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第十五夜 -団体- @Ha Long Bay [Vietnam]

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夜通し降り続いた雨は、朝になるとすっかり上がっていた。

7:30のピックアップ時間に合わせ、ロビーに下りる。
屋根をしこたま叩いていた大粒の雨が、台風の影響かいつものスコールかはわからなかったが、
ホテルの前の通りの路面はきれいに洗われ、空はきれいに晴れ渡っていた。

8時を5分過ぎてようやくお迎え登場。
頼んだコーヒーはすでに飲み干していた。

近くのホテルで小型のバンに乗り込むとすでに先客がシートを占めている。
一人分のスペースを譲ってもらい、出発進行。
車内の面々が今日のツアーのお仲間だ。

ガイドが英語で説明をはじめる。
ハノイの歴史からハロン湾の見所を話しはじめてくれたが、訛りがひどく、説明はぞんざいだった。
滑舌も悪く、車内全体は彼の説明に疲れはじめていた。
彼は「ハノイ」という際に「カピタル・オブ・ベトナム」という単語をつけるのが自慢らしく、
(訛っていてキャピタルがカピタルに聞こえる)
「ハノイ」という単語が登場するごとにそのフレーズは繰り返され、車内をうんざりさせていた。

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知らない同志が集うツアーは、空気の作り方が重要だ。
それを導くのはガイドや添乗員、もちろん大いに盛り上げてくれるのは客の側だ。
同じ場所やツアーで巡ってもお客さん同士が牽制しあっていると、盛り上がりに欠ける。
添乗員やガイドがいくら発破かけても空回りするだけだ。
逆にガイドの質が悪くてもグループは盛り上がらない。
説明が下手でも人柄がよかったり、ぞんざいでもジョークがうまかったりと、
どんなガイドがベストなのかは状況とお客さん次第だ。

残念ながら「安いツアー」に申し込めば、ガイドの質は落ちる。
「旅」において「安い」ということはなにか理由があるからだ。
「入場料」「移動コスト」などはあまり削ることができないので必然、削られるのは、
パッケージ・ツアーの場合;
・ビジネスマン需要があるので直行便は高いため、経由便
・ホテルは街の中心は高いので郊外
・ホテルの食事は高いので、夕食は外のレストラン。移動コストを含めてもこちらが安い
・英語ガイドのみ(ただし小さい町は日本語ガイド自体がいないことも多い)
・「自由行動」や「自由食」という名目が多い(人件費がかからない)
オプショナル・ツアーの場合;
・送迎が乗合い(専用車は高い)
・食事がつかない
・土産店や免税店に立ち寄る

長い間、ツアーコンダクターとして、グループを切り盛りしていたが、
こうして客の側として乗り込む経験が実は少ない。
自分のツアーのときはどうだったのかなあ、とあまりほぐれていない車内の空気のなかで考えていた。

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バンは「キャピタル」の喧騒を抜け、高速道路をひた走っていた。
窓の外には田園風景が広がっている。
街なかで観光するよりも、こうして郊外や街外れの普通の風景を眺めているのが好きだ。

そんな車窓に浸っているとバンは民芸品や土産物を扱うコーヒー・ショップで停車した。
時計を見ると2時間、走り続けていたことになる。
土産物店を借りてのトイレ休憩。
オキマリの「ツアー立ち寄り」、街なかや高速のトイレを使うよりは客にとっては便利だろう。
水やスナックも買えるし、清潔なトイレを心地よく使える。
ドライバーには休息が必要だし、座っているだけの車内から開放されることも客にはうれしい。

民芸品にもコーヒーにも興味が湧かず、通りに出てみた。

民家が立ち並び、所々に店がある。
トイレ休憩の時間がまだあったので、
果物を置いている八百屋の店先などを冷やかしているとカキ氷を売っている店があった。

店先でオバチャンがお茶を入れている。

のどが渇いていたわけではなかったが、なんとなくその店に没入したくて、オーダーしてみた。

「カフェ・ダー(アイス・コーヒー)ください」

ベトナム語でそう告げると、オバチャンはオヤ?という顔をした。
見るからに外国人のオトコがベトナム語で注文したのが意外だったのだろう。

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「カフェ・ダーね」

氷がたくさん入ったグラスの上に金属製のロートを乗せ、お湯を注ぐ準備をしている。
そのオバチャン越しにワラワラと西洋人のグループがやってきた。

「これ、なんだろう?」

続々と到着しているツアーバスの別の客だろう、
手動のカキ氷用機械をもの珍しそうにみつめ、写真を撮っている。

「シェイヴィング・アイスのマシンだよ」

英語でそういうと驚いた表情でこちらを見た。

「あれ、旅行者の人?」

「そう。ベトナム人じゃないよ(笑)。アイス、頼みたいの?」

「シツレイ(笑)。頼んでもらえるかな?」

オバチャンに声をかけるといそいそと氷をセットして、手際よくカキ氷を作り上げた。

「う~ん、おいしいね~」

男女5人の金髪がカキ氷を食べて声を上げた。
オバチャンも思わぬ売り上げで意気揚々、満面の笑みだ。

「どうでもいいけどさ、おれのカフェ・ダーは?」

ノイズのない田舎町の裏通りに笑い声が響いた。

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