Escape ビーチでジャラン・ジャラン─シンガポール [MailMagazine]
Escape ビーチでジャラン・ジャラン─シンガポール
あれはまだシンガポールの旅行会社で働いていたときのことだ。
短い休みに乗り込んだ北へ向かう長距離バスの旅が、
思いがけないアジアン・ビーチ・リゾートとの出会いへと繋がった。
いわゆる現地旅行会社の日本人マネージャーとしてオフィスに詰めていた。
年末やゴールデン・ウィーク、そしてお盆休みを絡ませた夏休みの時期は、
日本を脱出してきた渡航客が倍増し、オフィスにはファイルが山積みになり、観光客を案内するガイドはテンテコ舞い。
海外旅行客は増加の一途で、シンガポールも例外ではなく、
ピーク・シーズンになれば休みは吹っ飛び、深夜までオフィスに缶詰、鳴りまくる顧客用の非常電話に吠え、
日本からひっきりなしに届くドキュメントとにらみ合う日が続いていた。
ホーカーズ(屋台)がデリバリーしてくれる夕食をほおばり、
気づけば朝食のデリバリーをオーダー、オフィスで夜を明かすこともしばしばだった。
ホテルはここで検索!
ピークを乗り越えると休みを取れなかったツケを会社に払わせるために直談判、
有無を言わさず短い休みをもぎ取ると、ザックに荷物を放り込み、町を離れる算段をした。
近隣のビンタン島やティオマン島といったリゾート・アイランドに向かうフェリーもあったが
“男ひとりのリゾート”はなんとなく持て余しそうで照れくさい、
手軽な長距離バスに飛び乗るのが常だった。
ショート・バケーションの行き先に選んだのはマラッカ。
5時間のバス旅は疲れた身体を充電するにはほどよい距離だった。
安宿に荷物を放り込み、リラックスして船着場で美しい夕陽を眺めていた。
夕方のこの時間、まとわりつくような熱気も和らぎはじめ、
濃い夕陽の赤が心地よく身体を包んでいる。
「観光客かい? なにしてるのさ?」
タバコを吹かす職人風のオヤジサンに話し掛けられた。
「ジャラン・ジャランだよ」
マレー語で“散歩”を意味する“ジャラン・ジャラン”という単語を使って、おどけて答えてみた。
「そいつはいい。あんた、マレー語ができるのかい?」
「それは無理だ。シングリッシュ(シンガポール訛りの英語)がいいところさ」
「アラマ~」
「あらま~」(アラマ~はマレー語と日本語では同義語)
オヤジサンに差し出されたタバコを断りながら、笑いあった。
「明日もジャランジャランかい?」
「いや、特に予定はないんだ。いいアイデアはないかな?」
「島に行かないか? こんなヘドロで汚れた海岸じゃないきれいな島が近くにあるよ。
船を持っているからどうだい?」
ていのいい客引きかあ、と苦笑いしながらも予定がない一人旅、だまされたとしても気楽なもの…。
翌日、約束どおりその場所に向かうと、タバコをくわえた彼がいた。
船は沖合い5kmにあるプラウ・ベサールという名の島を目指す。
船旅は、わずかな時間で終わった。この島はいわゆる無人島。
今でこそゴルフコースやガイドつきのツアーなども催されているが、
この頃は本当になにもない島だった。
「泊るところはないからな。夕方、またこの場所に迎えにくるよ」
海岸には観光客や地元の海水浴客がチラホラ。
無人島、というので貸切を夢見たがそううまくはいかない。
ところが目の前には、そんなことがどうでもよくなるほど、美しい砂浜が広がっていた。
こんなに近いのにマラッカの汚れた海岸とは、別の世界が広がっていた。
オヤジサンの言葉にウソはなかったのだ。
人の手が加えられていないビーチ、荒々しい自然のままのジャングル、
人造物が産み出すノイズは一切なく、数えられるほどの人しかいない景色が絶品だった。
こんな場所なら“男ひとりのリゾート”も悪くない、と思い始めていた。
「夕方の迎えを無視したらどうなるのだろう」
ビーチの木陰に寝そべりながら、そんなのんきなことを考えていた。
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あれはまだシンガポールの旅行会社で働いていたときのことだ。
短い休みに乗り込んだ北へ向かう長距離バスの旅が、
思いがけないアジアン・ビーチ・リゾートとの出会いへと繋がった。
いわゆる現地旅行会社の日本人マネージャーとしてオフィスに詰めていた。
年末やゴールデン・ウィーク、そしてお盆休みを絡ませた夏休みの時期は、
日本を脱出してきた渡航客が倍増し、オフィスにはファイルが山積みになり、観光客を案内するガイドはテンテコ舞い。
海外旅行客は増加の一途で、シンガポールも例外ではなく、
ピーク・シーズンになれば休みは吹っ飛び、深夜までオフィスに缶詰、鳴りまくる顧客用の非常電話に吠え、
日本からひっきりなしに届くドキュメントとにらみ合う日が続いていた。
ホーカーズ(屋台)がデリバリーしてくれる夕食をほおばり、
気づけば朝食のデリバリーをオーダー、オフィスで夜を明かすこともしばしばだった。
ホテルはここで検索!
ピークを乗り越えると休みを取れなかったツケを会社に払わせるために直談判、
有無を言わさず短い休みをもぎ取ると、ザックに荷物を放り込み、町を離れる算段をした。
近隣のビンタン島やティオマン島といったリゾート・アイランドに向かうフェリーもあったが
“男ひとりのリゾート”はなんとなく持て余しそうで照れくさい、
手軽な長距離バスに飛び乗るのが常だった。
ショート・バケーションの行き先に選んだのはマラッカ。
5時間のバス旅は疲れた身体を充電するにはほどよい距離だった。
安宿に荷物を放り込み、リラックスして船着場で美しい夕陽を眺めていた。
夕方のこの時間、まとわりつくような熱気も和らぎはじめ、
濃い夕陽の赤が心地よく身体を包んでいる。
「観光客かい? なにしてるのさ?」
タバコを吹かす職人風のオヤジサンに話し掛けられた。
「ジャラン・ジャランだよ」
マレー語で“散歩”を意味する“ジャラン・ジャラン”という単語を使って、おどけて答えてみた。
「そいつはいい。あんた、マレー語ができるのかい?」
「それは無理だ。シングリッシュ(シンガポール訛りの英語)がいいところさ」
「アラマ~」
「あらま~」(アラマ~はマレー語と日本語では同義語)
オヤジサンに差し出されたタバコを断りながら、笑いあった。
「明日もジャランジャランかい?」
「いや、特に予定はないんだ。いいアイデアはないかな?」
「島に行かないか? こんなヘドロで汚れた海岸じゃないきれいな島が近くにあるよ。
船を持っているからどうだい?」
ていのいい客引きかあ、と苦笑いしながらも予定がない一人旅、だまされたとしても気楽なもの…。
翌日、約束どおりその場所に向かうと、タバコをくわえた彼がいた。
船は沖合い5kmにあるプラウ・ベサールという名の島を目指す。
船旅は、わずかな時間で終わった。この島はいわゆる無人島。
今でこそゴルフコースやガイドつきのツアーなども催されているが、
この頃は本当になにもない島だった。
「泊るところはないからな。夕方、またこの場所に迎えにくるよ」
海岸には観光客や地元の海水浴客がチラホラ。
無人島、というので貸切を夢見たがそううまくはいかない。
ところが目の前には、そんなことがどうでもよくなるほど、美しい砂浜が広がっていた。
こんなに近いのにマラッカの汚れた海岸とは、別の世界が広がっていた。
オヤジサンの言葉にウソはなかったのだ。
人の手が加えられていないビーチ、荒々しい自然のままのジャングル、
人造物が産み出すノイズは一切なく、数えられるほどの人しかいない景色が絶品だった。
こんな場所なら“男ひとりのリゾート”も悪くない、と思い始めていた。
「夕方の迎えを無視したらどうなるのだろう」
ビーチの木陰に寝そべりながら、そんなのんきなことを考えていた。
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そこまでのハードな日々を終えた後では、そのままビーチで無人島?の人と化すのを夢想するのも無理は無いかと・・・
で、ロビンソン・クルーソーにはなれたのでしょうか?
by echo (2008-06-15 11:10)
わたしがいたときは一日1,000人を超えるツアー客をさばいてました。
いまやシンガポールは観光客も激減状態だそうで、友達のガイドも「仕事がない」と嘆いております。
島の休日の結末は・・・みなさまの想像に委ねますね~
by delfin (2008-06-15 23:43)