開け!その眼を @Bangkok -完- [Thailand (Bangkok)]
渋滞が名物のバンコクも、さすがに夜明け前はその名物もない。
空港への一般道は高速にも劣らない広い道路なので、
空いていればこちらを使える。
わずか40Bだか、高速料金も節約できるわけだ。
雨は前方を白く叩くほど落ちてきたり、急に降り止んでみせたり、
スコールらしい気まぐれさを見せている。。
容赦ない激しい雨がフロントガラウを叩くと、
さながら洗車機の中にいるかのようで、
ワイパーを最速にしても、速度を落とさないとならないほどだ。
オンボロ・タクシーはワイパーもヨレヨレで、
激しい雨をガーゼで撫でているような有り様だ。
運転手は速度を落とし、前方を睨んでる。
たぶん、溺れそうなので、身を乗り出して、息継ぎをしているのだろう。
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運転手の肩越しにメーターを見ると30kmを切っていた。
「おいおい」
極端なノロノロ運転にプレッシャーをかけるわけではないが、
後部座席で思わず、声が出てしまった。
空港までの時間が気になったが、
変にあおって、スコールの中、
タクシーでオリプル・アクセルも踏みたくなかった。
なるべなら生きて、空港に着きたいのだ。
空港に近づくにつれ、雨は収まりをみせた。
これでようやく巡航スピードに戻るかと思っていると、
今度は運転手の挙動がおかしい。
ヤケに首を回したり、肩を揉んだり、
ハッカ入りのリー・オイルを塗ってみたり、
頻繁に水を口にしたり、
その動きは明らかにアヤシイものだった。
『コイツ、眠いんじゃないのか?』
そう、思っていたが、連れの女性が不安がるといけないので、
今度は口にしなかった。
運転手に話しかけるにも、タイ語はわからないし、
英語は理解してもらえていない。
こうなったら、後部座席でニギヤカにやるしかない。
午前4時過ぎのタクシー・ドライバー。
ヘンなクスリをやって、
フワフワしている状態じゃないことを願うだけだ。
白々しく、空港に着いてからの手順や免税店の話し、
日本に帰ってからの仕事の話などを、
ムダな大声で話しはじめた。
隣に座る女性を不安がらせたくはなかったので、
自分だけが急に大声で話しをしている。
イキナリ酔っ払いでもしたかのように、饒舌に。
運転手の動きとクルマの速度がアヤシクなると、
無理に大きめの咳払いを繰り返した。
運転手はそれに反応して、面を上げ、速度を上げる。。
『おいおい、本気でヤバイな。
クスリじゃなくてよかったけど』
見覚えのある大きな右カーブを曲がる。
スワンナプーム空港まであと少しだ。
こちらが風圧で揺れるほどのスピードで、
次々と「普通の」タクシーが追い越していく。
「もうすぐつきますねええ~」
意味のない車内アナウンスを大声で告げる。
声に反応して、運転手のカラダがピクンと動いた。
隣の女性は不思議そうにこちらを見ている。
こうなるとただの「早朝バカ」、
あるいは「朝方ののヘンな人」だ。
「バカ」を乗せて、出発ホールにタクシーは滑り込んだ。
メーターの数字は「202」を示していた。
200Bを差し出すと、運転手はなにも言わず、受け取る。
2B足りないことに文句をいうよりも、眠くて上の空なのだ。
どうやら生きて飛行機に乗れるらしい。
6月のタイ紀行 -完-
この旅に伴った本
そして今夜もエースが笑う/山際淳司
雨の日には車をみがいて/五木寛之
知的な痴的な教養講座/開高健
活字学級/目黒孝二
ゴハンの丸かじり/東海林さだお
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あー、どうなってしまうのだろうと話に引き込まれてしまいました。無事でよかったです。
by れもん (2010-10-31 19:49)
>れもんさん
無事にたどり着きました(笑
けっこう酷くて、ぐわんぐわんに眠たかったみたいなんですよ。
ハイウェイで40km以下に速度落ちちゃうし~
いやはや、でした。
by delfin (2010-11-01 08:23)