Escape vol.83 マチュピチュのメイドインジャパン [MailMagazine]
Escape vol.83 マチュピチュのメイドインジャパン
http://escape.mailvision.jp/bn/20030814/index.html
“インカの忘れ形見”である空中都市・マチュピチュを目指す道のりは、
スイッチバックを繰り返しながら、切り立ったアンデスの山をゆらりゆらりと進む登山列車で行く方法と、
インカ道(みち)をトレッキング&キャンプしながら、2~3日かけて進む方法がある。
昔ながらのインカ道を歩く、という濃密な時間の過ごし方に魅力を感じたが、
限られた時間しか与えられていないのが旅行者のツライところ。
後ろ髪ひかれつつ、登山列車の座席に身を沈めた。
線路沿いを流れるウルバンバ川は、日本の清流に似た水の美しさを見せ、
清らかな空気を運んでくれる。
標高3,300mのクスコの町に比べると、このあたりでは酸素も濃厚で、
高山病に怯えていた身体が緊張感から解き放たれ、五感が前にも増して冴えているような気がする。
車窓にはアンデスの山々がそびえ、時折、小さな集落が目に映るだけ。
日常生活を覆う看板、車、騒音はここにはない。
車内に流れるフォルクローレがただ心地いい。
“老いた山”を意味する「マチュピチュ」は標高2,400mの切り立った山の中腹に位置する。
到着したプエンテ・ルイナス駅から上を望んでも「空中都市」の姿を垣間見ることはできない。
山に守られ、覆い隠された秘宝は足を踏み入れなくては見えない造りなのだ。
ここにたどり着いた誰もが「なぜこのような場所に?」と思うほど急峻な山あいに、
あたりまえのように段々畑、神殿、広場、民家などが築かれている。
あまりに整然とした風景が、生活用水は? 食料は? トイレは? 住民数は? など
疑問を抱く訪問者を笑っているようにも思えた。
時代に取り残されて滅びていった空中都市は、心身を浄化するような不思議なパワーを感じさせる。
死んでいるはずの町が静寂の中から力を感じさせてくれ、
生きているはずの都会はノイズとともに人から力を奪っていくのか。
ミネラルウォーターはココが安い!送料無料!
土産屋のおばちゃんは頑なだった。
「絶対に12ソーレスだよ(ペルーの通貨はソル、複数だとソーレスと呼ぶ)」
旅先であまり土産を買うことはないのだが、手編みのザックを見つけ、
壊れかけたリュックの代わりに使おうと思い、それを手にとっていた。
「30ソーレス」という言い値を聞いたときから「10」で買おうと決めていた。
ゆっくりと時間をかけた交渉で、値段は20、15と下がり、最後の歩みよりになった。
「14」
「いや10」
「13!」
「だから10だって」
「無理だね、12だよ」
「払ったとしても11だ」
「それは無理だよ」
売る側なのに、おばちゃんは強気だ。
こうなるとこちらも意地になる。
列車の出発時間が近づくと、こちらの気持ちを見透かしたように畳み掛けてくる。
「ほうら、時間だよ。もっておいき。ただし12だよ!」
日本人と変わらない顔つきをしたインディオのおばちゃんが畳みかけてくるたび、
親戚のおばちゃんに言いくるめられているような気分で、ますます負けたくなくなるのだ。
欲しそうな表情を隠しながら、11という数字を堅持していると、
こちらの顔色を見たのか、おばちゃんが奇妙な申し出を…。
「あんたの持っているそれをくれるなら11にしてあげるよ」
指差した先は、胸のポケットに刺さったボールペンだった。
新妥協案の提出されたわけだ。
「これでいいの?」
「そうだね」
「これと11?」
「そうだよ」
意外な形で契約はまとまり、喉から手が出るほど欲しかったザックがアッサリ手元にやって来た。
客のこちらはそっちのけで、
おばちゃんはうれしそうに日本製のボールペンで試し書きをしている。
単価にすれば1ソルよりボールペンのほうが損なのかもしれない、
それでも日本製のボールペンを欲しがった彼女の気持ちがうれしくもあった。
実はインクがなくなるまで使い切れる日本製ボールペンは世界中で人気、ということを後から知った。
古くは穴の開いた硬貨がめずらしいため、「5円が最適」などといわれたが、
この時から旅先でのプレゼントは、日本製のボールペンになった。
ワイナピチュ(=若き山の意)が見下ろしていた。
写真1; マチュピチュの一番高いところから望んだワイナピチュ
写真2; 世界的に有名な遺跡には観光客も多い。一説には人の多さが遺跡を傷めているとも。
写真3; 遺跡内にあるインティファタナ(日時計)。見学中に小雨に降られた。
写真4; 突出した部分に藁などを縛り付け、屋根を固定したといわれている。
写真5; 隙間がない石組みといわれるが、生命力はたくましい。
写真6; 試しに座ってみたけど、井代が気になって、落ち着いて座っていられないです。
写真7; 地元の人たちは鮮やかな織物に、日よけの帽子が必需。
オリジナル画像はコチラ↓の「Stocks」欄にUPしてあります。
写真販売サイト http://pixta.jp/@delfin 覗いてみてください!
http://escape.mailvision.jp/bn/20030814/index.html
“インカの忘れ形見”である空中都市・マチュピチュを目指す道のりは、
スイッチバックを繰り返しながら、切り立ったアンデスの山をゆらりゆらりと進む登山列車で行く方法と、
インカ道(みち)をトレッキング&キャンプしながら、2~3日かけて進む方法がある。
昔ながらのインカ道を歩く、という濃密な時間の過ごし方に魅力を感じたが、
限られた時間しか与えられていないのが旅行者のツライところ。
後ろ髪ひかれつつ、登山列車の座席に身を沈めた。
線路沿いを流れるウルバンバ川は、日本の清流に似た水の美しさを見せ、
清らかな空気を運んでくれる。
標高3,300mのクスコの町に比べると、このあたりでは酸素も濃厚で、
高山病に怯えていた身体が緊張感から解き放たれ、五感が前にも増して冴えているような気がする。
車窓にはアンデスの山々がそびえ、時折、小さな集落が目に映るだけ。
日常生活を覆う看板、車、騒音はここにはない。
車内に流れるフォルクローレがただ心地いい。
“老いた山”を意味する「マチュピチュ」は標高2,400mの切り立った山の中腹に位置する。
到着したプエンテ・ルイナス駅から上を望んでも「空中都市」の姿を垣間見ることはできない。
山に守られ、覆い隠された秘宝は足を踏み入れなくては見えない造りなのだ。
ここにたどり着いた誰もが「なぜこのような場所に?」と思うほど急峻な山あいに、
あたりまえのように段々畑、神殿、広場、民家などが築かれている。
あまりに整然とした風景が、生活用水は? 食料は? トイレは? 住民数は? など
疑問を抱く訪問者を笑っているようにも思えた。
時代に取り残されて滅びていった空中都市は、心身を浄化するような不思議なパワーを感じさせる。
死んでいるはずの町が静寂の中から力を感じさせてくれ、
生きているはずの都会はノイズとともに人から力を奪っていくのか。
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土産屋のおばちゃんは頑なだった。
「絶対に12ソーレスだよ(ペルーの通貨はソル、複数だとソーレスと呼ぶ)」
旅先であまり土産を買うことはないのだが、手編みのザックを見つけ、
壊れかけたリュックの代わりに使おうと思い、それを手にとっていた。
「30ソーレス」という言い値を聞いたときから「10」で買おうと決めていた。
ゆっくりと時間をかけた交渉で、値段は20、15と下がり、最後の歩みよりになった。
「14」
「いや10」
「13!」
「だから10だって」
「無理だね、12だよ」
「払ったとしても11だ」
「それは無理だよ」
売る側なのに、おばちゃんは強気だ。
こうなるとこちらも意地になる。
列車の出発時間が近づくと、こちらの気持ちを見透かしたように畳み掛けてくる。
「ほうら、時間だよ。もっておいき。ただし12だよ!」
日本人と変わらない顔つきをしたインディオのおばちゃんが畳みかけてくるたび、
親戚のおばちゃんに言いくるめられているような気分で、ますます負けたくなくなるのだ。
欲しそうな表情を隠しながら、11という数字を堅持していると、
こちらの顔色を見たのか、おばちゃんが奇妙な申し出を…。
「あんたの持っているそれをくれるなら11にしてあげるよ」
指差した先は、胸のポケットに刺さったボールペンだった。
新妥協案の提出されたわけだ。
「これでいいの?」
「そうだね」
「これと11?」
「そうだよ」
意外な形で契約はまとまり、喉から手が出るほど欲しかったザックがアッサリ手元にやって来た。
客のこちらはそっちのけで、
おばちゃんはうれしそうに日本製のボールペンで試し書きをしている。
単価にすれば1ソルよりボールペンのほうが損なのかもしれない、
それでも日本製のボールペンを欲しがった彼女の気持ちがうれしくもあった。
実はインクがなくなるまで使い切れる日本製ボールペンは世界中で人気、ということを後から知った。
古くは穴の開いた硬貨がめずらしいため、「5円が最適」などといわれたが、
この時から旅先でのプレゼントは、日本製のボールペンになった。
ワイナピチュ(=若き山の意)が見下ろしていた。
写真1; マチュピチュの一番高いところから望んだワイナピチュ
写真2; 世界的に有名な遺跡には観光客も多い。一説には人の多さが遺跡を傷めているとも。
写真3; 遺跡内にあるインティファタナ(日時計)。見学中に小雨に降られた。
写真4; 突出した部分に藁などを縛り付け、屋根を固定したといわれている。
写真5; 隙間がない石組みといわれるが、生命力はたくましい。
写真6; 試しに座ってみたけど、井代が気になって、落ち着いて座っていられないです。
写真7; 地元の人たちは鮮やかな織物に、日よけの帽子が必需。
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