしているから」

「でもなんで『混んでいる』ってわかっているのに湖周辺にくりだすのさ?」

「ハハハ、家にいてもエアコンもなくて、暑くて退屈だから、友達を誘って、バイクで出かけるのさ」

「それで二人乗りばかりだったのか」

「そう、カップルだけじゃなくて、友達でも知り合いでも乗っけて出かけるのさ」

「あの排気ガスとノイズじゃ、夕涼みにはならないと思うけどな」

「ぼくもそう思うよ。マスクまでしてね」

そういうとニイチャンは肩をすくめておどけてみせた。
急激な経済成長を遂げるヴェトナム、みなが新しい生活や娯楽を手探りで探している状態なのだろう。

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「そろそろ、出発するよ」

「空港? 気をつけて。ヴェトナムともお別れだね」

「そうなんだ、いろいろとありがとう」

バッグを担ぎ、最後の宿を離れ、ランチの露店を目指した。
7月のハノイは午前中でも暑い。
荷物を背負う背中がすぐに汗ばんだ。
それでもうまくて気分のいい店で食事が出来ることに少しだけ浮き立っていた。

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そこには行き止まりの路地だけがあった。

なかよし家族が切り盛りする露店の姿はなく、交代で夜営業していたBBQの店すらなかった。
「ランチタイムなのに、なんで店がないんだ?」
独り言が口をついて出た。

ア然、としたが、空港に向かう前にしランチを済ませなくてはならない。
格安航空会社のエア・アジアは機内食が出ないし、空港で食事するほどドンの残りも持っていなかった。

ランチを食べるため、別の店を探す。
フォーの店に座り、水を口にすると、答えが見えた。

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今日は日曜。
ビジネスマンも休むこの日はたぶん休業日。

それはささやかな推理でしかなく、今日この国を発つ身としては、確かめる術はなかった。


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最終夜 -週末- @Hanoi [Vietnam]

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ベトナムを離れる日がやって来た。

午後のエア・アジアのフライトでハノイを発ち、バンコクへ戻る。
15日間の観光ヴィザをフルに使ってのベトナム縦断も幕引きの時。
バンコクを経て、日本に向けて飛び立てば、3週間近いインドシナ放浪も終演だ。

昨夜、一日歩き過ぎて、部屋のベッドで鬱血した足を伸ばしていると、
部屋の窓からにぎやかなノイズが響き渡ってきた。

最後の夜、ということもあったが、その音に引きつけられるように、
着替えなおして、また出かけてみることにした。
夜、ということもあり、カメラもバッグも部屋において、身軽にホテルを後にした。

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安宿が並ぶ通りから一本奥に進むと、道路の真ん中は夜店で埋め尽くされ、
路上は人々であふれ返っていた。
通りは2~3ブロックに渡って、通行止めになっており、
そこに向かって歩く人の群れで、周辺の道路はクルマもバイクも身動きが取れなくなっている。

部屋まで聞こえてきたのは、路上に押し寄せた人と路上を埋める排気音の喧騒だったのだ。

旅をしていると忘れてしまうことはいろいろあるが、曜日もそのひとつだ。
確保したフライトの日付は覚えていたが、その日が日曜だったことまで考えがいたらなかなった。
夏の夜、週末になるとこのあたりは通行止めになり、
封鎖された路上には露店が繰り出し、老若男女が右往左往するらしい。

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翌日、この国を離れてしまうこともあり、
土産でも見つけるかな、と喧騒に飛び込んでみたが、
予想以上の人出と気の効いたモノがないことに閉口してしまった。
アイスクリームやワッフル店には行列が出来ていたし、
LEDやピアスのなどアクセサリーの店には女の子が群がっていたが、
こちらが気を引かれるようなものはなく、カメラも持たない身は足を止めるシーンにも出会わなかった。

露店を眺めて歩く人々の表情は、みな明るく楽しそうで、
子連れの家族や仲間とつるむ学生がにぎやかにおしゃべりしながら練り歩いている姿は、
日本のお祭りや夜店をヒヤカシ歩くシーンと重なってみえた。

路上のラッシュ・アワーに疲れたが、フルーツの生ジュースを売る露店を見つけ、歩み寄る。
大好物のスイカ・ジュースを購入すると、ストローの刺さったカップを片手に喧騒から離れた。

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人ごみから離れると、夜のホアン・キム湖は静かで夜景がきれいかもしれない、などと思い立った。

ハノイの町の中心にある湖までは歩いて5分もかからない。
スイカ・ジュース片手に歩みを進めると、さっきのラッシュ・アワーに増して、
おそろしいというか、おもしろいというか、ありえないというか、異様な風景にめぐり合ってしまった。

湖の回りはちょっとした小さな公園になっている。
朝から午前中にかけてその場所は、政府推進のラジオ体操に似たベトナム式健康体操に精を出す人、
太極拳をする人、ジョギングする人など、排気ガスのない時間に身体を動かす人が多い。
午後は午後で、営業で疲れたサラリーマンが昼寝をしたり、井戸端会議のおばちゃんがいたり、
日向ぼっこのご老人がいたりする。
そして日が沈めば、オープンテラスのバーでカクテルを傾ける人もいれば、カップルがベンチを占領したり、
とロマンティックな場所にもなる。

その湖畔に下りる手前の道路から、渋滞がはじまっていた。

道路工事か? あるいは事故でもあったかな?というぐらい渋滞している。
クルマ、トラック、観光バス、それらの隙間を埋めるようにバイクやスクーターまでが渋滞していた。

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湖畔を歩きはじめても、そこに沿うように続く道路はバイクで埋め尽くされている。
そう、クルマが渋滞しているのではなく、バイクが渋滞していることにこのとき気づいた。
そしてそれは事故や工事で生じたものでなく、バイクが多すぎて渋滞しているのだった。

ハノイにあるバイクが全部集まったのではないか、というぐらいひどい混雑で、
おまけにホトンドのバイクは二人乗り、ひどいものになると三人乗り、なんていうのもいる。
排気ガスと排気音があたりを埋め尽くしている。
奇妙な光景に呆気にとられた。

美しい湖水どころか、あたりはテールランプで赤く塗りつぶされていた。



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第十六夜 -晩餐- @Ha Long Bay [Vietnam]

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一日歩き尽くし、陽は傾きはじめていた。

夕食の時間には少し早かったが、ランチを食べた露店を目指した。
昼食が早かったこともあり、すでにおなかがすいている。
プラム2個は腹の足しにはなってなかった。

記憶を頼りに店のあった場所に戻ってきた。
昼間食べなかったオカズを選ぼうかな、とか、
断ったカレーをかけてもらおう、とか、空腹に妄想が先走っていた。

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その場所に着くと彼女たちが働いていた店はなかった。

かわりに韓国風だか、モンゴル風だかわからないが、
「BBQ」と記された焼肉屋が開店前の準備をしていた。

通りを戻り、場所を確認したが、間違えてはいない。
行き止まりを利用していたその場所を間違えるはずもなかった。

どうやら昼はランチの店、夜は練炭でBBQを食べさせる店になるらしい。
妄想は掻き消され、空腹感だけが一層強くなった。

明日、空港へ向かう前に足を向けてみるか。
そう考え直し、その場を離れた。

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市場の周辺に食べ物屋が点在していたことを思い出し、
スグそばのハンザ市場に向かった。
市場はすでに店じまいしていたが、その周りは昼にも増して、ニギヤカで人が多かった。

ハナを効かせて、地元の人でひぎわう露店へ潜り込む。

お決まりの小さなイスに腰掛けた客たちは、みな麺をすすっていた。
さんざん妄想したせいで、アタマの中はすっかり白いご飯で埋め尽くされていたが、
ヴェトナム最後の夜にフォーも悪くないかな、とアタマの中の白いご飯を押さえ込んだ。

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店は次から次に注文が入り、席で待たされている客、持ち帰りを待つ客と、かなり待たされている。
眺めていると注文のホトンドはワンタンメンで、
黄色い中華麺か、白いフォーか、素麺に似たブンなのか、それを告げるとあとは席で待つだけだった。

隣の席の子供は待ちきれずにお菓子の袋を母親にねだって、開けてもらっていた。
ようやくどんぶりが運ばれてきたが、心はお菓子に奪われているご様子。
母親に怒られながら、麺を食べていた。

時間つぶしに写真を撮っていると
別れのフォー、ではないが、ワンタンメンがやってきた。
暑い屋外で熱い麺をすするのもなかなかオツ、アジアにいることを再度、実感する瞬間だ。

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相席の前に座るオバアチャンが、麺を食べ終わったどんぶりにスープを入れてもらっている。
「替え玉」じゃなくて、「替え汁」か?
なみなみ注がれたスープにチリソースとニョクマムをしこたま入れ、
ライムを絞ると、うまそうに飲みはじめた。
こちらもライムを4~5個、絞って入れる。
すっぱいものが好物なので、オババに負けじ、と挑んでいたわけではないが、
目が合うとオババはこちらに向かって、チリやニョクマムのビンを差し出してくれた。

なにやらいろいろ説明してくれるが、ベトナム語が分からないコチラは降参状態。
食べ終わったどんぶりを指差すと、勝手に店の人に差し出した。

下げてくれるのかと思い、礼をいおうと思ったら、「替え汁」がたっぷり注がれたドンブリが戻ってきた。


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第十六夜 -李果- @Ha Long Bay [Vietnam]

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濃密な生活臭が詰まった路地裏を抜けると、ポンっと広い通りにでた。

車線もないだだっ広い道路を車輪付きのショッピングバッグや
ボストンバッグを持った人が横切っていく。
人々はお菓子や乾物を売るハデな商店が並ぶ舗道から門の中に姿を消していった。

門の中をのぞくと貧相な建物が建っている。

その建物に沿うように線路が敷かれていた。
目を凝らしてみると小さな建物の小さな入り口には「ハノイ駅」と表示されていた。

駅舎は小さく、首都の名を冠した駅にしてはこじんまりしている。
ヨーロッパのように「南駅」や「北駅」と銘打って、
大きな駅や小さな駅が街の外側に点在しているのかもしれないが、
地図で確認しても「ハノイ駅」はひとつしかない。

貧相ぶりに驚かされて、写真すら撮り忘れていた。

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宿に戻る途中、今度は問屋街にめぐりあった。
ミシンで一心不乱に布地を縫う人、大きな革を裁断する人、
イスに布地を張る人、バイクのシートを繕う人、いろいろな人が働いていた。

働きもせず、のんきに旅しているわが身は、身を小さくして撮影に挑む。

すると撮影しているのをおもしろがって、
反物屋のオヤジサンがデジカメを覗き込んできた。
撮れたものを見せると働いている若い衆に声をかける。
自分の店のスタッフが写真に撮られているのをおもしろがっている。
若いスタッフは手を休めることなく、テレ笑い。

こちらが怪しくないことがわかってか、オヤジサンは急に饒舌になった。

とはいえ、ヴェトナム語。
いっていることはまったくわからず、キョトンとしてしまったが、
オヤジサンはしゃべりをやめない。
コリア?ジャパン?と尋ねてきたが、こちらの答えを聞く前にまた自分でしゃべりだした。
う~ん、ど小にもいるのね、一人しゃべりのオジサンって。

オヤジサンと店のスタッフに手を振り、お別れ。

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問屋街の並びにあった電器店を見つけた。
フエで交換までしてもらったヘッドフォンはあまり音がよくなく、
いっそ、買い換えてしまおう、とその店に飛び込んだ。

店番はオバチャンが一人。

「ヘッドフォン、ありますか?」
と声をかけ、身振りで示すと、レジの向かいの棚を指差した。

「いくらですか、これ?」
と尋ねると、大声で奥にいる人を呼んだ。

息子と思われる若い男の子がやって来た。
英語がわかるらしい。
値段を聞いたり、視聴させてもらったり、アレコレと世話を焼いてくれる。
店の手伝いに奮闘する彼に打たれて、2個購入。
まとめ買いでまけてもらい、会計をしていると、彼が興味深そうに質問してきた。

「日本人?」

「そうだよ」

「週末にハノイでサッカーの試合があるの知っている?」

「そうらしいね」

ワールドカップ・アジア一次予選、ヴェトナム・ハノイで代表戦が行われる。
前日、安宿であった日本人が「5千円ほどでサイドラインが手に入った」と語っていた。
「日本でチケット買うより、飛んできてこっちで観たほうがリーズナブルかもね」
なんて冗談話をしていた。

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「観にいかないの?ヴェトナムがんばってほしいなあ」

「試合の時にはもう出国してるんだ。それに日本代表に興味がない。
応援しているのはイングランドなんだ」

そういって、彼の胸元を指差した。
男の子は真っ白なイングランドのレブリカ・シャツを着ていた。

「イングランドが好きなの?じゃあ、いっしょだ!」

社交辞令でなく、ホントのことだった。
イングランドの代表選手の名前をアレコレ挙げながら、握手を交わした。

なにやらサッカーの話しで盛り上がっているのを察したのか、
お母さんがレジの下にあったプラムのカゴを差し出した。

「プラム食べなさいよ、っていってる」

「ありがと、好きなんだ、これ」
熟していてうまい。

「ngon!」

ベトナム語でおいしい、を意味する「ゴン」と声に出していうと、
お母さんはうれしそうにカゴを押す。

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「もっと、食べろって、言っているよ」

言葉に甘えてもうひとつ、かじりつく。

帰り際、お母さんはヘッドフォンが入った袋にプラムを2つ、放り込んでくれた。


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第十六夜 -圏外- @Ha Long Bay [Vietnam]

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腹ごしらえを済ませ、またハノイの街を歩きはじめた。

オフィス街や市場の喧騒から離れ、それでも歩き続けた。
目めぼしい観光スポットに興味はなかったし、
どこの街でも眺めてきた市場が同じ色に見えはじめ、興味を失っていた。
それでも歩いていればなにかにぶつかりそうで、ひたすら歩き続けた。

ハノイは水の街でもある。
「ハ」は川を意味し、「ノイ」は内側という意味だそうだ。
その名のとおり、市内には大きな池や湖が点在しており、水が生活のすぐそばにある。
こう書くとベネティア、倉敷や津和野の美しいイメージを重ねてしまいそうだが、
そこにある水はあまりきれいな色とはいえず、それらの街とはちょっと毛色が違う。

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旅先の街歩きのとき、なるべく荷物は持たない。

「主義」なんて大ゲサなものではなく、なにかを持って歩くのが好きではないのだ。
添乗員をしていたこともあり、カバンを下げていると仕事モードが抜けきれないのも理由だ。
それでも写真を撮って歩くので、カメラバッグは必携。
とはいえ、肩からかけるか、あるいはウェストバッグ状態で腰まわりにベルトで留めるか、
カメラを使っていてもいなくても、両手は空いているようにしている。

ホテルや観光案内所でもらった市内の地図をポケットに押し込み、
ガイドブックが必要ならそのページだけ引き裂き、ポケットに忍ばせる。
迷子になったとき用に、ホテルカードや住所などを財布にはさんでおくが、
そいつが役に立ったことはあまりない。

熱ければペットボトルの水をブラ下げて歩くこともあるが、基本は手ブラ。
手ブラならば、好きなときに写真が撮れるし、好きなスタイルで撮影できる。
ペットボトル程度なら舗道や石塀に置いておいても盗られることもない
バッグはダメですよ、その辺に置いちゃ。
「誰の手にも触れていないものは誰のものでもない」って理由で、
ドコカのダレカに持ち去られてしまいますから。
これは東南アジア、イスラム圏に限らず、キリスト教徒でも同じことをいいますのでご注意を。

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気づくと持っていた市内地図を越えて、歩いてきてしまっていた。

目の前に大きな池があるが、手元の地図に載っていない。
方向オンチではないので、自分がいる位置は把握していたが、
地図からはみだし、圏外を歩いているとは思わなかった。

裏通りでは露天に野菜を並べ、売りさばいている。
近所のオバチャン連中は、鮮やかな色の菜っ葉を選り分けながら、手も口も忙しく動かしている。
さらに奥まった道を進むと、雑貨や炊事道具を扱う店が軒を連ねていた。

地図の外にも人々の生活は息づいている。

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2~3時間歩き通しただろうか。
さすがにノドが乾き、古き懐かしき日本の駄菓子屋のような茶店に腰を据えた。

「カフェ・ダーください」

カメラを抱えた外国人に驚いたのか、
はたまたベトナム語を口にする外国人に驚いたのか、
いずれにしろ観光客は来ない通りの店でのんきに店番をしていた女の子が驚いた表情をしていた。

「カフェ・ダー?」

「そう、カフェ・ダー」

店の中では仕事途中の作業員がビンのコーラを飲みながら、タバコを吹かしていた。
店先は木陰になっていて、風がよくとおるのでそこに腰掛けた。

カフェ・ダー、5,000ドン(US$1≒15,000ドン)。
手際よく、淹れてくれたアイスコーヒーをテーブルに置くと、
店先にあった大きな扇風機をこちらに向けてくれた。

目の前の店ではオバチャンがさとうきびのジュースを作っていた。
作ると客が現われ、作ると注文が入り、と結局、休みなく働いている。
「飲む?」と身ぶりで問われたが、青臭さと中途半端な甘さが苦手で、
アイスコーヒーのグラスを指差し、矛先をかわした。

店番の女の子は退屈そうに隣のテーブルに座っている。

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テーブルの上に置いたカメラで彼女を撮り、さとうきびオバチャンを撮って、
モニターで見せると、ゲラゲラ笑いだした。
近所の人の働いている姿を写真で見るのは不思議な感じなのだろう。

残念ながら英語がまったくダメなようで、名前を聞いても年齢を聞いても、ピンとこないご様子。
かろうじて通じたのは、こちらが日本人である、ということだけ。

地図を広げて、街の中心への近道を教えてもらうぐらいが精一杯だった。


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第十六夜 -食事- @Ha Long Bay [Vietnam]

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この旅も終わりの日が近づいてきていた。

昨夜、ハーフデイ・ツアーから帰ってきた21時過ぎに、
軽く食べるものを買いに出たついでにダメモトでホアンキム湖に近いシン・カフェに足を伸ばしてみた。
運良く、店は開いており、頼んでいたチケットは無事に手元にやって来た。
これで明日の午後にはベトナムを離れ、バンコクへ戻ることが確定。
そのあとは日本へ帰るだけだ。

ベトナムを離れるチケットを手にしたせいか、残り時間を貪るように朝からひたすら歩いた。
ハノイは大きな街にもかかわらず、市場をいくつも抱えている。
先日訪れたもっとも大きなドンスアン市場、
生鮮食料品が中心のハンザ市場、
たくさんの布や生地を扱うホム市場、
生花を扱うトゥリエン市場もあれば、
朝だけ現われる市場やバイク専門の市場まである。

ビジネス街からさほど遠くない場所にも市場があるアンバランスさ、
都市ながら生活の臭いを感じやすい街だ。
特に買いたいものも土産物を買う気もなかったが、
生活の香りがする市場、地元の人々の表情が見える市場を眺め、歩いた。

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ハンザ市場からほど近い場所の屋台で朝・昼兼用の食事をとることにした。

ランチ・タイムには早い時間で、仕込みもまだ途中のようだったが、
座っていいかと尋ねると、快く奥のベンチを指差してくれた。

ハノイの蒸し暑さと歩いてきた熱で、座るとドッと汗が噴き出し、
たまりかねて汗を拭っていると、黙ってお茶を出してくれた。
繰り返しバンダナで汗を拭っていると、店のみんなが笑っていた。
冷たいお茶で涼をとり、店を眺めながら、汗が引くのを待った。

どうやらお金を管理しているボスが母親?
指示を出し、口やかましく仕切っているのが長女?
ハナ唄を口ずさみながら手伝っている末っ子にチョッカイを出して、サボっているのは次女?
テーブルやイスを拭いて回っているのは、親戚のオバチャンだろうか?

行き止まりの路地で上手に店舗展開しているその屋台は、女性ばかりが働く店。
どうやらその店の今日一番の客になってしまったようだ。

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汗がおさまり、注文に立ち上がると店先のオカズの種類がとても多いことに気付いた。
見ているとアレもコレもといいたくなるような豊富なバリエーションだ。

「もう料理、選んでもいいかな?」

母親がニコリと笑った。

「ごはん、大盛りにしてもらえる?」

またニコリと笑った母親は英語がダメなご様子。
長女が助け舟を出し、手際よく、ごはんを増やすとオカズをその上にかけた。

「2品だけでいいの?カレーはかける?」

「いや、それでいい。野菜が食べたいんだ」

2品選んで、15,000ドン。(US$1)
シンガポール時代にも親しんだアジア定番の「ブッカケごはん」だ。
皿を持って席に戻ると、小さい末っ子がお茶を注いでくれた。

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この何気なく選んだオカズが絶品で、甘すぎたり、味がしない料理が多い中、塩加減が絶妙だった。
おもわずオカワリしようかと思ったが、すでにごはんを大盛りにしていたことに気づいてやめた。

屋台を切り盛りする母親の「オフクロの味」なのかな?
食べ終わるころには、次から次にビジネスマンが列をなして、
オカズを選んでは持ち帰りの弁当に詰めてもらっていた。

今夜また食べに来てみよう、食べ終わるとそう思っていた。
単純に味だけでなく、さりげなくお茶を出してくれるような心遣いに打たれたせいかもしれない。

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第十五夜 -下船- @Ha Long Bay [Vietnam]

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通常なら3~4時間で終わるはずのクルーズはまだ続いていた。

国立公園でもあるカットバ島でキャンプをする乗客を降ろすため、
船はさらに沖にある島に向かっている。
この寄り道のことはレギュラーの観光コースを消化した後、船内でガイドが説明していた。

通常のクルーズ・コースから大きく足を伸ばし、船はカットバ島に到着した。
キャンプ道具を抱えた十数名の若者を降ろすと、ハロン・ハーバーを目指し、折り返したが、
このカットバ島への道のりとその帰り道がこの上なく、すてきなクルージングにバケたのだ。

他の観光船もいない航路を自分たちの船だけが進んでいる。
台風の余韻など欠片も感じさせない空とそびえ立つ奇岩に
船のエンジン音だけがこだましていた。

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日没が迫る時刻になって船はようやくスタート地点に舞い戻った。

バンに乗り込むと、それぞれがたっぷり太陽光を浴びた赤ら顔で、狭いシートに納まった。
みなが疲れもなく、陽気な表情をしているのが印象的だった。

本来、ハーフデイのツアーなら日が沈みかけたこの時刻にはハノイの街に到着しているはず。
結局、カットバ島への寄り道、というか遠回りは通常の倍の時間を費やしていた。

「すみません、船の都合でカピタル・ハノイへの帰りが遅くなってしまいました」

つたない英語でガイドが詫びをいう。

「いやあ、余分にクルージングが楽しめてよかった」

「そうそう、ツアーでいけない島まで足を伸ばせたしね」

日焼けした赤い顔たちは、長くなった船旅を口々におもしろがっていた。

「エキストラ・クルージングをたっぷり堪能しましたよね」

最年長のタイ人男性がそういうと狭いバンは拍手が満ち溢れた。
予定外の船旅を楽しんだご一行が乗り込んだ車内は明らかに行きとは空気が違っていた。

「カピタル・ハノイには21時ごろの到着です。これから3時間です」

「問題ないデース」

世界遺産を満喫した一行は返事も明るい。
苦情も覚悟していたガイドは少し肩の荷が下りたようだった。

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「そうそう、ガイドさん、日が暮れておなかも減ってきたので、フルーツを買えませんか?
さっきあなたにもらって食べたフルーツがうまかったんだ。ハノイまで時間もかかるし」

港でバンの回送を待つ間、路肩で売られているパイナップルを買い、のんきにかじっていた。
値段も相場もわからないのか、それとも路肩で売られているものなど手を出さないのか、
わたしが食べているのをみんなが興味深そうに眺めていた。
「食べてみます?」とちぎって、彼らに振舞ったことを思い出した。

「パイナップルですよ、どこかで買えない?」

唐突な年長者の提案に戸惑っていたガイドに助け舟を出す。
合点が行ったのか、運転手に声をかけると、間髪入れずにバンを民家に横付けした。
玄関先が露店になっており、そこには果物が並んでいた。

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「とりあえず10個」

年長者は迷わず、ガイドに注文を告げた。
カレとカレの奥さんを除くと、車内には6名しか乗っていない。
ガイドとドライバーを含めても1人1個の計算だ。
おまけにわたしはクルマに乗る前に1個平らげている。
とりあえず、という数字じゃないだろ、それ。

「買いすぎじゃないですか~?」

笑いをこらえながら、そういうと

「2個は自分で食べるんです、あとは車内で分けてください」

車内の気配を察したのか、年長者は振り返ってそう説明すると、車外にまで笑い声が響いた。

「楽しかったエキストラ・クルージングとみなさんの旅が無事であることを祈りつつ、食べましょう!
もちろん、ゴチソウしますから全部食べてしまってもいいですよ。あまったらホテルで食べまーす」

陽気なトーンが車内に響く。

「パイナップル・パーティです!パイナップルしかないけど」

よほどパイナップルを気に入ったご様子だ。
タイにもパイナップルはあると思うのだが、それは口にしないでおいた。

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「ごちそうになります!」

長い帰路、一人の男性のちょっとした気遣いで車内は会話で満ち溢れた。
不思議なことに誰も居眠りすることもなく、ハノイまでお互いの話は続いた。


オリジナル画像はコチラ↓の「Stocks」欄にUPしてあります。
写真販売サイト http://pixta.jp/@delfin   気軽に覗いてみてください!


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第十五夜 -湾内- @Ha Long Bay [Vietnam]

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船上のルーフの上で眺めていると、恋焦がれていた風景が向こうから近づいてきた。

他の観光船も群れている湾を過ぎると、奇岩に迫るほどの狭い航路を進む。
気づくと独り占めだったルーフには船内のホトンドの客が上がってきていた。
すぐに見飽きて、エアコンが効いたキャビンに降りていく客もいれば、タバコをくゆらす客もいる。
自分と同じように熱心に一眼レフのシャッターを切る客とは目が合い、なんとなく笑いあった。

ある程度、奥まった港内に進むと、ガイドが声高だが、ズルズルの英語で案内をはじめた。

「小船に乗り換えてくだサーイ。洞窟を観に行きマーす」

クルーズ船から船外機がついた小船に乗り込む。
ハロン湾に住む地元の船頭がミニクルーズの案内をしてくれるらしい。
20人ぐらい乗っていたのだろうか、隙間なく詰めて座ると、小船は動き出した。

洞窟、というよりは奇岩にできたトンネル上の穴。
波の侵食で削られ、きれいなアーチ状の形を成している。
その洞窟を潜り、眺めることはどうでもよかったが、
小船の低い視点で、見上げるように奇岩を眺められたことに感激し、気づけば多めに写真を撮っていた。

3つほど洞窟を眺め、クルーズ船に戻る。
船頭さん、というには若すぎるカレにチップを渡し、ワン・ポーズ撮影させてもらった。

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ハロン湾、漢字で書くと「下龍湾」と記す。
その昔、中国の王朝がこの地方にまで侵攻してきた際、
龍の親子が現われ、敵を退けると同時に口から宝石を吐き出し、それが湾内に点在する島々になった、
というのがこの地にまつわる伝説だ。
奇岩を生成したのは石灰岩、南のニンビンから北は桂林へ続く広大な石灰岩台地によって育まれた奇景である。
ここは水墨画のような風景が連なる桂林・漓江下りのあの奇景と同じ大地なのだ。

ハロン湾は点在する奇岩の影響で波が少なく、水面は穏やか。
かつては海賊の隠れ家ともなったらしいが、その穏やかさを利用して水上で生活する地元民も多く、
住宅はモチロン、学校までが水上に備わっていた。

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途中、鍾乳洞の見学に立ち寄り、ガイドは「一番の見所」と奮起していたが、
規模も内容も物悲しく、鍾乳洞を見慣れた日本人にすればどう考えても蛇足の観光だった。

のどかな風景を撫でながら、船は進む。

小船の見学も鍾乳洞見学も消化し、ツアーのイベントは終了。
あとは帰り道だ。
船のルーフはサンテラス状態で、Tシャツを脱いで昼寝するものもいれば、ビールを楽しんでいる客もいた。
一眼レフとは別に携帯で風景を撮っていると、船員とガイドが食いついてきた。

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「日本の携帯ですか?」

「そうですよ、でもこっちじゃ使えない。写真を撮るだけ」

「日本の携帯はデザインがきれいですね、とても興味があります」

そういう彼らを撮影して見せると、かじりついてみていた。
誰でも最先端の技術は好きなのだ。

「ツアーは終わりで、もう戻るだけでしょう?」

「そうですね、でもこの船はカットバ島へ寄ります。キャンプの客を降ろすためです」

「キャンプができる島があるの? いいなあ。ハノイでは『ハロン湾では台風で宿泊できない』と言われたよ」

「昨日、台風が来ましたから。ツアーで泊まる船の中は波で揺れますから」

「でも、この天気?」

「そうですね、船長も驚くほど晴れた、といってます」

「日焼けするほどね」

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他のクルーズ船もいない貸切の海の上、
太陽光に見降ろされながらのんきな会話が続いた。

そしてこのカットバ島への立ち寄りが、安いだけのこのツアーにおもわぬ副産物をもたらすことになった。


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第十五夜 -乗船- @Ha Long Bay [Vietnam]

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時計が正午を刻む10分ほど前に、バンはハロン・ハーバーに到着した。

クルマから降りると晴れ渡った空が待ち受けていた。
台風の影響など微塵も感じさせない空に、
いっぱい食わされたかなア、とツブやきながらチケット売り場に歩みを進めた。

チケット売り場はたくさんの観光客で混みあっていた。
方々からやって来たガイドがチケットをゲットしてはグループを呼び集め、去っていく。
この混雑に並ばなくて済むだけ、ツアーは楽ということか。

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気温は徐々に上がりはじめ、海からの湿った風が蒸し暑くまとわりつきだしている。
暑さと退屈に耐え切れず、バンから降りたツアーの仲間がアイスや水を買い求めに動き出すと、
ガイドが誇った顔でチケットを握りしめ、戻ってきた。

「みなサーン、集まってくだサーイ」

「みんな、トイレや水買いに行きましたよ」

そう伝えるとせっかくの誇り顔は即座に萎れた。

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再集合した者からチケットを受け取り、船に向かう。
港には無数の中型船が接岸していた。
舳先が少し切り上がり、寸足らずというかズングリムックリした形がベトナムの船の典型なのだろう。
ちょっとコミカルなスタイルをしたその船に乗り込んだ。

木製のデッキを抜け、エアコンが効いたキャビンに入ると
テーブルが据えつけられ、白いまっさらのテーブルクロスがかけられていた。
オシボリやナイフ、スプーンがセットされていて、ここでランチを食べることを無言で説明している。

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船は乗り合いらしく、自分たちのグループ以外にもワサワサとグループが乗り込んできた。
あとから乗り込んできた客は家族連れや仲間でテーブルが分かれてしまうことになり、
お互いに気を利かせて席を譲り合ったりしている。
客が行き来しているその間をおかまいなしにオバチャンはランチの飲み物の注文を取りはじめた。

ニギヤカなキャビンを気にすることもなく、船は岸を離れだしていた。

ハロン・ハーバーからハロン湾の名所、見どころまで多少の時間がかかるのだろう。
港からは奇岩が並ぶ風景は見えない。
特に説明もなく、沖に向かい、船は進みだした。

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動き出してまもなく、ランチの料理が次々に登場した。
大皿に盛られた中華料理のようなベトナム料理のような、炒め物や蒸し物が運ばれる。
もっとも安いツアーに申し込んだのだから、ついているだけマシ、というレベルの料理だ。
決してうまくはないが、相席状態の見知らぬ同士でアーダコーダといいながら、食べる食事もオツだ。
ホトンドの客は欧米人なのだが、フォークを使わず、無理してハシを使って食べているのが微笑ましかった。

ハシと悪戦苦闘している彼らを尻目に、早々に食べ終えて、キャビンの上の屋根に上がった。
奇岩が並ぶ風景が遠くに見えてはじめていた。


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第十五夜 -団体- @Ha Long Bay [Vietnam]

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夜通し降り続いた雨は、朝になるとすっかり上がっていた。

7:30のピックアップ時間に合わせ、ロビーに下りる。
屋根をしこたま叩いていた大粒の雨が、台風の影響かいつものスコールかはわからなかったが、
ホテルの前の通りの路面はきれいに洗われ、空はきれいに晴れ渡っていた。

8時を5分過ぎてようやくお迎え登場。
頼んだコーヒーはすでに飲み干していた。

近くのホテルで小型のバンに乗り込むとすでに先客がシートを占めている。
一人分のスペースを譲ってもらい、出発進行。
車内の面々が今日のツアーのお仲間だ。

ガイドが英語で説明をはじめる。
ハノイの歴史からハロン湾の見所を話しはじめてくれたが、訛りがひどく、説明はぞんざいだった。
滑舌も悪く、車内全体は彼の説明に疲れはじめていた。
彼は「ハノイ」という際に「カピタル・オブ・ベトナム」という単語をつけるのが自慢らしく、
(訛っていてキャピタルがカピタルに聞こえる)
「ハノイ」という単語が登場するごとにそのフレーズは繰り返され、車内をうんざりさせていた。

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知らない同志が集うツアーは、空気の作り方が重要だ。
それを導くのはガイドや添乗員、もちろん大いに盛り上げてくれるのは客の側だ。
同じ場所やツアーで巡ってもお客さん同士が牽制しあっていると、盛り上がりに欠ける。
添乗員やガイドがいくら発破かけても空回りするだけだ。
逆にガイドの質が悪くてもグループは盛り上がらない。
説明が下手でも人柄がよかったり、ぞんざいでもジョークがうまかったりと、
どんなガイドがベストなのかは状況とお客さん次第だ。

残念ながら「安いツアー」に申し込めば、ガイドの質は落ちる。
「旅」において「安い」ということはなにか理由があるからだ。
「入場料」「移動コスト」などはあまり削ることができないので必然、削られるのは、
パッケージ・ツアーの場合;
・ビジネスマン需要があるので直行便は高いため、経由便
・ホテルは街の中心は高いので郊外
・ホテルの食事は高いので、夕食は外のレストラン。移動コストを含めてもこちらが安い
・英語ガイドのみ(ただし小さい町は日本語ガイド自体がいないことも多い)
・「自由行動」や「自由食」という名目が多い(人件費がかからない)
オプショナル・ツアーの場合;
・送迎が乗合い(専用車は高い)
・食事がつかない
・土産店や免税店に立ち寄る

長い間、ツアーコンダクターとして、グループを切り盛りしていたが、
こうして客の側として乗り込む経験が実は少ない。
自分のツアーのときはどうだったのかなあ、とあまりほぐれていない車内の空気のなかで考えていた。

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バンは「キャピタル」の喧騒を抜け、高速道路をひた走っていた。
窓の外には田園風景が広がっている。
街なかで観光するよりも、こうして郊外や街外れの普通の風景を眺めているのが好きだ。

そんな車窓に浸っているとバンは民芸品や土産物を扱うコーヒー・ショップで停車した。
時計を見ると2時間、走り続けていたことになる。
土産物店を借りてのトイレ休憩。
オキマリの「ツアー立ち寄り」、街なかや高速のトイレを使うよりは客にとっては便利だろう。
水やスナックも買えるし、清潔なトイレを心地よく使える。
ドライバーには休息が必要だし、座っているだけの車内から開放されることも客にはうれしい。

民芸品にもコーヒーにも興味が湧かず、通りに出てみた。

民家が立ち並び、所々に店がある。
トイレ休憩の時間がまだあったので、
果物を置いている八百屋の店先などを冷やかしているとカキ氷を売っている店があった。

店先でオバチャンがお茶を入れている。

のどが渇いていたわけではなかったが、なんとなくその店に没入したくて、オーダーしてみた。

「カフェ・ダー(アイス・コーヒー)ください」

ベトナム語でそう告げると、オバチャンはオヤ?という顔をした。
見るからに外国人のオトコがベトナム語で注文したのが意外だったのだろう。

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「カフェ・ダーね」

氷がたくさん入ったグラスの上に金属製のロートを乗せ、お湯を注ぐ準備をしている。
そのオバチャン越しにワラワラと西洋人のグループがやってきた。

「これ、なんだろう?」

続々と到着しているツアーバスの別の客だろう、
手動のカキ氷用機械をもの珍しそうにみつめ、写真を撮っている。

「シェイヴィング・アイスのマシンだよ」

英語でそういうと驚いた表情でこちらを見た。

「あれ、旅行者の人?」

「そう。ベトナム人じゃないよ(笑)。アイス、頼みたいの?」

「シツレイ(笑)。頼んでもらえるかな?」

オバチャンに声をかけるといそいそと氷をセットして、手際よくカキ氷を作り上げた。

「う~ん、おいしいね~」

男女5人の金髪がカキ氷を食べて声を上げた。
オバチャンも思わぬ売り上げで意気揚々、満面の笑みだ。

「どうでもいいけどさ、おれのカフェ・ダーは?」

ノイズのない田舎町の裏通りに笑い声が響いた。

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第十四夜 -台風- @Hanoi [Vietnam]

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頼んでおいた「ハロン湾ツアー」の詳細をフロントのニイチャンに尋ねた。

ここの安宿はホテル業務といっしょに代理店業務も行っている。
いわゆる「カフェ」形態で、航空券の予約から観光ツアーの手配まで幅広く手がけている。
どうやら盛況の店らしく、ロビーでゆっくりする宿泊客以外にも
あれこれブッキングを頼みに来る客が頻繁に出入りしている。

「忙しそうだね」

流暢な英語を使いこなすフロントのニイチャンはこちらの声を受けて、ニヤリと笑った。

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ベトナムの「カフェ」はコーヒーを飲ませる店にはじまり、
店にたまった客やバックパッカーに頼まれ、さまざまな手配を行いはじめた。
そのうち、コーヒーを出すことよりも代理店業務や宿泊業がメインになっていたのだ。
「シン・カフェ」という名のカフェが老舗であり、大手でもある。
そのほかにも名が通った老舗があるが、新興の店々もこれにあやかって「XXカフェ」という看板を掲げている。
街のどこにでもあるので、旅行者にはこの上なく便利だ。

電卓から目を上げた細面の顔がこちらに問い掛ける。

「ハロン湾のツアーだったよね?」

「明日は何時出発?」

「それがハロン湾宿泊のツアーは、ムリだよ」

「なぜ?」

「台風が接近しているんだ。船に宿泊するツアーは難しいよ」

「台風?」

そう問いかけるととネット上の天気図を見せてくれた。
画面にはバカデカイ台風がトンキン湾の南側を陣取っていた。

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実はさっき航空券を買い求めたカフェですでに同様の話しを聞いていた。
ツアー自体の内容と相場を知りたかったのでシン・カフェでも「ハロン湾ツアー」のブッキング状況を尋ねてみたのだ。
シン・カフェのオヤジサンも同じように画面の天気図を見ながら、台風情報を教えてくれていた。

「全部のツアーが中止?」

「いや、宿泊しないツアーなら台風は通り過ぎるだろうから問題ないよ。
ハロン湾を直撃するから通過後も波が荒そうなんだ」

この旅のメイン・ディッシュを前に思わぬ横ヤリ。
とはいえ、台風相手では泣いても騒いでもかなわない。

「で、ハロン湾にはいけるの?」

「半日ツアー、デイ・ツアーなら問題ないよ。どうする?」

ひょっとすると自分のホテルの宿泊を減らしたくないセールス・トークか、あるいは半日ツアーを売りさばきたいのか、
そういう実情がある旅行会社にいたサガで裏読みしてしまうが、ここは彼の言葉に従うしかない。

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裏の事情はわからなかったが、半日ツアーに申し込むことにした。

「OK。8時にホテルの前にピックアップが来るよ」

「サンキュ」

「お金はチェックアウトといっしょでいいよ」

ハロン湾半日ツアー、ランチ込みのイングリッシュ・ガイド付きツアーで$16。
シン・カフェより$8も安いのでおどろいた。
ランチの質が悪いか、ガイドの質が悪いのか、まあそんなところだろう。

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ひとまず足を向け、気に入ったなら現地で残る手立てを考えてもいいし、出発前日にまた訪れることもできるだろう。
ベトナムに沿う南シナ海。
夏真っ盛りのこの時期は「台風大通り」でもある。
台風相手にムリをいっても仕方ない。

リビング兼用のロビーでコーヒーを頼み、買ってきた夕食を広げると、扉の向こうに大粒の雨が落ちだした


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第十四夜 -価格- @Hanoi [Vietnam]

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夕食と飲み物を買い込み、宿に戻ることにした。

途中、ミネラル・ウォーターを買い忘れたことに気づき、小さな店に立ち寄った。
実はハノイに来てからやっかいなことにぶちあたっている。
ミネラル・ウォーターの値段が店によってバラバラなのだ。

メンドウなことに店先に並んだボトルには値段が張られていない。
「いくら?」と聞いてみるまでわからないのだ。
大きなボトルだと¥50~150、たいした金額差じゃないのだが、同じ値段で2本買えるのはちょっとシャクだ。

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午後の散策で大体の相場をつかんだので、慣れてはきていた。
どうやら観光客にフっかけようとか、高い値段で売りつけようというわけでなくて、
ただ単に店によって、仕入れ値が違い、売値も変わっているようなのだ。
さらに冷蔵庫で冷やされているものは昔懐かし「冷やし賃」を取る店があったり、
(かつて日本でもビンのジュースなどに冷やし賃¥5取る酒屋などがあった)
ミネラル・ウォーターの銘柄によって、1,000~2,000ドンの価格差があったり、と
ややこしさとメンドくささが割増になっているのだ。

店でもそのあたりを把握してないのか、
「いくら?」とベトナム語で尋ねると店のおばちゃんは奥にいるダンナに「これいくらだっけ?」なんて尋ねてたりする。
この場合、ダンナはこちらの顔を見ていないので、わざわざ外国人価格にすると思えない。

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水の問題とは別だが、宿や街角ですれ違った日本人バックパッカーや観光客は、
ヴェトナムに存在する「外国人価格」を異常に気にしていた。
まるで自分たちだけがダマされているかのような価格設定に怒り、
ボラレない自衛策を意気揚々と話し合っている旅行者もいた。

かつては外貨獲得のための「二重価格」が歴然と存在したかもしれないが、
この旅では最後までそんなシーンには出会うことはなかった。
ここに記しているとおり、ふっかけられることはあったが、ボラレたことはないのだ。
ホテルや安宿にも二重価格はないし、二重構造がまかり通る社会主義国にしては誠実な印象だ。

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ベトナムに限らず、「旅行者」はふっかけられたり、ボラレたりする運命にある。
いくら節約して旅しているとはいえ、『旅行する余裕』があるのだから。
地元から離れることができない人々から見れば、
「航空券」を買い、たとえ安宿とはいえ「ホテル」に泊まり歩く旅行者は「ゆとり」があるのだ。

だまされるのは気に障るが、ピリピリと神経を逆立て、歩くのもどうだろう?
がんばって$1をケチって、あるいは$1を値切って、楽しい旅があるのだろうか。

「取った取られた」を気にして旅している日本人旅行者がとても多いことに気づく。
「日本人は甘い」と思われたくなくて、肩イカらせて歩くのはわかる。
長い日々を生き抜くため、手持ちのお金を節約することは大事だが、心根まで節約してしまうのはどうだろう。
節約旅行をしながら、いつもそう考えながら歩いている。

ダマされたなら、それも旅。
ボラレたなら、それも旅。
わずかな金額を失ったなら、「旅先の笑い話」を買ったと思えばいい。
人生が変わるような金額じゃないのだから。

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かつては有名だったベトナムの「外国人価格」よりも気になっていることがあった。
ベトナムを歩きはじめてから、ずっとひっかかっているのだ。
この国の首都、ハノイでそれは解決するのだろうか。

帰りのフライトが決まったせいか、あるいは単に夜行バスのせいか、
ミネラル・ウォーターを買うために数軒尋ね歩いたせいだろうか、
宿に戻ると疲労感がドッと押し寄せた。


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第十四夜 -確定- @Hanoi [Vietnam]

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夜行バスで疲れたカラダを安宿のベッドに横たえた。

仮眠とシャワーでどうにか原状回復、熱いお湯が出るシャワーはありがたい。
安宿でも部屋にシャワーがあると、寝起きや出かけて帰ってきた後など浴びる頻度も増し、
リフレッシュも使いやすいのがうれしい。

ニギヤカな「首都」を散策。
まずは数日過ごすことになる宿の近隣を探索した。

安宿街の近くは、どうやら問屋街が連なっているらしく、オモチャの問屋が続いた後は反物、そのあとはお菓子、
乾物屋に漢方と、通りごとに似たような問屋が軒を連ねていた。
通りを折れるごと、路地を巡るごとに問屋の表情が変わって現れた。

地元の人が集うであろう食堂街もあった。
宿から足を伸ばせる距離にグルメ・スポット発見。
そこを抜けると、大きな市場にぶち当たった。

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フラリと宿を出たので、地図も持たず、北に向かって歩いていたのだが、出会った市場には「ドンスアン」と記されていた。
あとで地図と照らし合わせるとこの市場はハノイ中心街でもっとも大きく、このあたりが旧市街のはずれでもあった。

市場の周りはさすがににぎやかで、路肩に店を広げる人、バイクを店にしている人、天秤棒で売り歩く人などが
少しのスペースを見つけてはマメに商売を展開していた。
路上はもはやクルマの通り道として機能していない。
通りを行く人も慣れたもので、鳴り続けるクラクションを気にもとめず、
運転手に怒鳴られるとようやく歩みを止め、道をあけるようなありさまだ。

これまで眺めてきた片田舎の市場と違い、人の数が多い。
歩くのも厄介で、写真を撮るにも気を使う。
人の多さに閉口すると同時に、触手もあまり動かず、早々に市場を離れた。

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早朝歩いた街の中心へ向かう。

旅行代理店やカフェを見つけては飛び込み、エア・チケットの値段を尋ねた。
ベトナムはハノイが終着。
数日後にはここを離れ、バンコクに戻らなくてはならない。
来た道を辿って戻るほど酔狂でなく、酔狂に浸る時間もないので、バンコクまでのフライトを探さなくてはならないのだ。

数件尋ねて、結局、バスで世話になりつづけたシン・カフェへ。
街のど真ん中にあるホアンキエム湖の正面にあったハノイ店、
ここがもっとも安く、空き状況もすぐ知らせてくれたので、ここで買うことにした。

「さっき聞いたバンコクまでのチケット、お願いします」

「お。また来たね。ブッキングと発券、すぐにしちゃっていいかな?」

「いいですよ、お金すぐに払います」

「いいよ、発券は明日だから、そのときでいい」

「明日は来られないんだ。あさってでもいいかな?」

「こっちはかまわないよ、じゃあ、チケット、キープしておくよ」

「ありがとう、手付はいらない?」

「ダイジョウブ、ダイジョウブ、信頼するよ」

「それはメンドウじゃなくて助かるよ、ハハハ」

「こっちもそれの方がメンドウじゃないんだ。ハハハ」

端末のキーボードを叩きながら、カフェのおじさんは陽気に笑った。

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3日後のエア・アジア、$115、クレジット・カードで手数料無し。
当日のチケット発券時間が終わっていたため、明日発券という話だったが、
翌日はハロン湾へ行くため、受け取りに来られない。
それでも快く受けてくれ、要領よく裁いてくれてさいわいだ。

入国前にあらかじめ格安航空会社のチケットをネットで購入しておけば、安く済んだのかもしれないが、
この国を訪れるまではベトナムを気に入るのか、どこの街で何日間費やすのか、まったくわからない状態で旅ははじまる。
そんな状態で日程に「シバリ」をつけたくなかった。
それもこれで確定。

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満席やチケットが取れなかったら、どうするかって?
それはそのときでしょう。

それが「旅」。


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第十四夜 -首都- @Hanoi [Vietnam]

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夜行バスの旅を終えて、早朝のハノイの街に到着した。

狭いシートと満席でゆとりのない車内に13時間。
揺られ続けて、朝の6:30、ハノイの街の放り出された。
途中のトイレ休憩で前の座席に座っていた日本人の大学生と顔見知りになったが、
その彼と苦笑いしながら、お互い、固まった身体をほぐす。
それぞれの目的地を目指す前に朝食でも食べないか、と声をかけたら、笑顔で応えてくれた。

重い荷物を背負い、まだ眠りについている早朝の街を歩く。
排気ガスが充満していないことは幸いだったが、街の中心まで歩いてもカフェすら開いていなかった。

ようやく見つけたのは、街のど真ん中ともいえる場所にあった24時間営業で有名なフォーのチェーン店。
ハノイのその店は24時間営業ではないらしく、店内は開店前の清掃が施されたばかりだった。
清潔な店内とよく冷えたエアコンが心地いい。
ローカル・プライスよりは高い値段のフォーだったが、荷物を置き、テーブルについた。

互いの行き先や巡ってきた町の情報などを話し、フォーを流し込む。
どうやら彼は叔父が駐在しているらしく、その家に潜り込むらしいのだが、
迎えの電話を入れるにも朝早すぎることに時間を持て余していた。

「店で時間をつぶしている間に宿を探してきてもいいですよ」

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彼の思いがけない言葉に甘え、重い荷物を置いたまま、安宿街に向かった。
徒歩で10分ほどのエリアに安宿は並んでいたが、目的としていた宿はシングルが満杯だった。

「チェックアウトの時間にならないとわからないわ」

フロントの若い女性はつれなくそう言った。
それはそうだ、こんな早い時間に尋ねても、部屋の動きはわからない。
安宿はチェックアウトの客が出てこそ、次の客を受け入れられるのだ。
空き部屋が出たらとっておいてもらうように名前を残し、他の宿もあたってみることにした。

「空いているよ、早朝に空港に発ったやつがいるから」

「部屋、見せてもらえるかな?」

「まだ、掃除してないけど、かまわないなら見せるよ」

そういってカギを取り出した彼の後に続く。
古くてこじんまりした宿だったが、部屋は広めで、シャワーとトイレも備わっていた。

「シングルは$9、エアコン付きならプラス$5の$14。ネットを使いたいならロビーにある」

エアコン代で別途$5というのは笑えるが、途上国ではよくある話。
見せてもらった部屋には天井から大きなファンがぶら下がっていて、エアコンなしでも過ごせそうだった。

「この部屋でOKだけど、フエから来たからハノイの陽気がわからないんだ」

「それならエアコン付きがよくなったら、部屋を変えることができるよ」

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手際のいい言葉に乗せられ、即決した。
ロビーに無料のPCが置かれているのも、ネット・カフェに足を運ぶ手間が省けて好都合だった。
正面に大きく「カフェ」と記されていたことを思い出し、重ねて尋ねてみる。

「ハロン行きのツアーも扱ってる?」

「あるよ」

「OK。それは好都合。バゲージは預けてあるから、荷物とってまた戻るよ」

「その間に部屋を掃除していくよ」

パスポート番号を記し、サインをすると、チェックインは完了。
彼が待つフォーの店に慌てて戻った。

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「悪かったね、お待たせ」

「いや、なんてことないですよ。エアコン効いているし、コーヒー飲みながら、バスで固まった身体をほぐしてました」

「荷物背負って宿を探すのが一人旅の一番の難点でね。ホント、助かった。ここはゴチソウするよ」

「それじゃ、割に合わないですよ、いいですよ」

「いやあ、旅先のこういうひょんなことが大事なんだ」

「じゃあ、ゴチソウになります。そろそろ叔父も電話に出そうな時間です。僕も時間がつぶせてよかった。
まだ数日、ベトナムの滞在が続くんですか?」

「ハロン湾が目的だからね、これからがメインイベントかな」

「いいなあ、僕は一泊したら、翌日の便で帰るんですよ。ハロンにいく時間はなさそうです」

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「じゃあ、気をつけて、帰国して」

「そちらも気をつけて、ごちそうさまでした」

「いやあ、お礼をいいたいのはこっちだよ」

出勤時間でニギヤカになりはじめたハノイの中心街で握手を交わし、お互いの道へ歩みを進めた。


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第十三夜 -返品- @Hue [Vietnam]

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路地を巡りながら、目的の品物を探す。

探していたヘッドフォンは「カナル・タイプ」というやつで、これがなかなか見つからない。
耳の穴が小さいのか、ポピュラーなタイプのヘッドフォンだと少しの時間で外れてしまう。
動いてなくても、ポロリと落ちてしまうので、歩きながら音楽を聴くなどというのは到底ムリなのだ。
で、耳に差し込む「カナル・タイプ」となるのだが、コイツがあまりポピュラーでないらしく、道行く店々で売られていない。

電器通りの店を数軒訪ね歩き、ようやく数点、在庫を置いている店を見つけ出した。

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店頭では若い男女がたむろしていた。
誰が店員だが、誰が客だか、わからない状態。
彼らのやりとりから察するとどうやら店員の友達が、店先で退屈しのぎに集っているらしい。
アジアの店先ではよくある光景。
これがまったくもって買い物のジャマなのだが、店員も彼らもとんとおかまいなし。
それどころかこちらの買い物に興味津々で、店員とのやり取りにアレコレ口をはさんでくる。
ヒマツブシの材料にされているのかな?

そんな彼らの「お手伝い」もあって、バッタものではないまともなブランドのヘッドフォンを見つけ出した。

値段の安さもあり、2つ購入。
帰国してからも使えるように、予備のつもりで2つ。
それと2つ買えばまけてくれるかな? という淡い期待もあったが、
品数の少ないモデルらしく、割り引きはゼロ。
コピー商品モデルなら格段に値引きをしてくれるらしいが、
ヘッドフォンとなると音質にかかわるので、安さはあまりメリットにはならない。
まあ、一般的なモデルと比べてもさほど高くもなく、ふっかけられてもいないので、手を打った。
SONY製のヘッドフォン、2つで60,000ドンだ。(約$4)

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宿への帰り道、フエの街をひと通り巡ってしまったことに気づいた。

郊外の霊廟に足を伸ばす、という手もあったが、憧れの街には拍子抜けした思いのほうが強く、
さらに見所を探すことよりも、バス・ターミナルでもあるカフェの事務所に自転車を走らせていた。

「2時間後のバスに空席がある」という返答を聞いた瞬間、そのバスでこの町を去ることを決めた。

予約を入れると急いで、宿に戻った。
宿のオヤジサンにチェックアウトを告げる。

「もう一泊するといったけど、17:30のバスで発つことにしました。
15時過ぎのこの時間まで部屋を使ってしまったけど、清算してもらえますか?」

「そっか、チェックアウトするか。そうなると一泊とデイユース分だけど、
デイユースといってもうちは値段が値段だから、一泊分もらうことになるけど」

「こっちの勝手な都合なので、仕方ないですよ。$5+$5ですよね」

「そうしてくれるとありがたい。そのかわり出発まで部屋を使っていてかまわないよ」

「行く前にシャワーが使えるのはうれしいな。あ、それと自転車のお金も払います」

「デイユース分くれるならそれはオマケでいいよ」

「ありがとう。そうなるとさっさと荷物を詰めてしまわないと」

「お金は出て行くときでいいから~」

急で勝手な申し出だったので、宿代は仕方ないとあきらめていたが、
自転車のレンタル代、2日分で$2という些細な金額だが、気遣ってくれたのがうれしかった。
それと長い夜行バスの前にシャワーを使えることもありがたかった。
「プチ・ホームステイ」は心地よく、別れがたかったが、フエの街に未練はなかった。

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部屋で荷物を詰めながら、車内で食べる果物や飲み物も買いに行かなくては、と思い立つ。
同時に買ってきたヘッドフォンの性能も試しておきたかった。
長い夜行バスの旅が待っているのだ。

「!」

ヘッドフォンのピンが違う。
そのピンはマイクロ・ジャックよりもさらに細いサイズで、
2つのヘッドフォンは2つとも指した先で空回りしていた。

「おい!こんなジャック、日本にはないぜ!」

ハズレを引いてしまったか、と時計を見ながら、悔やむ。
自転車を走らせれば間に合うか? 飲み物や果物も買いたいし・・・
買い物は宿の近所で済ませるつもりだったが、それよりもヘッドフォンが気にかかった。
使えないこともそうだが、暗くて本も読めない夜行バスの車内、
ふたたびの「退屈地獄」に陥るのは避けたかった。

オヤジサンにもう一度、自転車を借りる。

「ドンバの前まで行ってきます!」

「忙しいね~」

急いでいるときはアブナイので、いつも以上にクルマに気をつけながら、自転車を飛ばす。
電器店に飛び込むと、店員と「お友達連合」が驚きの表情でこっちを見ていた。

「苦情じゃないんだ。使えないんだ、これ」

「使えない?聞こえないのか?」

話が長くなりそうだったので、MP3プレーヤーにヘッドフォンを指して見せた。

「ジャックが違うんだ」

「!!おお!」

「お友達連合」が周りを取り囲んでいた。

「合うやつに代えてあげるよ」

そういうと棚から別のヘッドフォンを取り出したが、ジャック部分が合うものは1つしかなかった。

「もう1個ないの?2個欲しいんだけど」

「カナルじゃないやつならあるけど」

「う~ん、他のやつはいらないよ」

「じゃあ、返金するよ」

と、アッサリ交換して、アッサリお金を返してくれた。
レシートもなにも出してもらっていなかったが、手際よく応じてくれた。
やたらと時計を気にしているコチラの気配でも感じ取ったのだろうか。

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店員と「お友達連合」と握手を交わすと、ふたたび自転車を飛ばし、宿に戻る。
シャワーを使い、荷物を担ぎ、お金を払い、バス乗り場に向かい、
定刻どおりにやってきた17:30出発のバスの座席に沈み込んだ。

窓からは人の優しさ、気の良さにたくさん触れることのできた不思議なフエの街が見えた。


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第十三夜 -電器- @Hue [Vietnam]

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二杯目のコーヒーを飲み干すと店を出た。

ゲームのルールを覚えるのは得意なほうだが、繰り返し見ていてもわからず仕舞いだった。
言葉も通じない状態で、割って入るほどの勇気は起きず、傍観者を決め込んだ。
眺めていると、強いヤツと弱いヤツというのが明確に見えてくる。
勝っているヤツは弱い手札でも強引に押し、負けを引かない。
負けているヤツはいい手札でも勝負にいけず、小さな勝ちで終える。
勝っているのは「ゲームがうまい」わけではなくて「勝負に強い」ヤツが勝つのだ。
このあたりはあらゆるゲームにおける万国共通の機微ですなあ。

人のギャンブルを眺めていることにはさすがにすぐに飽きて、おばさんにコーヒー代を払うと自転車にまたがった。

テーブルを囲む彼らが陽気に手を振って、見送ってくれる。
くわえタバコが粋だ。

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あてもなく自転車をこぎ出したが、買わなくてはいけないものがあったことを思い出し、市場に向かった。

実は旅の途中でヘッドフォンを壊してしまったのだ。
今回はMP3プレイヤーを持ってきていたが、旅の途中でヘッドフォンのラインを引っ掛け、
コードを切って、壊してしまっていた。
バスや列車の移動時には本に浸っているし、カフェや食堂では街のノイズに浸るのが好きなので、
旅先ではあまり音楽は聞かない。
日常生活で音楽は欠かせないが、旅先では安宿で街の喧騒に浸っているのも楽しい。
アメリカのモーテルのように部屋にラジオが備えうけられていれば、それはそれでうれしいが。

今回は繰り返しの夜行バス、テレビもないであろう安宿で過ごすことになる日々だろうと見越して持ってきていたのだ。
馴れないことはするものじゃない。
用意周到で持参してきたわりには早々にヘッドフォンを壊して、
おかげでニャチャンからホイアンへの夜行バスは退屈との戦いとなった。
このときは急に夜行バスに乗ることを決めたので、ヘッドフォンを買うことまで頭が回らなかったのだ。

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フエの街は香江で南北に区切られ、橋で結ばれている。
ホテルなどが点在する南側の新市街と王宮がある北側の旧市街は、
東側のチャンティエン橋と西側のフースアン橋が結んでいる。
さらに西へ向かえば、別の橋があるのかもしれないが、フエの中心部にはこの2つの橋しかない。
この街のサイズで中心地にわずか橋2つ、なのだ。
旧式で狭い、2つの橋の上は当然のようにいつもクルマであふれている。
バイクは詰まったクルマをあざ笑うかのように駆け抜けていくが、
あまりの狭さと交通量で自転車はとても通れたものではなく、歩行者に気を使いながら歩道を進む。

新市街から王宮を正面に見据え、橋を渡る。
橋を渡りきり、東側、つまり右手に折れると、フエの街で一番大きな市場であるドンバ市場(Cho Don Ba)が陣取っている。

無造作に置かれた自転車の山に割り込むように自分の自転車を差し込もうとすると、笛を吹かれた。
制服を着た警備員がいて、取り締まっているらしい。
どうせ取り締まるなら、きちんと並べて停めるようにして指導してくれ、といいたくなるぐらいの乱雑ぶり。
ところが、笛の勢いからすると勝手に停めてはいけないらしい。

じゃあ、どこに停めるんだよ、と悪態をつきたくなるが、笛の持ち主は「ダメ」の一点張り。

途方に暮れかけていると、脇に若い男の子が乗った自転車が滑り込んできた。
アッという間に停めてカギをかけると、こちらに目で合図して、市場に消えていった。

そう、警備員が見ていない間に停めてしまえば、OKなのね。

彼の目配せはそんなことを意味していた。
その彼にならって、すばやくカギを抜き取り、市場に潜り込んだ。

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ドンバ市場は精肉、鮮魚、青果に食料品、花にお菓子に洋服まで売っている。
日本やアメリカのスーパー並に「ないものはない」という品揃え。
ヴェトナムのスーパーは「ないもの」はたしかに無かったけど。

他の市場と違うのは、お菓子の詰め合わせや珍味のパッケージも売っているところか。
国内の旅行客向けなのだろうか、外国人観光客は買わないであろう、
「ひと昔前」という印象のお菓子の折り詰めが、市場の奥のほうで山のように積まれている。
盛んにお菓子類の試食を勧め、買わないか、と声をかけられたが、
商売するならもう少し客選んだほうがいいですよ、というようなシロモノ。
品物が悪い、とかではなく、男の一人旅はそういうものは買わないよ、ということです。

乾物からオモチャまでが詰まっている市場では捜し歩くより、聞いたほうが早い。
試食のお菓子を振舞っていた店員にやぶからぼうに「ヘッドフォン売ってない?」と尋ねてみた。
もちろん英語は通じず、耳に指を当てて、身振り手振りの質問だ。

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「ここにはないよ、電化製品や携帯電話は通りの向こうに売っているよ」

市場を出て、通りを渡って・・・とモノシリ顔の若い店員は腕と指を激しく動かしながら答えてくれた。
用がなくなった市場に別れを告げ、
停めておいた自転車をそのままにし、
横断歩道もなにもないだだ広い大通りをクルマの波を避けながら、渡る。

渡り切った通りの向こうのあった路地には小さな電器店や携帯電話ショップが建ち並んでいた。




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第十三夜 -遊戯- @Hue [Vietnam]

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「古都」の響きに駆られてか、フエにやってくることを楽しみにしていた。

いつもそうだが、旅には目的を設定している。
「最果て」だったり、「ドリアン」だったり、「JAZZ」だったり・・・。
たいがいの場合、人に話すと笑われそうな目的だ。

この旅の目的は「ハロン湾」「フォー」「フエ」。
人に告げたら、笑われそうなほどわかりやすい目的。

阮王朝の歴史を詳しく知るわけではないが、古き王朝の都に思いを馳せていた。
テト(旧正月)攻勢のもと、フエの街での激戦を映し出していたのは、
「フルメタル・ジャケット」だったか「プラトーン」だったか、なんの映画か記憶が定かではないが、
銃弾が飛び交う激しい市街戦をくぐり抜けた「古都」にロマンを重ねていたのだろうか。

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王宮に歩みを進めると、そのロマンはすかされてしまった。

再建された建物は記念写真に熱をあげる観光客を満足させるだけのもので、他にはなにも感じさせてくれなかった。
復刻された建物よりもその背後に広がっていた記念撮影のネタにもならない「原っぱ」のほうになにかを考えさせられた。

王宮内に建つ霊廟や寺院をひと巡りすると、預けてあった自転車を受け取り、足早に立ち去った。

ひどい言い方をすれば王宮には「原っぱ」以外、観るものはなかったのである。
振り返ってみてもフエの街で撮った写真は少なく、それがすべてを物語っていた。
気に入った場所、ハマったものはやたらと写真を撮る、そんなクセが自分にはあるのだ。
旧市街にはなにかがあるかもしれないと、王宮の背後にある街に乗り出した。

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旧市街は道幅も狭く、軒の低い家が連なる。

そんな街並みにスーパーマーケットがあった。
冷たい飲み物を買おう、と店内を巡るが、缶ジュースもペットボトルも棚に並べられ、
あらかじめ冷やされたやつはひとつもない。

ニャチャンでもスーパーマーケットを見つけ、物見遊山とばかりに入ってみたが、
購買意欲をくすぐってくれるようなものはなにもなく、ただ冷房が効いた店内で身体を冷やして出てきただけだった。
この辺が社会主義の国なのかな、と思わせるシーンだったが、フエのスーパーでその印象は確証になった。
この国では市場が万能で、スーパーマーケットは役立たずの入れ物でしかない。
市場ではあらゆる雑貨からあらゆるサービスまで探すことができて、たくさんおエネルギーが詰まっていた。

あきらめて自転車を走らせると、小さな売店に出会った。
日本の駄菓子屋を思わせるようなこじんまりした店はおばさんが切り盛りしている。
渇きを癒すため、タバコを消して店を去ったオジサンのあと、軒先の小さなイスに腰掛けた。

「カフェ・ダー(アイス・コーヒー)あります?」

返事もなく、頷くいただけでおばさんは奥に消えた。
曇っているとはいえ、日が高くなると暑い。
腰掛けるととたんに汗が噴き出してきた。

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「はい、カフェ・ダー」

王宮のパンフレットを団扇代わりに涼んでいると、
大き目のグラスに氷がたくさん入ったコーヒーが置かれた。
冷たいグラスで涼に浸っていると、隣のテーブルにわらわらと男たちがやってきた。
上半身ハダカのヤツ、座ってからシャツを脱ぎだすヤツ、持参の扇子で扇ぐヤツ。
常連なのだろう、最後の一人は軒先に置かれた冷蔵庫からみんなの飲み物を取り出している。

先客のこちらになんとなく目視でアイサツをくれ、
空になったグラスに気づくと、自分たちが飲むケバい色のジュースを飲むか? と指し示してくれた。
その好意を断り、アイスコーヒーのお代わりをもらおうとするが、家の奥に引っ込んだおばさんが出てこない。
見かねた彼らが、かわりに大声でおばさんを呼びこんでくれた。

ケバイ色のジュースが入ったボトルに口をつけるかつけないかのうちにトランプが配られた。
どうやらちょっとした賭場のご開帳。
ヨーロッパでもアメリカでもアジアでも、仲間内の退屈しのぎはやはりこれ。
ニューオリンズではバックギャモンだったし、プロバンスではペタンク、モロッコではチェスで賭けていた。

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ルールがわかれば、お仲間に、と思って、しばらく眺めていたが、
「大富豪」のようで「ブリッジ」のようで、正確なルールがわからないので、あきらめた。
いさぎよくカメラマンに舞い戻り、
「写真撮っていいか?」とカメラを指差すと、みながいっせいに照れた。

滅びてしまったが、下町にあった縁台将棋のような、古都の風景。


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第十三夜 -王宮- @Hue [Vietnam]

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翌朝、レストランに舞い戻り、朝食を摂る。

同じメニューを頼み、コーヒーを飲んでいると、ウェイトレスが笑いかけてきた。
「ほんとに来たんですね」

「また来ます、って言ったでしょう?」

「そう言って、ほんとに来る人は少ないわ」

「社交辞令は言わないんだ」

「コーヒーのおかわり、いります?」

店内の客が少ないせいか、数名いるウェイトレスが入れ替わりでサービスをしてくれる。
値段からは想像できない手厚い接客に感激の朝。

フエに来てから、曇り空が続き、少し涼しい。
ホイアンの蒸し暑さはどこへやら、である。
宿でふたたび自転車を借り出し、この街のメイン・イベントへ向かった。

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王宮。

お堀に架かる橋のすぐ脇にある小屋でチケットを買う。
かんたんに購入したものの、正門前に自転車を置き去りにしていけるような雰囲気ではない。
警備のチェックが厳しく、観光客を降ろすクルマやツアー客を吐き出すバスを停めることも許されない。
いったい自転車はドコに停めればいいのだろう、
まさか自転車ごと中には入れないよな、と目線を漂わせていると、
小屋の横に立っていたオヤジサンに呼ばれた。

なにを言っているかわからないが、手招きをしている。

自転車を押しながらその方向に進むと、土が剥き出しの広場が駐輪場になっている。
どうやらここで預かってくれるらしく、さっきのオヤジサンは地味な客引きのようだ。
呼ばれたときから無料ではないだろうな、と察していたが、
案の定、預かり証と引き換えに数十円の支払い。
まあ「観光地の税金」みたいなものだ。

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かつての阮朝の都、『順化都城』とも『富春京師』とも呼ばれた王城。

正面の門は『午門』と呼ばれ、客人を迎え入れる形のU字の型をしている。
1945年、この門の二階で最後の皇帝が退位を宣言し、王朝は幕を閉じたのだ。
その二階の間へも歩みを進めることができ、観光客には格好の撮影ポイントになっている。

門を抜けると両手を広げたように待っているのが『太和殿』だ。
玉座が再現され、ここが王宮の中心、いやフエの中心、かつての王朝の中心であったことを教えてくれる。
屋根の瓦や彩りの龍が中国を思わせるが、そんな風に記したら、たぶんヴェトナムの人々には嫌われるだろう。

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太和殿を過ぎると、裏庭があり、そこでは民族衣装を着させてくれるコーナーがあった。
ヴェトナム人の家族だろうか、一族がこぞって着替え、記念撮影。
どこの国でも、どこの観光地でもやることは似ている。

さらに歩みを進めると、朽ち果てた荒地が広がっていた。

さすがにここまで来ると観光客もおらず、ひと気もない。
「あの戦争」がここにあったすべてを破壊し尽くしてしまったのだろうか。

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再建するものすらない原っぱは、観光客を惹きつけるものなどなにもなく、ただ雑草だけが伸びていた。
「戦争の傷跡」らしいものはなにもなかったが、なにもないことがよけいに戦争の爪あとを感じさせる。
新しく造られた門や王宮よりもなにもない原っぱがなにかを語りかけてきた。

ただ蜻蛉が飛んでいた。



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第十二夜 -発見- @Hue [Vietnam]

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市場で買った果物とミネラル・ウォーターをぶら下げ、宿に戻った。

リビングと兼用のロビーでは、子供とおばあちゃんがTVでアニメを見ている。
キッチンにいた奥さんが果物と水の入った袋を見て、冷蔵庫を指差す。
「冷蔵庫に入れておこうか?」と身振り手振りで語っている。
言葉は通じていないが、何気ない親切、小さな心遣いがうれしい。

なんとなく居心地がよくて、なんとなく居場所がなくて、
夏休みに田舎に連れてこられた子供のような気分だった。

たっぷりの湿度とほこりをまとった身体を熱いシャワーに浸す。
排気ガスをたんまりと吸い込んだ鼻や肺を洗い、リフレッシュ。

午前中に到着し、早々に宿を決めたこともあって、気分が軽い。
汗で萎れたTシャツを替え、今度は歩きでホテル周辺の散策に出かけた。

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狭い路地では、子供が道路に絵を書いていたり、洗濯物を干すおばさんがいたり、
安宿が並ぶエリアとはいえ、生活臭さが満ち溢れていた。
「古都」フエのメイン・イベントである王宮を巡っていないせいか、
この街では観光地らしいシーンに出合っておらず、なんとも奇妙な感じがしている。
「田舎の大きな街」といっては「古都」という冠に失礼だろうか。

駄菓子を売っている店や雑貨屋を冷やかしながら、大通り沿いを歩く。
彷徨い歩くうちに着替えたシャツは汗ばんでいた。
アイスコーヒーが飲みたくなり、シャレたレストランに眼をやると
店の前でビラを配っている女性に眼が止まった。

その女のコは「アオザイ」を着ていたのだ。

実はヴェトナムにやってきてアオザイをホトンド眼にしていない。
ニャチャンの海岸で「写真撮って!」とせがまれた学生と
トイレを借りに入った高級ホテルのフロント係ぐらいしか眼にしていない。
日本の着物と同じような使われ方の「民族衣装」なのだろう。

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めずらしいなあ、オープン・テラスのシャレた店は制服もアオザイでキメているのだなあ、
と勝手に想像を走らせながら無造作にビラを受け取った。

するとそこには「50c!」「8,000 DON!」という文字が大きく書かれていた。

「!」

オージー夫妻の顔がふたたび浮かぶ。
『大発見の激安朝食メニュー』を力説していたダンナのカオだ。

「これって、朝食だけでしょう?」

「ハッピー・アワーもありますよ」

「何時まで?メニューは同じもの?」

「朝食と同じモノが出ます。あと15分あります、ダイジョウブです」

時計を見ると5時15分前。
返事をする間もなく、店に歩みを進めた。

メニューがセコくても、ダマされたとしてもシャレたコーヒー・ショップでアイスコーヒーを飲むより安い値段。
「ネスカフェ」にパンをかじるだけでも許せる金額。
主観たっぷりだったオージーのダンナの言葉にあまり期待を抱かず、席に着いた。

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「メニューです」
アオザイをまとったウェイトレスが水とオシボリをテーブルに置く。

「50cのメニューをもらえますか?」

「わかりました。玉子の調理法とパンの種類を選んでください」

「オムレツで。パンはバゲットを」

「飲み物は?」

「カフェ・ダーで」

オシボリとお冷が置かれたことにも驚いたが、50cのメニューに玉子とパンのチョイスがあることにもっと驚かされた。
夕方の変な時間だからだろうか、客は少ない。
テーブル席でフルーツ・ジュースを飲んでいるカップル、カウンターでアイスコーヒーを飲む地元ビジネスマンがいるだけだ。
ビジネスマンの傍らには据え付けのPCが置かれている。

「サラダです」
ガラスの小鉢に入ったサラダとバゲットが置かれた。

「カウンターにあるPCはネット・アクセスしてますか?」

「ええ。無料でお使いください」

夕食後の退屈な時間にネット・カフェに行くつもりだったので、その言葉に甘えた。
メール・チェックをしているとプレートにのったオムレツとフルーツがトレイに乗ってやってきた。

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「デザートまで?」

「そうです、あとアイスコーヒーですべてです」

「すごいセットですね、驚きますよ」

「ですね(笑)。朝とこの時間はお客さんがいないので、オーナーがやりはじめたんです。
夕食とバーの時間がメインなんですが、宣伝も兼ねてのアイデアみたいです」

「それはうれしい、貧乏旅行者にはとくに(笑)。明日の朝食は必ずきますよ」

「オーナーが聞いたら喜びますよ」

話しながら、オムレツにナイフを入れる。
玉子を焼いただけのオムレツだったが、できたての熱さがバゲットによく合った。
料理にも増して、礼儀正しく、きちんとしたサービスを提供してくれる店員にも感激した。

「別れ難い店だった」というオージー夫妻の言葉に納得しながら、
アイスコーヒーのグラスを傾けた。

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第十二夜 -香江- @Hue [Vietnam]

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繰り返し、午後の街を巡る。

『古都』と銘打たれたこの街だが、復興された王宮の跡地以外、とくに観るものもない。
普通の街並に自転車を走らせ、普通の風景、普通の生活を眺めながらペダルを踏み続けた。

街の中心に『香江』という名の河が流れ、新市街と旧市街に街を分けている。
王宮がある旧市街は碁盤の目のように道が張り巡らされている。
車両の立ち入りが制限されている区域もあり、細くて狭い路地はかつての反映を思い出させる。
近代的なホテルや企業が入ったオフィスビルが林立している新市街が現在の生活の中心だ。
表情の違う街が河を隔てて、この時代を生きている。

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河の両岸に大きな通りが沿い、どちらの道も幅いっぱいのクルマで充たされている。
少しでも隙間があれば、バイクが次々とその間を埋めていく。
静かな海辺の街を巡ってきたので久々に喧騒との再開。
排気音とクラクションがヴェトナムらしさを思い出させてくれる。

自転車をこぎながらもまとわりついてくる暑さもヴェトナムらしさ。
考えてみれば、海沿いの小さな町々はさわやかで、確かにヴェトナムらしさには欠けていた。
にぎやかな騒音に洗われながらも、快適な「プチ・ホームステイ先」を見つけていたので気分的にはリラックスしている。
ホイアンからのバス旅の疲れもなく、フエの滞在が楽しみになっていた。

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一人旅の難点のひとつに「宿を見つける」というのがある。
「節約旅行」であれば、$1、あるいは一食分ほども違う宿代を尋ねて歩き回る。
「お湯のシャワー」か「エアコン付」か「朝食あり」などの細かい条件と宿代を天秤にかけながら、捜し歩く。
ツアーで使うようなホテルでない安宿のすべてに「エアコン」はなく、
「水だけのシャワー」が普通だったり、安ければ安いほど「共同部屋」だ。

実際、スペイン・アンダルシアの安宿はドミトリーで最安値は¥1500ほど。
そのほとんどは「水シャワー」で、土地、気候からそれがあたりまえのようだった。

それぞれの好みや都合に合わせ、妥協できた宿に荷物を下ろすのだが、
好みや予算に合わなければ、重い荷物を背負って、宿探しは続く。
着いたばかりの知らない街を地図もなく歩くことがホトンドで、
暑い季節ともなれば悪い条件はいくらでも重なって、背中の荷物はドンドンと重くなってくれる。
足は鈍り、疲労はたまる一方だ。

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ホイアンで会ったオージー夫婦との話しを思い出していた。

「わたしたちは新しい町につくと、彼女が荷物を見張って、わたしが歩き回って宿を探すんですよ。
その間、彼女は荷物を見張って、カフェでお茶でも飲んで待ってます」

「それはいいアイデア、というか、すばらしいコンビネーションですね」

「重い荷物を持って歩かなくていいので、わたしも楽なんですよ。
それに部屋のチェックはわたしのほうがうまいんです。
前に交代で宿探しをしたら、彼女は毎回ハズレを引いてくるんで、彼女自身が自覚したようで」

「シャワーから、ベッドまでこの人のほうがチェックがキビシイんですよ。
わたしは何軒も見ているうちにどうでもよくなっちゃうみたい」

「自分で決めた安宿なのに、シャワーが水しかでない! って怒り出したこともあったね」

「宿探しは一人だと大変ですよ、ハイシーズンともなれば、満室、満室・・・ と続きますしね。
値段を聞いて、荷物降ろして、部屋を見せてもらって ・・・ って繰り返しでホント疲れます」

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「一人旅だと大変でしょうね。コツはありますか?」

「まずガイドブックに載っている宿は最初に埋まるので、早い時間帯以外は行きません。
特に日本人はガイドブック掲載の宿に集中する傾向があるので。
あとは一眼レフを抱えているので、なるべくシングルを取ります。
安いドミトリーから埋まっていくので、あまりハズレがないかな」

「なるほど。日本の人なりの苦労があるんですねえ」

「一番は今のようなオフシーズンに旅することですよ。
そうすればこのホテルみたいな出物に出会えますね」

「確かに!ここのホテルはアタリです。安宿とは思えない!わたしたちは幸運です!」

ロビーに響いた笑い声を思い出しながら、自転車を進めた。


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第十二夜 -果物- @Hue [Vietnam]

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自転車で街へ。

宿で自転車を貸し出ししていたので、早速借りて、乗り出した。
一日10,000ドン。
金額よりも行動範囲が増えるのがうれしい。

観光名所を巡る前に、河に沿って民家が建ち並ぶ普通の住宅街に入っていった。
宿で市内の地図をもらい、それを頼りに走ろうとしたが、「ない」とあっさりといわれ、お構いナシに走り出すことにした。
いけるところまで行って、飽きたら戻ってくればいいだけの話しだ。
このアタリのいい加減さも自転車の機動力ならでは。
徒歩だけの旅なら観光地+α程度しか歩けないが、自転車なら行動範囲は格段に広がる。
徒歩で迷えば疲労困憊だが、自転車ならその心配も少ない。
いっそ自転車で旅を続けたいぐらいだが、それほどの気力と体力がないことは承知している。

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走り出したもののフエの街も蒸し暑い。
自転車で心地よく風を切り・・・というのとはチョットかけ離れてます。
住宅街に珍しいものがあるはずもなく、かなりの距離を一回りした後、その間にあった普通の市場に潜りこんだ。

忙しさのピークも過ぎたのか、昼過ぎの市場は活気が昇華して、飽和状態だ。

たたまれる店、うたたね寝をする人、片付けられる野菜・・・
のんきな空気の合間に、野菜やフルーツを撮影していると、笑い声が各所から聞こえる。
しまいには指差して、アレコレ言われはじめた。
街なかの市場で一眼レフ振り回して、撮影するヤツなんかいないのだ。

「おれ?」と自分を指差すと、市場中のオバチャンがゲラゲラ笑う。
笑いのターゲットは完全に自分だった。
奇妙なカメラマン、異質な観光客、不釣合いな異国人・・・
退屈な市場の午後、「モノ笑いのタネ」である。

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写真を撮る店先ごとにアレコレ聞かれるが、ヴェトナム語がわからない。
英語で切り返しても、相手が英語がわからない。

「誰か、英語のわかる人いないの~」
大きな声で叫ぶと、また笑い声が上がった。

笑い声の中、水分補給の代わりにパイナップルを買い求める。
若い女の子とお母さんが切り盛りする店があったので、そこに歩み寄った。

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「パイナップル、1個!」

「?モッ?」

「そうそう、1個。パイナップル・モット」

「モッ?ハイ?バー?」

「1個だけ~」と指で合図する。

市場中がゲラゲラ笑う。
ベトナム語の数字はモット=1、ハイ=2、バー=3。
何個買うの?とからかわれていたのだ。

「今、食べるの!1個しか食わないよ~」

冗談も終わり、女の子がその場で新しいパイナップルを刻んでくれる。
英語を勉強しているかもしれない、と若い女の子がいる店を選んだのだが、みごとにあてはハズレた。
まったく通用しないことがわかり、日本語で押し通すことにした。

手際よく刻んでくれたパイナップルをその場で頬張ると、市場のオバハン連中はまたゲラゲラ笑っている。
ヘンなガイコクジンがパイナップルクッテイル・・・という笑い?
まあ、街から遠く外れたこんな場所には観光客はこないわな、しかも一眼レフかついで。

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パイナップルにかじりついていると、他の店のオバハンがこれも食ってみろ、と差し出す。
スターフルーツだったり、オレンジだったり、バナナだったり、まるで試食コーナー。

調子になって、唐辛子をおいしそうにかじってみた。
オバハンたちにはこれが一番ウケマシタ。

退屈な市場の午後、気付けば一時間が過ぎていた。

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第十ニ夜 -古都- @Hue [Vietnam]

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約束の時間から15分遅れでホテルに迎えがやって来た。

前日、バスの座席を予約するとホテルを尋ねられた。
「希望するならピックアップがあるけど?」という。
安いバス・チケットにそんなサービスが付いていたことも知らなかったので、喜んで受けることにした。

「他のホテルも回っての乗り合いだろうから、時間どおりはこないだろうな。
あるいは30分以上は遅れるか」と高をくくって、ロビーで朝のコーヒー。
バスが来るカフェ前までは歩いても10分ほどの距離なので、
待っている時間に歩けてしまうのだが、無料のピックアップに委ねることにした。

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置いていかれれば、笑い話にもならないが、定刻から5分遅れで出発したバスには余裕で間に合った。

トイレ休憩を挟んで11:10にはフエの街に到着。
わずか3時間で到着するはずはない、と思い込み、ドライバーやバスを囲むホテルの客引きに何度も街の名前を確認した。

フエの街であることが確定すると、客引きを避けるように、安宿街を目指した。
ホイアンのホテルで知り合ったオージー夫妻に教えてもらった情報を頼りに。

彼らが教えてくれたホテルはすでに満杯だった。
ロビーにはPCも置かれ、ネットアクセスも無料のようなのが口惜しかったが、寝どころを確保するのが先決だ。

「同じぐらいのレベルの宿ないかな?」

「隣が空いているんじゃない?紹介してあげるよ」

「それは助かる」
そういうかいわないかのうちに隣へ向かった彼のあとを追う。

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「空いているってさ」
招き入れてくれた宿は先ほどとは打って変わって、小さなサイズのアパート。

「部屋見せてください、シングルを」

「うちは4部屋しかないんだ。今日みんなチェックアウトして、シングルも空いているよ」
宿のオヤジサンのあとに従い、階段を上がる。
これって・・・。

見せてくれた部屋は清潔でエアコン、TVが備え付けられていた。
ベッドが部屋のホトンドを絞めているような部屋だったが、シャワーとトイレも付いている。

「シングルは$5だよ」

「エアコン付きで?」

「そうさ、冷蔵庫が使いたいならロビーにうちのがある」
『エアコン付き』の甘い言葉に熱がりの我が身としては即決、2泊の予定を伝えた。

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街歩きの前にシャワーを浴びる。

階段を下り、お金を払おうとすると、チェックアウトの時でいい、という。
どうもヴェトナムというのはフシギな国で、宿でも後払いが多い。
それとバックパッカー、バジェット・トラベラーが使うような安宿でも、
ドミトリー(共同部屋・寮スタイル)が少ない、というか、ホトンド出会わない。

とことん探し出せばあるのかもしれないが、カメラを抱えている身としては初めからドミトリーに泊まる気もなく、
シングルが$5で確保できてしまうので、探す気にもなっていないのも事実だ。
どうやら「ドミトリー」という形式があまりポピュラーじゃないらしい。
このアタリ「社会主義」が影響しているのかどうかはわからないが。

この宿はどうやら4階建てのアパートを改造して、民宿状態のホテルとして営業している様子。
2・3階に2部屋ずつ、計4つの客室ですべて。
なにせ1階に降りると、リビングがロビー役、家族がソファーでTVを見ているのだ。

そのため、出かけるときには子供が声をかけてくれ、
帰ってくるとオバアチャンに声をかける、というようなちょっとしたホームステイ気分。

ちょっと奇妙な状態だが、快適な寝どころを確保して、古都の街歩きに出かけた。

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第十一夜 -店内- @Hoi An [Vietnam]

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小さな家屋の小さなお店、あるいは小さな食堂に郷愁を感じる。

保全された歴史地区は小さな木造の建物が多く、古き日本を感じさせる。
何百年も建ち続けている木造建築が観光地にありがちな土産物屋さえも情感を漂わせている。
そんなことを感じるのは日本人だからだろうか。

夜になるとその情感はさらに色濃くなった。

暑さに負けて、あまりひと気のない昼間と比べ、過ごしやすい夕刻になると人影が増え始める。
陽が落ちて闇が涼しさを引き連れてくると、それに誘われるように人の数も増した。
そのほとんどが地元の人だ。

夕食をとるため、歴史を感じさせる民家を改造して営業している食堂に入った。
「食堂」と形容するには失礼なほどキレイな内装と整えられた店内。
数百年を経た木造建築を生かし、美しく生まれ変わっている。
そのサイズは「レストラン」と称するには小さい。
ヨーロッパの言葉を借りれば「ビストロ」「タベルナ」「バール」といった感じの佇まい。

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ホイアンの名物は「カウ・ラウ(Cao Lau)」(写真)。

シルクロードの交流点でもあったこの町、多くのヨーロッパ人だけでなく、
日本人も来航し、一時は1000人以上の日本人が住み、日本人街も造られていたという。
町のシンボルでもある来遠橋は「日本橋」と呼ばれ、その名を今も残している。
町の中心に日本人が造った屋根つきの橋だ。

名物カウ・ラウも発案は日本人だとか。
この地で落命した日本人がうどんを懐かしみ、作らせたとも言われている。
まあ、この手の話しはそれぞれの国に都合よく変遷されていることが多いので、話半分に受け取っておくが。

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よく語られる「世界三大料理」とか「三大XX」ってやつはホトンド世界では話題にもなってない。
日本人はよほど「3」という数字が好きなようで、なんでもこの公式に当てはめたがる。
「小便小僧」や「ハイジ」のエピソードなんて、地元の人はほとんど知らず、
こぞって記念撮影する日本人の行列に「なんでここで写真をとるのか?」なんて聞かれたことまであった。

背景にある話を学ぶことも重要だろうが、盲目的に飲み込んでしまうのはどうだろう。
自分の目で見ること、自分の肌で感じるために旅しているのに。

「三大話」じゃないが、どこの国の人にもウケるジョーク、というのがある。
よく使ったのは「日本人の嫁をもらい、中国人のコックを雇い、アメリカの家に住むのが最高の幸福」ってやつ。
それぞれの国の美点を誉めたものだが、これにはオチがあって、「ひとつズレると大変」。

「日本の家に住んで、中国人の嫁をもらい、アメリカ人のコックを雇うのはこの世の地獄」
説明はしませんよん。

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静かな店内には誰も人がいなかった。

客どころか、店員も・・・。

昼飯は少し早い時間に「コム・ガー(Com Ga)」を食べた。
ヴェトナム語でコム=ご飯、ガーは鶏肉、あの「チキン・ライス」と同じなのか?
ホイアン各所にこの文字が躍っていたのが気になり、露店に腰を下ろした。

蒸した鶏肉を鶏肉のスープで炊いたご飯に乗せて食べる「チキン・ライス」はマレー・オリジナル。
暮らしていたシンガポールでもポピュラーな料理で、これをイメージして食べたのだが、盛りが少なかったのだ。
現地の人はやはり少食?それとも自分がただの大食い? そんな量だった。
コム・ガー10,000ドン、手羽先を追加して5,000ドン。
味はマレーシアともシンガポールとも近くなく、遠くなく、普通の鶏飯でございました。

早い昼飯のせいで日没直後の夕方には腹が減ってしまい、雰囲気のあるこの店に入った。

「おーい」と大きな声の日本語で呼びかけると、家の奥のほうから、小走りで女性が現れた。

「早かった?まだ営業前?」

「OK、OK、メニューはコレ」と手際よく、メニューとお茶を出してくれた。

「カウ・ラウを1つ」

「OK」
そういうと小走りで奥に消えた。

ドンブリというには小さく、茶碗というには大きい器に盛られたカウ・ラウは、
うどんには程遠く、ヴェトナムの香りがする料理だった。
量はやはり少なめ。
早々に食べ終わったが、店の人がお茶を入れ直してくれた。

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「ゆっくりどうぞ」

追い立てられることもなく、食べ終わった店内でまた一人。
手持ち無沙汰であったもののゆっくり写真を撮ったり、店先のおじいちゃんとお孫さんに話し掛けてみたり、フシギな時間。
お茶を飲み干すと店の人はまた新しく入れてくれる。
オフシーズンだからなのか、町の真ん中、名物を供する有名な店で思わず長居した。

店内から通りを行き来する観光客を眺め、夜が過ぎていく。



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第十一夜 -郵便- @Hoi An [Vietnam]

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熱さもピークを過ぎ、また自転車を走らせた。

古い寺や旧家を覗いてはペダルを踏む。
途中、大きな郵便局を見つけたことを思い出して、小さな土産屋で絵葉書を買い求めた。

その足で郵便局に潜りこむ。
局内にはテーブルが据え付けられてあり、ペンもノリも用意されていた。
エアコンが効いたフロアで、ゆっくり筆をしたためる。
年賀状も暑中見舞いも書かない身としては、旅先から便りを綴り、無作法を詫びて近況報告。
インターネット全盛の時代になんとまあ、アナログなこと。
乱筆乱文ながら、手書きであることで日頃の無愛想に許しを請えるかな。

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そういえば添乗員時代、お客さんに「自分宛にエアメールを書いては?」なんて案内をしてました。
日頃、疎遠になってしまった人に挨拶するのには好都合です。
「旅先にいる」ってことを大きな理由に。
年賀状はあまり心に残らないものですが、エアメール、となれば多少の記憶に残るでしょう?
ちゃんとしたホテルなら、切手ぐらいは置いてあるので、退屈な夜の部屋、ちょっとした時間つぶしに。

以前は忘れた頃にエアメールが届きましたが、昨今はヨーロッパからのエアメールも4~5日後には到着する。
旅先の帰る我が身を葉書待ち―――なんて句はどうでしょう?

大そうなことを書きましたが、もっぱらご無沙汰な方相手に絵葉書をしたためている我が身でありました。

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窓口は閑散としており、係員は退屈そう。
たくさんある窓口はどれがどれやらさっぱりだが、ハガキをヒラヒラしてみせると、心得た局員が窓口を指差してくれた。
エアメールの切手はハガキ用5,000、封書7,000ドン。
ホテルで頼むと少額の切手がなかったり、日本までの金額を知らなかったり、ということがあり、
安宿ではそれ以前の問題で受け付けてもくれない。
それもこうして郵便局なら間違いなし。

この町はベトナムらしくない、そう、バイクやクルマが圧倒的に少ない。
自転車で流しても心地よく、道の真ん中をのんきに走れる。
大都市では味わえないのんびりぶり。

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町を歩いていると声をかけられた。
この国に知り合いもいない我が身としては戸惑ったが、
彼らの英語を聞いて、バスのスタッフであることを思い出した。

ヴェトナムのバスには客の荷物を乗せるのを手伝ったり、車庫入れのヘルプをしたり、
そういう役目のスタッフが乗っている。
ニャチャンからホイアンへの夜行バスにも同様のスタッフが2名、
若い男性が一番後ろの席に陣取っていた。
外国人に興味があるのか、盛んに話し掛けられ、お互い持っていたMP3を交換して聞いたり、
暗くなって退屈な車内のヒマツブシをしていたことを思い出した。

これも小さな町だからか、ちょっとした再会。
「たびたびこの町に来ているけど、ブラブラするぐらいしかやることなくてね」と、笑顔で語る。
旅する身と仕事で訪れる身とでは町の印象も異なるというわけだ。
彼らはまた夜のバスで戻るらしい。

退屈な町から退屈なバスへ。
どうせなら仕事しているほうがマシかな?

いずれにしろ仕事せずに、旅しているなんて身は罪深いか。

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第十一夜 -熱中- @Hoi An [Vietnam]

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朝、ホテルの隣の民家で貸し自転車を借りる。

小さなホイアンの町は初日でカンタンに歩きつくしてしまったのだ。
一日借りて、15,000ドン(当時$1≒¥120)、ちょっとした小旅行になるかな。

歴史地区を離れ、町の西側へ。
民家や小さな売店が立ち並ぶエリアに入り込んで行く。
小さな市場を見つけ、一角にある露店で朝食にありついた。
おかずを選んで、ご飯にかけてもらう「ぶっかけご飯」、10,000ドン。
アジアではよくある食事のメニューだ。
野菜をたくさん採れるメニューなので、旅の食事には便利なメニュー。

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食後にコーヒーが飲みたくなり、辺りを見回すと、となりの露店が開店準備をしている。
グラスを並べたり、氷を砕いたり、まだまだ店開きには時間がかかりそうだった。
忙しそうに働く店主夫妻に、ダイジョウブ?とたずねると、座れ座れ、と逆に急かされた。

その席の隣では小さな男の子が、ジュースをおいしそうに飲んでいた。

露店でコーヒーを頼むと、コーヒー豆をベトナム・スタイルのドリッパーで淹れてくれる店と
インスタントのネスカフェでチョチョイと作ってくれる店がある。
どういうわけか、ネスカフェのほうが値段が高く、また地元の人たちもネスカフェがお気に入りだ。
当然、豆で淹れてくれたほうが香りも味もよいとおもうのだけれど。
この辺は日本人と感覚が違う。

どういうわけか、東南アジアでは「ネスカフェ」ブランドが強く、もはや信奉に近い。
醤油を「キッコーマン」と呼ぶように、「ネスカフェ」はコーヒーの代名詞にもなっている。

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屋台の体もなしてない小さなこの店は、ドリッパーで淹れてくれる店だった。
グラスいっぱいに入れられた氷の上に、色づいたコーヒーがゆっくりと落ちる。
蒸し暑い空気の中で冷たいアイスコーヒーができるのをゆっくりと待った。

待っている間は忙しく働くだんなさんとおくさんを眺めたり、隣の子供を眺めていた。
男の子はどうやらこの店を切り盛りしている夫妻の子供らしく、
店の準備をする間、おとなしく座らされているらしい。
ジュースを飲み終わると、コップの中の氷を忙しそうに追い掛け回していた。

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市場を離れると、暑さは割り増しで強くなっていた。

ホイアンは熱さが強烈だ。
同じ海辺の町・ニャチャンは風が吹き抜け、心地よい海辺の町だったのだが、
ホイアンは押しつぶされそうなぐらい熱い。
方角的には北にやってきたのに、日付が夏に向かっているからか、熱さは日ごとに割り増しになる。

自転車で流していても、ひとつも涼しくならない。
熱さに負け、エアコンが効いたネット・カフェに潜りこんだ。

東南アジアはネット環境に困らない。
まだPCを買えない、という懐事情もあるのだろう、どこの国に行っても安くてカンタンにネット・アクセスを得ることができる。
反面、PCがすっかり普及してしまったアメリカでは「ネット・カフェ」自体を探し出すのが困難だ。
ラップトップ(『ノートPC』は日本語英語。英語ではこういう)やモバイルを持っていれば、
コーヒーショップや空港、ホテルなど、Wi-Fi(無線LANアクセス)でカンタンに接続することができるのだが、PCを持っていないとコイツばかりはどうにもならない。
日本からPC持参・・・となるとかなり面倒だが、アメリカはそんな風に進んでしまった。

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アジアを旅するなら、PCは持たずにネット・カフェ(といってもコーヒーはでません)でアクセスするのが手軽だ。
東南アジアなら、日本語辞書や日本語用の変換ソフトも入っているので、文字化けにも困らない。
PC担いで、故障や東南を心配しながら旅するのなら、わずかな金額で気楽。

ヨーロッパの場合、ネット・カフェは豊富にあるが、単価が高い。
一時間5ユーロ、なんてのはザラで、食費よりもかさんでしまう。
上手に探すと、町なかに無料のPCスポットやフリーのPCがあるので、それが無難。

アメリカの場合、PCは必携。
もし持参しないなら、ホテルのビジネスセンターが便利だ。
ただし有料の場合がホトンドなので、事前に調べておきましょうね。
無料で安く上げたいなら公共の図書館がオススメです。
ただし無料ですが、図書カードかIDが必要で、多少の時間制限が難点。

ホイアンの暑い昼間、
地元の人たちは昼寝の時間。
旅行者としては、ネット・アクセスの時間です。


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第十夜 -充足- @Hoi An [Vietnam]

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古い街並みが静かに佇んでいる。

保護された一定の区画にはクルマやバイクは入れず、今のヴェトナムらしさは欠片もない。
気温が上がりはじめるこの時間、通りを歩く物好きは少なく、
地元の人たちは軒先に置いたイスに腰掛けていたり、日のあたらない奥の間でくつろいでいる。
ハイシーズン・でないこともあってか、不似合いな帽子を被って精力的に動き回る観光客も少なめだ。

世界遺産に指定されているとはいえ、物静かさがチョット独特。
ホイアンの歴史地区は保護されて、時代から封じ込まれてしまったのだろう。
15分もあれば、端から端へたどり着いてしまう小さな町は「古都」という形容は大きすぎる。
「古きよき町」とでも記せばいいのだろうか。

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昼ごはんを求めて、町の東側にある市場に到着。

町の静寂とは裏腹に、市場はにぎやかで活気がある。
日々の生活を充たすエネルギーが満ちている。

入ってすぐの場所に食事場所が連なる。
「屋台」というにはあまりにもお粗末な、地面にナベやカマを並べての店開き。
日本の風呂場で使うような小さなイスが客用だ。

どこの屋台でもこの「小さなイス」があり、はじめはとまどった。
こじんまりと座り、背中をまるめて食べるスタイルが奇妙なのだ。
後々、調べてわかったことだが、ヴェトナムにはしゃがんで何かをする習慣があるらしい。
軽作業や家事、食事もしゃがんでするのがヴェトナムのスタイルなのだ。
それが変化して、外での食事は「小さなイス」が用いられるようになったらしい。
180cmのわたしにはちょっと窮屈 & 滑稽です。

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ナベやカマの中身を眺めていたら、座れ、といわれた。
その声を受けて、みなが少しづつズレ、座る場所を作ってくれる。
肩を並べて食べている人たちの間にヒザを割り入れるように座った。

素麺のような米の麺(ブン)に肉を乗せ、焼肉のタレをさらに甘くしたようなタレをかけ、出来上がり。
茹できった麺は柔らかく、野菜にからまった甘いタレが女性好みかも。
現に並んでいる客は女性ばかり、それは味のせいじゃなくて市場に買い物に来ているからかな?
余ってしまった素麺で作ってもいい出来映えになりそう、夏バテした食事にもいいかもしれない。

ブン・ティット・ヌン、10,000ドン。
おかわり! といいたいところをグッとこらえて、立ち上がった。

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繰り返し記しているが、市場はどこの国でも楽しい。
生活の勢いがあり、飾らない暮らしの力が満ちている。

米が二度採れるほど豊沃なヴェトナムは、市場も元気。
野菜は豊富で果物も多く、海辺の町なら海産物もにぎやか。

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パイナップルを上手に刻んでいる店が目に留まる。
ひとつ5,000ドン。
頼むとその場でカットしてくれる。
約¥30のデザートをゲット。

冷えてはいないが、豊潤な甘さが口の中を充たし、気持ちまで潤してくれた。



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第十夜 -情報- @Hoi An [Vietnam]

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ホトンド眠れなかった夜行バスの疲れを解消するため、昼前まで眠りを貪った。

こういうパターンではよく寝過ごして一日を台無しにする。
が、ホイアンでは腹が減って目覚め、台無しから逃れられた。
それにしても朝食べたフォー・ボー・チンはどこに行ってしまったのだろう。

シャワーを浴び、ロビーに降りるとオーストラリア訛りの英語が明るく響いてきた。

「コーヒー、冷たいやつを2つ」
年配の夫婦がロビーのイスに腰掛け、フロントマンにオーダーを告げている。

「こんにちは。オーストラリアからですよね?」

「そうですけど、なぜわかりました?」

「英語がオージー訛りですので」

「というあなたは? アジアのどこからで?」

「日本です、日本人の英語に聞こえないのはシンガポールで覚えた英語だからです」

「そうですか。どうりでユニークな英語を使うと思った。わたしたちはフエから南下してきたところですよ」

「いいですね、わたしはニャチャンから夜行バスで早朝に到着して、仮眠してたところです」

「起き抜けじゃ、暑い中、歩く元気は出ないのでは? 
 どうです、お急ぎじゃないなら一緒にコーヒー飲みませんか?」

「ランチに出かけようと思っていただけなので、ご一緒します。わたしもカフェ・ダーを」
小さなテーブルを挟んだ隣のイスに腰掛け、アイス・コーヒーのオーダーを告げた。

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「ヴェトナム語ができるので?」

「いえ、コーヒーの頼み方だけ、わかるんです、『カフェ・ダー』って」

「あはは、なるほど! 夜行バスはきついでしょ?」

「ですね。旅程を節約するために乗りましたが、キツイです」

「わたしたちはホイアンの後、朝出発で昼間を費やしてニャチャンに向かう予定です。
 ニャチャンはどうでしたか?」
同じ宿に泊まったもの同士はこんな風に情報交換を始める。
自分が来た道、見つけた宿、出会った食事・・・
実体験が伴った最新の情報交換はガイドブック以上にホットだ。

「同じ宿」にいるということは予算的にも同じレベルの旅、
通じて旅のレベルも似たスタイルになり、お互いの情報が生きたものになる。
大手チェーンのホテルに泊まっている観光客が、
$5の安宿に泊まって旅している者の情報を耳にしても得るものは少ない。
レストランで食事し、専用車で観光する人たちは、
屋台のうまい飯や少しでも安い両替屋のネタはあまり必要としないからね。

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拙い英語でできるだけニャチャンの雰囲気を伝えた。

地元の人たちに人気のフォーの店、住所もないポークチョップの店・・・
行くか行かないかは情報を受け取った者に選択権がある。
フォーの店の住所を知りたがった彼らには、持っていたニャチャンの地図に店の場所を書き込んで渡した。

「ホイアンのあとはどこへ?」

「ダナンは商業都市で見るものがないらしいので、フエまで行ってしまおうと思っています」

「フエは安い宿がたくさんありますよ。安宿街になっているエリアがあります。
 あー、地図もホテルカードも捨ててしまった!」

「それは残念」

「エリアの目印を教えますよ。ホテルの名前もわかるので記しますね。
 もしそこにいくなら、そのホテルのそばに『50セント』で朝食が食べられる店があるんですよ」

「50セントですか?!?! USドルの?」

「驚くでしょ?朝だけのサービスでこの値段ならトーストとコーヒーだけでも十分だけど、
 そのレストランは玉子とサラダまでつくんです。
 私たち夫婦は毎日通ってましたよ。50セントですよ、50セント!」
だんなさんがその安さにやけに興奮していた。
もちろん悪い情報じゃないので、ホテル同様探して歩いてもいい。

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「ヴェトナム式じゃなくて、ウェスタン・スタイルの朝食ですからね、
 ちょっとしたホテル並みの朝食ですよ。
 あ~、でも店の名前を覚えてない・・・。
 さっき教えたホテル街を歩いていれば、きっと見つかりますよ」
旅先はこういう突発的な情報がおもしろい。

「ホテルの情報もですが、こういう情報はうれしいです」

「いやあ、お互い様ですよ。わたしたちは『バジェット・トラベル』ですから、節約して、ゆっくりと旅を楽しんでます」

「旅をするために彼を60歳前に引退させたんです。『足』が利くうちに」
それまで黙っていた奥さんが口を開いた。

「わたしはまだ若いからいいけど、この人は年だし、太り始めたし・・・
 引退してから動けないんじゃ、なにもできないでしょ?
 わたしが旅が好きなので、早めに引退してもらったんです」

「その発想がすごいですね。日本人はあまりそういう考えには至らないなあ」

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「繰り返しいろいろな場所に行かれるように『バジェット・トラベル』、いわゆる節約した旅をしているんです。
 奥さんは安い宿でもいいから、いろいろな場所を歩き、旅を続けたいというので。
 今回の旅は3週間ほどの予定でインドシナを巡ります」

「わたしも3週間の旅ですよ。そういう点だと『バジェット・トラベラー』なのかなあ?
 日本にも『バジェット・トラベル』という言葉はありますが
 『バックパッカー』という言葉のほうがポピュラーですね。
 あ、でも奥さんの言い分が強いのは、日本の夫婦も同じですよ」

「あははは、それは世界共通のルールかもしれない!!」

昼下がりの風が吹き抜けるロビーに明るい笑い声が響いた。


オリジナル画像はコチラ↓の「Stocks」欄にUPしてあります。
写真販売サイト http://pixta.jp/@delfin   覗いてみてください!


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第十夜 -朝食- @Hoi An [Vietnam]

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夢うつつで停車した車内を眺めていると、乗客がまばらに降りはじめていた。

どこの町? と声もかけ損ね、運転手が掃除を始めている。
時計を見ると6:30だ。

「お前は降りないのか?」

「どこよ?? ここ??」

「ホイアンだよ、みんな降りたよ」

寝ぼけた頭で、礼をいい、荷物を持ってバスを降りた。
トランクから降ろされる荷物を待つ客に割り込み、自分の荷物を受け取る。

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朝早すぎるせいか、カフェの前に止まったバスの回りに客引きはおらず、
カフェの並びのホテルだけが、バスから散らばった客に声をかけていた。
値段を尋ねると、けっこういいお値段。
やはりバス・ストップの目の前の利便性が値を上げている様子。

安宿は宿泊客が去って、次の客が部屋を確保することができる。
朝飯前のこの時間じゃあ、ほとんどの客は眠りの中だ。
宿の情報も持っていなかったので、しらみつぶしに訪ね歩き、相場をつかみ、
朝食を食べて、チェックアウトを待つとするか。

値段を尋ねては隣の宿、尋ねては隣の宿と、歩き回った。

西の外れ、少し離れたところのホテルにたどり着く。
これまでいい宿がなかったので、ここでだめなら町の反対側だ。

「シングルの部屋いくらかな?」

「ノーエアコンなら$7、これがミニマム」
バックパッカー相場のシングル$5からすると高めだが、ホテルの外観は大きく、体裁からすると妥当か。

「その部屋、見せてもらえる?」

「早朝のバスで発った部屋が空いているから、ダイジョウブだよ」

フロントマンのあとに従い、期待しないで覗いた部屋は中級のシティホテル並みのサイズ。
古いながらもダブルサイズのベッド、TV、冷蔵庫、なんとバスタブまで備わっている。
寝るだけのバックパッカー宿とはちょっと違うようだが、かなり驚き値段。

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「エアコン付きの部屋はないの?」

「+$5で同じサイズの部屋があるよ。ただしまだ寝ている客がいるから、彼らが出た後の昼には入れるかな」

部屋のサイズと冷蔵庫が気に入り、エアコンなしのこの部屋に決めた。
掃除も行き届いていたが、ベッドメイクがまだらしい。
出かけている間にすぐにキレイにする、と言ってくれた。

部屋に荷物を残し、朝食を食べに出かけることにした。

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宿を探しながら、途中でうまそうなフォーの店に目をつけていた。
若いお父さんと息子で切り盛りする店。
バイクで乗りつけ、フォーをかきこみ出かけていく人、制服のままフォーを食べている人、地元の人たちが出たり入ったり・・・
みなさん、平日の朝食も外食なのですね。

席に着き、「フォー・ボー・チン」と一声!
店先の調理台で、お父さんが手際よく生の牛肉を刻み、麺の入ったどんぶりに乗せる。
受け取った高校生ぐらいの長男が即座に熱いスープをかける。
中学生ぐらいの次男がトレイに載せて運んでくれた。
この家族像は勝手に描いたものなので、ただの従業員かもしれませぬが。

フォー=米の麺、ボー=牛肉、チン=生 という解釈でいいのかな?
熱いスープで牛肉に火が通り、半生状態で香りがいい。
麺をすすりながら眺めていると「フォー・ボー・タイ」というオーダー、
「タイ」になると、麺を茹でるナベで牛肉を茹でて、乗せてくれる。

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スープがおいしく、麺もしゃきっとしていて、アタリのお店!
これなら毎日通うかな。
寝不足の夜行バスで疲れていたが、ホテルも朝食もアタリを引いて、エネルギーが戻ってきた気がする。

といっても、満腹になって、寝る気満々で意味がないのだが。



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