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第二夜 -移動- @Poipet [Cambodia]

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「ミニバスやピックアップ・トラックは、昼にならないと出発しないよ」

入国手続きを済ませ、バス乗り場を探していると
英語ができるタクシー・ドライバーに話しかけられた。

彼は客引きの声をかけてきたのだが、
安いバスを探そうとするわたしに引導を渡そうとしているのか、さびしい情報を提供してくれた。

「シェムリアップに行くタクシーなら$50、あとは午後になるのを待つしかないね」

値切ればもう少し値段が落ちるかもしれないが、いずれにしろ、バスやトラックより数倍は高い。
かといって、午後になるのを待っていては、朝一番にバスに飛び乗った意味がなくなる気がしていた。

ひとまず両替所を探し、コーヒーでも飲みながら考えるか、とシツコイ客引きを振り払いながら、歩みを進める。

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国境の町・ポイペトには「町」といえるほどの設備はなく、
出来上がったばかりの巨大なカジノとホコリっぽい道路わきに並ぶ露店のギャップが奇妙に映るだけだった。

「$30でどうですか?」

気弱そうな男に唐突に声をかけられた。

「なにが$30?」

客引きの多さと、VISA窓口係員の態度で少し気分が荒れていたのだろう、強い口調の英語で切り替えしていた。

「タクシーです。シェムリアップまでです」

「一人で$30?ムリだね、払えない」

「シェアする人がいれば$10でもいいです。4人乗れますし」

「$10?」
破格の数字に思わず、食らいついてしまった。

「シェアする連れはいないよ。それにこの時間だと、ほかに観光客はいないよ」

「なら、あなた一人で$20でどうですか?」

彼が手を添えるタクシーは古い日本車、エアコンが効いているようだ。

ミニバスやピックアップ・トラックなら、もっと安くいけるだろうが、
4時間、後部座席を占有し、エアコン付きでドライブするのは悪くない。

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「いま、VISA代を払ってしまって、キャッシュがないんだ。
到着してから両替して、それから支払うことしかできないけど、それでいいなら、乗るよ」

気弱そうな彼は、うれしそうに微笑む。
「問題ないですよ、乗ってください」

最終的にこのクルマに決めたのには、ほかにもワケがあった。
助手席に女性が乗っていたからだ。

タクシーやバンの運転手が突如、強盗に変貌、なんてことはアジアでは珍しくない。
ひとまず女性連れなら、強盗などに豹変することもないだろう、という目論見。
運転手の嫁さんだろうか?
カップルで強盗?
それはないだろう?


トラックの荷台よりは、高い値段だが、確実に先へ進む足を確保した。


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