第十四夜 -首都- @Hanoi [Vietnam]
夜行バスの旅を終えて、早朝のハノイの街に到着した。
狭いシートと満席でゆとりのない車内に13時間。
揺られ続けて、朝の6:30、ハノイの街の放り出された。
途中のトイレ休憩で前の座席に座っていた日本人の大学生と顔見知りになったが、
その彼と苦笑いしながら、お互い、固まった身体をほぐす。
それぞれの目的地を目指す前に朝食でも食べないか、と声をかけたら、笑顔で応えてくれた。
重い荷物を背負い、まだ眠りについている早朝の街を歩く。
排気ガスが充満していないことは幸いだったが、街の中心まで歩いてもカフェすら開いていなかった。
ようやく見つけたのは、街のど真ん中ともいえる場所にあった24時間営業で有名なフォーのチェーン店。
ハノイのその店は24時間営業ではないらしく、店内は開店前の清掃が施されたばかりだった。
清潔な店内とよく冷えたエアコンが心地いい。
ローカル・プライスよりは高い値段のフォーだったが、荷物を置き、テーブルについた。
互いの行き先や巡ってきた町の情報などを話し、フォーを流し込む。
どうやら彼は叔父が駐在しているらしく、その家に潜り込むらしいのだが、
迎えの電話を入れるにも朝早すぎることに時間を持て余していた。
「店で時間をつぶしている間に宿を探してきてもいいですよ」
彼の思いがけない言葉に甘え、重い荷物を置いたまま、安宿街に向かった。
徒歩で10分ほどのエリアに安宿は並んでいたが、目的としていた宿はシングルが満杯だった。
「チェックアウトの時間にならないとわからないわ」
フロントの若い女性はつれなくそう言った。
それはそうだ、こんな早い時間に尋ねても、部屋の動きはわからない。
安宿はチェックアウトの客が出てこそ、次の客を受け入れられるのだ。
空き部屋が出たらとっておいてもらうように名前を残し、他の宿もあたってみることにした。
「空いているよ、早朝に空港に発ったやつがいるから」
「部屋、見せてもらえるかな?」
「まだ、掃除してないけど、かまわないなら見せるよ」
そういってカギを取り出した彼の後に続く。
古くてこじんまりした宿だったが、部屋は広めで、シャワーとトイレも備わっていた。
「シングルは$9、エアコン付きならプラス$5の$14。ネットを使いたいならロビーにある」
エアコン代で別途$5というのは笑えるが、途上国ではよくある話。
見せてもらった部屋には天井から大きなファンがぶら下がっていて、エアコンなしでも過ごせそうだった。
「この部屋でOKだけど、フエから来たからハノイの陽気がわからないんだ」
「それならエアコン付きがよくなったら、部屋を変えることができるよ」
手際のいい言葉に乗せられ、即決した。
ロビーに無料のPCが置かれているのも、ネット・カフェに足を運ぶ手間が省けて好都合だった。
正面に大きく「カフェ」と記されていたことを思い出し、重ねて尋ねてみる。
「ハロン行きのツアーも扱ってる?」
「あるよ」
「OK。それは好都合。バゲージは預けてあるから、荷物とってまた戻るよ」
「その間に部屋を掃除していくよ」
パスポート番号を記し、サインをすると、チェックインは完了。
彼が待つフォーの店に慌てて戻った。
「悪かったね、お待たせ」
「いや、なんてことないですよ。エアコン効いているし、コーヒー飲みながら、バスで固まった身体をほぐしてました」
「荷物背負って宿を探すのが一人旅の一番の難点でね。ホント、助かった。ここはゴチソウするよ」
「それじゃ、割に合わないですよ、いいですよ」
「いやあ、旅先のこういうひょんなことが大事なんだ」
「じゃあ、ゴチソウになります。そろそろ叔父も電話に出そうな時間です。僕も時間がつぶせてよかった。
まだ数日、ベトナムの滞在が続くんですか?」
「ハロン湾が目的だからね、これからがメインイベントかな」
「いいなあ、僕は一泊したら、翌日の便で帰るんですよ。ハロンにいく時間はなさそうです」
「じゃあ、気をつけて、帰国して」
「そちらも気をつけて、ごちそうさまでした」
「いやあ、お礼をいいたいのはこっちだよ」
出勤時間でニギヤカになりはじめたハノイの中心街で握手を交わし、お互いの道へ歩みを進めた。
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