Mistake @LONDON [London (U.K.)]
ステアリングを切りながらもドライバーの口は動き続けた。
「東京かあ。長いフライトなんだろ?」
「そうですね、半日費やしますよ」
「ロンドンはどうだった?」
「何回か来てるけどこんないい天気は初めてです」
「だろ?この季節は最高さ。暑いさなかに飲むエールがうまくてね」
「でしょうね。大陸みたいな陽気なので、ロンドンじゃないみたいですよ」
「一番過ごしやすいときだね。
みんな表に出るから今日みたいな日曜は道も混んでいるのさ」
時計を見ながらの会話は気もそぞろだった。
それでも彼にとって、日本人が珍しいのか、短い時間に質問が繰り返された。
そうこうしているうちに見覚えあるホテルに繋がる通りに入った。
「メーターも時間も足りたようだよ」
ホテル前の車回しに入り、メーターを起こしながら、運転手がいった。
メーターは6ポンドと数ペンスを示していた。
「助かりました。でもチップの分のポンドがないんです」
「いいよ、短い距離だから」
「じゃあ、7ポンドで釣りをチップにしてください」
「悪いね」
「いえ、助かりました。本当はもっとお礼をしたいけど」
「気にすんなよ、これで十分だよ。それより長いフライト、気をつけて」
「ありがとう」
キャブの扉を閉めた時、時計は出発時間を指していた。
ホテルのロビーに飛び込むと添乗員さんが待っていた。
「ごめんなさい、お待たせしてしまいました」
「いえ、時間通りですよ」
「いや、出発時間ですから」
「そうですね。でも時間には来るだろうと心配はしてませんでした」
「いや、最後に迷惑をかけてしまいました」
ベル・キャプテンから荷物をピックアップし、ツアー・バスに飛び乗った。
「みなさん、すみません。お待たせをしてしまいました」
すでに席に着いているツアー参加者の面々に叫ぶように告げて、頭を下げる。
「時間通りですよ」
「問題ないよ~」
「空港までは余裕あるし~」
後ろのほうからそんな声が聞こえた。
それでも待たせてしまったのにかわりはない。
バスは静かに走り出した。
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間に合って目出度し目出度し^^。
地下鉄での移動、思いがけなく時間がかかり、飛行機の時間に間に合いそうもなくなり冷や冷やしたことを思い出しました。
(このときは飛行機が遅れて助かりました、ヒースロー空港で)
by 斗夢 (2009-09-01 08:04)
間に合ってよかったですね。
私は、4月か5月に記事を書いてますが、空港の保安検査場の前で居眠りをしていて、気付いたら出発15分前で大慌てしたことがあります。
それ以来、乗るとしても飛行機みたいに必ず終点まで乗る乗り物以外では眠らなくなりました。
by 北海道大好き人間 (2009-09-02 20:13)
>斗夢さん
めでたし、だったのでしょうか・・・
最後に「しでかして」しまった気分で。
わたしもロンドンの地下鉄でやられたことあります。
http://delfin.blog.so-net.ne.jp/2008-04-06
前々回の帰り、車両交換やら行き先変更で、
心配して早めに出たにもかかわらず、
ヒースローのカウンターに着いたら、すでにしまりかけ。
担当の女性は帰り支度して、カウンターにカバン載せていて・・・
あせりました、あれは。
飛行機出る一時間前でしたから・・・
by delfin (2009-09-04 16:34)
>北海道大好き人間さん
わたしも用心深いのですが、その国に慣れてしまうと、
地下鉄は寝過ごすは、バスは乗り過ごすは、いろいろあります。
まあ「それも旅」と思っているので、その状況を楽しんでます。。。
by delfin (2009-09-04 16:35)