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第六夜 -越境- @Moc Bai [Cambodia]

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午前中の充分な睡眠とプノン・ペンでの思わぬ出会いですっかり眼が冴えていた。

首都を出発してからしばらくすると、激しいスコールがバスを叩きはじめた。
車窓にはただ白い水の幕が見えるだけで、退屈しのぎの風景は幕の向こう。
また文庫本に目を落とすしかなかった。

15時過ぎにバスの動きが止まった。
スコールのせいで視界が悪くなり、事故でもおきたか、と想像をめぐらせたが、
車内の乗客はあまり騒ぎ立てもしない。

事故渋滞も日常茶飯事なのだろうか、と動かないバスにヤキモキしはじめると、
周辺には同じような大型バスやトラック、トレーラーが列をなしていた。

そこはターミナルのようなところで、クルマは順番待ちをしていたのだ。
大きな河の手前で、河渡しの船を待っている列だったのだ。

カッパを着込んだ職員が乗り込んでくる。
書類を提出したのか、チケットを購入したのか、わからないが、カッパ姿の彼が降りると、バスはゆるゆると動き出した。

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剥き出しのデッキに大型バスや大きなトラックがすし詰め状態で乗り込んでいく。
クルマが乗り込むたびに船が大きく揺れる。
積めるだけクルマを積み込むと、船はモソモソと動き出した。

濡れて汚れた窓からは、隙間なく乗り込んだクルマとオンボロ渡し船の一部しか見えない。
スコールは相変わらず激しく、船上はキシんだ音と揺れが伝わってくるだけだった。

-沈んだら、ニュースになるのかな?
そう思いつつ、バスの座席に座ったまま、観念するしかなかった。

-プノン・ペンから2時間弱南下して、河を渡った?
後ろの席でくつろいでいたガイドとアシスタントに尋ねる。
「これって、メコン川?」

「そうです、メコンです。雨でなんにも見えませんけどね」

「雨はいいけど、沈まないことを祈るよ」

「ダイジョウブですよ、いつも渡っているから」
そういうと笑いあった。

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ニュースのネタになることもなく、河を渡り、バスはまた順調に飛ばし始めた。

時計の針が17時を回るとガイドの説明が始まった。
「もうすぐボーダーです。パスポートを用意してください」
そういうとガイドは慣れた手つきで乗客のパスポートを集めて歩いた。

バスを降り、名前を呼ばれるのを待つ。
呼ばれた者はパスポートを受け取り、バスに戻る。
出席をとるような手軽さで全員が車内に戻り、カンボジア出国完了。
バベットでの出国手続きはこれでオシマイ、カンボジアともお別れだ。

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続いてバスは進み、ヴェトナム入国手続きへ。

同じようにガイドがパスポート集め、入国手続きを一括して申請してくれる。
モクバイの入国管理事務所はなにもない、ベンチもなく、その場所でただ待つだけだ。
ヴィザの関係だろうか、サスガに入国続きは40分ほど待たされた。

ゴルフバッグを抱えた5~6人のオヤジサンが話し掛けてくる。
同国人と思ったのだろう、ハングルだ。
あまりに退屈な空間だったので「サランヘヨ~(愛している)」とでも答えようかと思ったが、
「組合の人」と思われても困るので「ケンチャナヨ~(ダイジョウブ)」と答えてみた。

「日本人?韓国語うまいね~」
ヴェトナムとカンボジアの中間で韓国語を誉められてもウレシくないが、
この「ケンチャナヨ」がオヤジサンたちには大いにウケている。

しまいには周りにいたニュージーランド人やイタリア人、カナダ人、ダレカレかまわず、ハングルで話し掛けはじめる。
「なんだあ、ハングルわかんねえの? こいつはしゃべれたぜ」とこちらを指差す。
二言三言、口にしただけで思いっきり身内扱いだ。
それでも退屈で少し緊張した空間がヘンなオヤジサンたちのおかげで少し和んでいた。

そうこうしていると、名前を呼ばれ、入国手続きのカウンターへ歩みを進める。
IDを照合し、チョップ(ハンコ)をもらえば、ハイ入国。

どうやらバス会社やツアー会社のガイドが顔が利くらしく、煩雑な入国手続きを仕切っているのだろう。
会社の契約か「ソデノシタ」なのかわからないが、うちのバスは一番手早く、助かった。

なにかと厄介な陸路の国境なのだが、国際路線の直通バスを頼んだおかげで、かなり気楽。
車内の快適さ、時刻の正確さ、ガイドのサービスや国境のアシスタントがあることも考えると、
「アタリ」のチケットを買い求めた気がする。

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国境の町・モクバイから2時間もかからずに、バスはクルマのヘッドライトがあふれる町にたどり着いた。
19:40、ホー・チ・ミン・シティ到着。

雨の向こうできらめくヘッドライトの主はクルマではなく、おびただしい数のバイクだった。


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コメント 5

quartier

すごいバイクの数ですね。
何年か前にアメリカに行った時、全くバイクを見かけず
びっくりしましたが、このバイクの数にも驚きます。
これが何年か後には車に代わるのでしょうか。
日本にもこういう時代があったのでしょうか。
バイクと天秤棒が同居しているのですね。
by quartier (2008-09-22 21:57) 

ukiyogumo117

ワオ~バイクの大群だ~!
by ukiyogumo117 (2008-09-23 22:56) 

delfin

大群です。
朝夕のラッシュ時は車道だけじゃなく、歩道もあふれてはしってます。
基本、信号もまもらないので、警官がいない交差点は無法地帯です(笑
by delfin (2008-09-27 00:14) 

Survive in Cambodia

カンボジアでは、果物が色鮮やかでとてもおいしいです。
by Survive in Cambodia (2012-07-25 04:04) 

delfin

>Survive in Cambodiaさん

東南アジアのフルーツは日本の昔の果物の味がします。

でも富裕層には日本のあま~い果物が人気だとか。。。
by delfin (2012-07-25 23:04) 

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