引き篭りの時間 @Seoul：風に吹かれて：SSブログ

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引き篭りの時間 @Seoul　[South Korea (Seoul)] [編集]

朝からいい天気のせいか、空気が乾いていて冷たい。

１０月２４日の日曜は日が高くなるにつれ、
過ごしやすい心地よい陽気になった。

到着時からやたらと警察官を目にするので、
気になってスタッフに聞いてみると、答えは明快だった。
「韓国でＧ２０が行われているから」ということ。

重ねてスタッフの一人が通訳ボランティアとして、
釜山の国際会議場、その渦中に詰めているらしい。

「超」学歴社会で有名な韓国だが、
就職活動においても「どんなボランティア経験を積んだか」ということが、
経歴として重要なポイントを占めるらしい。

中国語が流暢な彼はその「経歴」を積むため、
通訳ボランティアにエントリーして、
２週間ほど会場で缶詰になっているようだ。

「そういえば今日あたり、帰ってくるんじゃないかなあ」

そんな話を聞きながら、結局出かけもせず、宿で読書の一日を過ごした。

いつも５冊ほど文庫本を持ってくるのだが、
今回は出かける気力が薄くて、読書漬けの日々。
５冊など読み切ってしまうイキオイだ。

夕方、オフィスが急に騒がしくなった。

見慣れないスーツの男がいた。

「おお～！　来てたんですね～」

声を上げたスーツの主は中国語が流暢な彼だった。

「Ｇ２０から帰ってきました。
　セキュリティの問題で会議場から出られないので、辛かったです」

「さっき、その話しをしていたんだよ。
　『いつ出所するんだろうね』って。
　あるいは帰りに故郷の釜山に寄ってくるのかな、ってね」

「いや、面接のアポがあるので、ソウルにすぐに帰ってきました。
　おなかが減りました、夕食食べましょうよ」

「国際会議ならホテルでいいもの食べられたんじゃないの？」

「いや、ボランティア・スタッフは毎日ランチ・ボックスです。
　レセプション・パーティのときだけ、
　終わった後に豪華なブッフェが食べられましたけど、
　ランチ・ボックスのサンドウィッチはもういいです」

「じゃあ、カレーライス作ろうか。
　いつも最終日に作る『日本式カレーライス』」

「サンドウィッチじゃないなら、なんでもいいです」

「なんでもいい、とかいうヤツはピザの出前だな」

「ダメデス、ダメデス。カレーがいいです」

「安心しなよ、ガールフレンドじゃないから、
　それでスネたりしねえよ」

「やった！　みんなでカレーを食べましょう！」

「じゃあ、オモニは買い物に行ってきます。
　その間にメシ炊いといてな」

ダラけた日曜日、初めて宿から表に出た。

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