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第二夜 -入国- @Poipet [Cambodia]

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VISAをゲットし、晴れて入国。

うるさいタクシーの客引きを振り払いながら、カンボジア側の国境の町・ポイペトへ歩みを進めた。

カンボジアの人々はタイの人よりもさらに色が黒く、目が鋭い。
無表情の面持ちが、異質の旅行者に突き刺さってくるようにも思えた。

シュムリアップ行きのバス乗り場はどこだろう?
両替するところは?

バスの待合場所かと思った場所にはなにもなく、
人もいない空間で扇風機が風をかき混ぜている小屋を通り抜ける。

午前中というのに気温は高い。
不安と重い荷物の合体技なのか、背中には汗がつたっていた。

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歩みを進めた道の反対側には、ハデなカジノが軒を連ねている。

賭け事はご法度の仏教国・タイからの日帰り客を当てこんでいるのだろう。
できたばかりのバカデカイきらびやかな建物がホコリっぽい国境の小さな町にまったくマッチしていない。

タクシーやピックアップトラックのドライバーと値段交渉をしつつ、
相場や所用時間を確かめていると、制服姿の男に呼び止められた。

「?」

パスポートを見せろ、という。

-アヤシイな・・・

国境、制服、旅行者、パスポート・・・

-なにやらふっかけられるのか?

-VISAなら取得済みだぜ、少し高い金を払って。

後進国の国境には、無知な旅行者を狙って、
偽VISAで金をたかる男や係員を装ってダマしてくる輩は名物のようにいる。
こいつもそれか?

差し出したパスポートのページをめくると、こちらへ来い、という。

「VISAならあるじゃないか!」

「いいからこっちへ」

パスポートを持っていかれてしまったため、やむなく制服の後についていく。

トラブルを察したのか、タクシー・ドライバーが周りを囲む。
頼んでもいないのに物見遊山の人が集まってくる。

ついていった場所は、さっきのバス待合所もどき。
制服は机の引出しを開けた。

-罰金でも取られるのか?!

「これ、記入して」

「?」

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制服が差し出した紙は、EDカードだった。
出入国時に記入するアレだ。

「そこで入国の日付を押してもらって」
無表情に小さな窓口を指差す。

「チョップ?」

「そう、キミはVISAを取っただけで、カンボジア入国の手続きをしてないんだよ。
そこで入国の日時をチョップしてもらわないと」

「!」


ここが出入国の管理所?


そこは汗をかきながら通り過ぎた場所、
扇風機が熱い空気をかき混ぜていた小屋だった。

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