第十三夜 -返品- @Hue [Vietnam]
路地を巡りながら、目的の品物を探す。
探していたヘッドフォンは「カナル・タイプ」というやつで、これがなかなか見つからない。
耳の穴が小さいのか、ポピュラーなタイプのヘッドフォンだと少しの時間で外れてしまう。
動いてなくても、ポロリと落ちてしまうので、歩きながら音楽を聴くなどというのは到底ムリなのだ。
で、耳に差し込む「カナル・タイプ」となるのだが、コイツがあまりポピュラーでないらしく、道行く店々で売られていない。
電器通りの店を数軒訪ね歩き、ようやく数点、在庫を置いている店を見つけ出した。
店頭では若い男女がたむろしていた。
誰が店員だが、誰が客だか、わからない状態。
彼らのやりとりから察するとどうやら店員の友達が、店先で退屈しのぎに集っているらしい。
アジアの店先ではよくある光景。
これがまったくもって買い物のジャマなのだが、店員も彼らもとんとおかまいなし。
それどころかこちらの買い物に興味津々で、店員とのやり取りにアレコレ口をはさんでくる。
ヒマツブシの材料にされているのかな?
そんな彼らの「お手伝い」もあって、バッタものではないまともなブランドのヘッドフォンを見つけ出した。
値段の安さもあり、2つ購入。
帰国してからも使えるように、予備のつもりで2つ。
それと2つ買えばまけてくれるかな? という淡い期待もあったが、
品数の少ないモデルらしく、割り引きはゼロ。
コピー商品モデルなら格段に値引きをしてくれるらしいが、
ヘッドフォンとなると音質にかかわるので、安さはあまりメリットにはならない。
まあ、一般的なモデルと比べてもさほど高くもなく、ふっかけられてもいないので、手を打った。
SONY製のヘッドフォン、2つで60,000ドンだ。(約$4)
宿への帰り道、フエの街をひと通り巡ってしまったことに気づいた。
郊外の霊廟に足を伸ばす、という手もあったが、憧れの街には拍子抜けした思いのほうが強く、
さらに見所を探すことよりも、バス・ターミナルでもあるカフェの事務所に自転車を走らせていた。
「2時間後のバスに空席がある」という返答を聞いた瞬間、そのバスでこの町を去ることを決めた。
予約を入れると急いで、宿に戻った。
宿のオヤジサンにチェックアウトを告げる。
「もう一泊するといったけど、17:30のバスで発つことにしました。
15時過ぎのこの時間まで部屋を使ってしまったけど、清算してもらえますか?」
「そっか、チェックアウトするか。そうなると一泊とデイユース分だけど、
デイユースといってもうちは値段が値段だから、一泊分もらうことになるけど」
「こっちの勝手な都合なので、仕方ないですよ。$5+$5ですよね」
「そうしてくれるとありがたい。そのかわり出発まで部屋を使っていてかまわないよ」
「行く前にシャワーが使えるのはうれしいな。あ、それと自転車のお金も払います」
「デイユース分くれるならそれはオマケでいいよ」
「ありがとう。そうなるとさっさと荷物を詰めてしまわないと」
「お金は出て行くときでいいから~」
急で勝手な申し出だったので、宿代は仕方ないとあきらめていたが、
自転車のレンタル代、2日分で$2という些細な金額だが、気遣ってくれたのがうれしかった。
それと長い夜行バスの前にシャワーを使えることもありがたかった。
「プチ・ホームステイ」は心地よく、別れがたかったが、フエの街に未練はなかった。
部屋で荷物を詰めながら、車内で食べる果物や飲み物も買いに行かなくては、と思い立つ。
同時に買ってきたヘッドフォンの性能も試しておきたかった。
長い夜行バスの旅が待っているのだ。
「!」
ヘッドフォンのピンが違う。
そのピンはマイクロ・ジャックよりもさらに細いサイズで、
2つのヘッドフォンは2つとも指した先で空回りしていた。
「おい!こんなジャック、日本にはないぜ!」
ハズレを引いてしまったか、と時計を見ながら、悔やむ。
自転車を走らせれば間に合うか? 飲み物や果物も買いたいし・・・
買い物は宿の近所で済ませるつもりだったが、それよりもヘッドフォンが気にかかった。
使えないこともそうだが、暗くて本も読めない夜行バスの車内、
ふたたびの「退屈地獄」に陥るのは避けたかった。
オヤジサンにもう一度、自転車を借りる。
「ドンバの前まで行ってきます!」
「忙しいね~」
急いでいるときはアブナイので、いつも以上にクルマに気をつけながら、自転車を飛ばす。
電器店に飛び込むと、店員と「お友達連合」が驚きの表情でこっちを見ていた。
「苦情じゃないんだ。使えないんだ、これ」
「使えない?聞こえないのか?」
話が長くなりそうだったので、MP3プレーヤーにヘッドフォンを指して見せた。
「ジャックが違うんだ」
「!!おお!」
「お友達連合」が周りを取り囲んでいた。
「合うやつに代えてあげるよ」
そういうと棚から別のヘッドフォンを取り出したが、ジャック部分が合うものは1つしかなかった。
「もう1個ないの?2個欲しいんだけど」
「カナルじゃないやつならあるけど」
「う~ん、他のやつはいらないよ」
「じゃあ、返金するよ」
と、アッサリ交換して、アッサリお金を返してくれた。
レシートもなにも出してもらっていなかったが、手際よく応じてくれた。
やたらと時計を気にしているコチラの気配でも感じ取ったのだろうか。
店員と「お友達連合」と握手を交わすと、ふたたび自転車を飛ばし、宿に戻る。
シャワーを使い、荷物を担ぎ、お金を払い、バス乗り場に向かい、
定刻どおりにやってきた17:30出発のバスの座席に沈み込んだ。
窓からは人の優しさ、気の良さにたくさん触れることのできた不思議なフエの街が見えた。
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2008-12-23 10:54
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コメント(3)
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ベトナム。。。隣だけれど、未だ行ったことがない。。。
ベトナムに限らず、隣の国、いっぱいあるのに、未だ行ったことがない。。。
by mee (2008-12-23 12:51)
ヘッドフォンは返品出来て良かったですね。
ジャックにも国によってサイズが多種あるとは。でも良かった!
by furukaba (2008-12-23 19:58)
>meeさん
コメントありがとうございます!
そうですよね、意外とそちらで暮らしていると、いかないもので…
わたしもシンガポール暮らしのとき、全然行きませんでした。
「いつでもいける」って思っているからかなあ…
>furukabaさん
書き込みありがとうございます!
いや、ベトナムのジャックはたぶんオリジナル・・・
あれって国際規格、とかじゃないんですかね?
異様に細いジャックであせりました(笑
by delfin (2008-12-25 07:27)