祖母の味 @Seoul [South Korea (Seoul)]
7日目、雪雲がすべてを浚っていったらしい。
パリッと冷えるが、肌を裂くような冷たい風もなくなり、
空も晴れ渡って気持ちがいい。
午後になると気温も上がり、街歩きもラクになった。
旧正月らしさも消えてきた頃、
フト気になって、宿のスタッフに問いかけた。
「韓国の正月って、かならず食べるものとかあるの?」
「あんまりないですねえ」
「日本じゃ、『雑煮』といってモチ(トック)を
スープに入れて食べる習慣があるんだよね。
それは地方によって、醤油味だったり、味噌味だったり。
だから正月になると東京に来ている人は、
田舎の雑煮の味を懐かしがったりするんだ」
英語交じりの説明なので、なんともまどろっこしい。
「う~ん。そこまでのモノはないですけど、
正月はやっぱりトックやギョーザを食べますねえ」
「へええ。スープに入れるの?」
「そういう家もありますね。基本はボイルして食べます。
餃子を作るのはお嫁さんが大変なので、
最近は餅を入れてチゲにする家が増えているみたいです」
「へえ、時代だな」
「買ってきた餃子じゃ、
ハラボジ(祖父)やハルモニ(祖母)に怒られますからねえ」
「正月だからコレ食べたい! って思うものはないの?」
「あんまりないかなあ。
それとは違うけど、ハルモニが作ってくれる特製ドリンクがあるんですよ。
今回、もらって帰ってきたんですけど、試してみます?」
そういうと冷蔵庫からペットボトルを引っ張り出してきた。
「これ、干し柿のジュースなんです。
そこにアレと漢方が入っていて、
子供の頃からノドにいいから、って飲んでいたんです。
冬になると飲みたくなるので、作ってもらったんですよ」
アレ、という部分は英語で出てこなかったらしく、
中国語が得意なカレはメモ書きに「桂皮」と書き綴った。
「へえ、シナモンが入っているんだあ」
グラスに入れてくれた飲み物は薄い紅茶のような色をしていて、
飲むとシナモンの香りが鼻に駆け抜け、
後から柿の甘さが口に広がった。
「え、これ手作りドリンクなの?」
「そうです、バアチャン特製です。
たぶんうちだけですけどね」
正月の味は浮かんでこなかったが、彼の実家の風景が思い浮かんだ。
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