SSブログ

Escape vol.116 免許皆伝 in メキシコ [MailMagazine]

Escape vol.116 免許皆伝 in メキシコ

FH000007.jpg

“ピラミッド”という言葉を聞いてどこの国を連想しますか?

ほとんどの人の頭の中には“エジプト”、そう、カイロ・ギザのピラミッドが思い浮かぶことだろう。
わたし自身も例外ではなく、そのイメージに縛られていた。

そう、この国を訪れるまでは……。

FH000023.jpg

マヤ文明の遺跡を訪ね歩くメキシコの旅は、ユカタン半島東端のカンクーンの街から始まった。
アメリカからの観光客を大量に飲み込むリゾート・シティ、
白い砂浜に身を委ねる観光客に見送られるように、西へ進路を取った。
海辺を離れると、内陸部は木々がすべてを埋め尽し、道路以外のなにもかもを濃い緑で塗りつぶしている。
時折、その緑を切り裂くように、巨大な石の建造物が頭をのぞかせ、車窓越しに異質な感じを投げかけてくる。

緑のカーペットの奥にメキシコの秘密が覆い隠されている感じがした。

FH000012.jpg
世界中どこでも無料通話!Skype.com

緑の森を抜けると待っていたのは巨大なカスティージョのピラミッドだった。
チェチェン・イッツァーの遺跡の中心でもあるこの建造物は存在だけでも驚くに値したが、
隠された秘密にさらにア然とさせられる。
四方に築かれた急勾配の石段はそれぞれが91段を数え、
4面のトータルと頭頂部の1段と合わせると365という数字を刻む。

そして春分と秋分にあたる日には、このピラミッドはさらなる不思議な現象をみせる。

この大きな四角錐が正確に太陽光線を二分し、美しくも奇妙な現象を生じさせるのである。
その日、ククルカンの広場は世界中からの観光客が押し寄せ、人々のため息と驚嘆の声が広場を埋め尽くすそうだ。

FH000008.jpg

ここまで計算され、崇められた建造物の急斜面を這うように上ると、頭頂部から周辺の景色をうかがうことができる。
足元に座する神殿、球戯場、貯水池、天文台などチェチェン・イッツァーの規模の大きさにため息をもらしながら、
彼方に目をやると、濃緑のカーペットが途方もなく広がっていた。

濃緑のところどころに石の建造物が顔を見せ、うかがうコチラを誘っているかのようにも思えた。

次はどこに行こう?
緑のカーペットをめくる楽しみはまだ始まったばかりだ。

FH000024.jpg

人々のアルバムに残るのは観光名所ばかりだが、
記憶に残るものは街角で聞いた音楽、ローカルフード、人々との触れ合い…
旅先の意外な一瞬のほうが色濃く焼きついていたりする。

“旅”とはそういう一瞬を拾い集めるためのものなのかもしれない。

「ヘタだなあ、なんだよその食いかたは……」
タコスを頬張る背中越しにその笑い声は聞こえた。

かじりかけのタコスとこぼれた中身を指差して、おなかの突き出た中年オヤジが言う。

「欲張って中身を詰めすぎだよ」

そう言うと笑いながら、店先から焼きあがったばかりのトルティーヤを持ってきた。
(トルティーヤ=コーンや小麦を薄くのばして焼いたもの。油で揚げてパリパリにしたものもあるが、メキシコではソフトが主流)

FH000025.jpg

「いいか、タコスは片手で食うのがツウさ。両手で頬張っているようじゃ、カッコ悪くてしかたない」
両手で格闘していた日本人を見てシビレがキレたのだろう。

「いいか、みてろよ。コイツを手のヒラに乗せる。その上に、チリコーン(豆)、チーズ、肉、野菜、なにを入れてもいい」

「とはいえ入れすぎるなよ」
左手に乗ったトルティーヤはまるでお皿だ。

「で、サルサかワカモーレ(アボガド)、サワークリーム、好きなものをつける。仕上げにリモーン(ライムのこと)をひと搾り」

「包んでオシマイ。みろ、片手でできるだろう?」
手際よいオヤジの作業工程を見守っていると、トルティーヤを突き出された。

「やってみな。ハポン」
見様見真似でタコスを包み、片手で頬張ると、オヤジが笑った。

「うまいもんだな、ハポネス。これであんたも立派なメキシコ人だ」
市場の片隅の屋台で免許皆伝。

FH000026.jpg

「メキシコの食べ物はうまいかい? 日本の料理とどっちがうまい?」

タコスの向こうでオヤジが楽しそうに笑った。 

☆ブログ・ランキングに参加してます↓クリックしていただけると、書き手の励みになります↓
BS blog Ranking

nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:旅行

nice! 0

コメント 2

echo

10月にアカプルコに行けるかも、なので、寄り道できたらいいなぁ。
そのときは色々、情報を頂きに参りますね。
by echo (2008-06-13 15:43) 

delfin

コメントありがとうございます!
アカプルコから近隣の遺跡に足を伸ばすのもありですよね!
メキシコは食事もバラエティに富んでいるし、楽しいですよ!
by delfin (2008-06-13 22:50) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0