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Escape vol.86 イズミールの夜は更けて─トルコ [MailMagazine]

Escape vol.86 イズミールの夜は更けて─トルコ
http://escape.mailvision.jp/bn/20030904/index.html

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この国を訪れるまで、
トルコの人々があたりまえのように楽しんでいる飲み物は「トルココーヒー」だと思っていた。

しかし実際に街でも村でも遺跡でも目にしたのは「チャイ」という名の紅茶だった。
小ぶりなガラスのコップに熱い紅茶を注ぎ、角砂糖を1、2個落として飲む。

食後になれば、人が集まれば、客がくれば、ひと息つくならば、といった感じで,
この国ではなにしろ「チャイ」なのだ。

暑い夏といえど、彼らの飲み物が変わることはない。
立派な口ひげを蓄えた男どもが小さなグラスから熱いチャイをすする姿は、
眉間にシワを寄せながら熱い茶をすする日本男児に通じる感じがして、
おかしくもあり、懐かしい感じがした。

チャイはお年寄りから若い人まで、砂糖を入れることを除けば、
日本の緑茶のように愛されている飲み物だ。
しかし食後はお茶でさっぱり日本式、という感じで砂糖を入れずに飲むと、
現地の人からは奇異の目で見られ……。

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エーゲ海に面したトルコ第3の都市・イズミール。

リゾートとしても名高いこの街は、
広大な遺跡を有するエフェス(現地ではエフェソスという)からも近く、
また近隣に多くの遺跡が点在することから旅行者が多い街でもある。

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昼間の遺跡巡りを終え、翌朝にはこの街を離れようかと考えていた。

寝るにはまだ早く、一人旅にとって一番退屈な時間になった。
たいがいは他の宿泊者と話しをしたり、旅の情報交換をして、
退屈な夜の時間を貴重な楽しみの時間に変えていたのだが、
この宿は地元客がほとんどで、残念ながらトルコ語もできない身にとっては
部屋でおとなしくするしかない状況だった。

そんな時、ふと、昼間の風景を思い出した。
ホテルの目の前にあった公園で移動遊園地の設置工事をしていたのだ。

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(そこへ行ってみよう)

なにがあるのかはサッパリわからなかったが、
部屋で退屈と顔を突き合わせているよりはましな気がした。

移動遊園地は予想以上に規模が大きく本格的で、乗り物は10種類以上あり、どこも列をなしていた。

なかでも人気の乗り物はメリーゴーラウンドらしく、小さな子供たちが列を作っている。
綿菓子やアイスを売っている店の前では、家族連れが列をなしている。

どこの国でも遊園地の風景は微笑ましい。
散歩だけのつもりだったが、観覧車で街に別れを告げるのも一興、と思い、
チケット売り場の列に並んだ。

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「大人1枚」

書かれてた金額を切符売り場の小さな窓口に差し出した。
その瞬間、窓口の中で手首をつかまれた。

「XXXXXX」

早口でなにを言っているのかわからない。
小さな窓口に入れた手はガッチリつかまれ動かない。
わけがわからなかった。

「おまえは中国人か? 韓国人か?」

腕を引き戻そうとしながら、ようやくその男の言っていることが聞き取れた。

「は? 日本人だよ、ジャパン」

「そうか」

腕が急に自由になる。

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「なんなんだよ?!?!」

「日本人ならいい! 日本人は仲間だ、同胞だ」

「は?」

「日本はロシアからトルコを救ったんだ」

いまだ、わけがわからない。

「悪かったな、こんなところに日本人はこないから、日本人とは思わなかったんだ」

「日本は小さい国なのに、大きなロシアに戦いを挑んだ。
おかげでロシアに攻められていたトルコは窮地を脱することができたんだ」

窓口のオヤジさんはどうやら日露戦争とトルコの関係性を語っているようだった。

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「日本のおかげでおれのじいさんは生き延びたんだよ。だからおれもいるってワケだ」

「はあ」

「驚かせて悪かったな、あっちでチャイでも飲もう、同胞よ! チャイだ、チャイ」

売場から出てきたオヤジさんは大きな声で笑った。

イズミールの夜は更けていく。


写真1; 地中海に沈む夕陽。
写真2; ベルガモンの遺跡。遺跡の奥まで歩みを進めるとひと気がない。
写真3; アスクレピオン(病院跡)にあるトンネル。
      患者を歩かせ、天窓から声をかけ、暗示にかけたという説がある。
写真4; エフェス(英語ではエフェソス)の遺跡。ローマ時代の彫刻が今も残る。
写真5; ローマは武をもって征したが、「教会で教育」を「劇場で喜び」を与えたという。
写真6; モザイク。かつては床一面を覆いつくしていた。
写真7; トロイの遺跡で草刈りをしていたおじさん。


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職務経歴書の書き方の見本

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
by 職務経歴書の書き方の見本 (2014-02-22 12:17) 

delfin

>職務経歴書の書き方の見本さん

ありがとうございます!

ぜひまた気軽に覗きにいらしてください!
by delfin (2014-03-02 01:24) 

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