SSブログ

Escape vol.77 一杯のカフェ・オ・レと─モロッコ [MailMagazine]

Escape vol.77 一杯のカフェ・オ・レと──モロッコ
http://escape.mailvision.jp/bn/20030703/index.html

OR0803100022.jpg

旅先での“憩い”にはその国らしさが現れる。

たっぷりと練乳が注がれた東南アジアの甘い「コーヒー」、
小さなグラスに角砂糖を落として楽しむトルコの「チャイ」、
ストレートで飲んだら奇妙な目で見られたイタリアの「エスプレッソ」…。

モロッコにはふたつの“憩い”があった。

フランス統治時代の名残りを残す「カフェ・オ・レ」と、
新鮮なミントの葉をどっさりと入れた「ミント・ティ」。
どちらも旅の渇いたのどを癒してくれるには素晴らしい役者だった。

そして一杯のお茶が旅の行方を左右することもある。

OR0803100010.jpg

その時、わたしは途方にくれていた。

喧騒のマラケシュを発ち、ワルザザードからさらに東の町を目指している途中、
ティネリールの町で「砂漠へ行くバスはない」というイヤな情報を耳にしていた。
行けばなんとかなるだろう、という楽観的な見通しはホテルのマネージャーにあっさりと否定された。

「ここから東へ向かうバスはないよ」

この町からサハラへの入り口でもある東の町・エルラシディアへは定期バスはないのである。
ワルザザードへ戻り、北に寝そべるオート・アトラス山脈を迂回し、
回り込めばたどり着けないことはないようだが…。

呆然としながら夕食を取るためにホテルを出ると、声をかけられた。

 「おーい、ジャポン! アリだよ、アリ」

モロッコはガイド料をねだるインチキガイドやしつこい土産屋が多い。
“アリ”なんて石を投げれば当たるほどいる名前、
そして英語を話すヤツに限って、小銭をたかってくる輩が多いのだ。

無視して立ち去ろうとすると
「ワルザザードのXXホテルを覚えてないのかい?」と畳みかけてくる。

ホテルの名前に覚えがあったので振り向くと、数日前、同じホテルで話をした男だった。

OR0803100019.jpg
世界中どこでも無料通話!Skype.com

「ここで土産屋をやっているんだ、お茶でも飲んでいけよ」
そう言うと店舗の二階に招き入れてくれた。

「無視されそうになってあせったよ」

「ごめん、押し売りかガイドかと思ったんだよ」

「おれもここで再会するとは思わなかった、カフェ・オ・レか? ミント・ティがいいか?」

民族楽器や土産、雑貨が並べられた店内のカーペットに招かれ、腰を落ちつける。
横には見慣れない男が座っていた。

「こいつはイトコのカリム、レストランをやっているんだ」

アリは英語がわからない彼に、わたしとの出会いを説明していた。

OR0803100016.jpg

「で、ジャポン、ここから先はどこへ行くんだ?」

「いやあ、サハラに行きたくて、エルラシディアを目指していたけど……」

「エルラシディアに行きたいのか?」

「そう、そこから南に下り、サハラに入りたい。でもバスがないんだ」

「じゃあ、こいつと行けばいい」
イトコの肩を叩きながらアリが陽気に話す。

「カリムはエルラシディアにレストランを持っているんだ。
これから帰るところさ。こいつと一緒に行けば問題ないだろう? 明日でいいのか?」

「こいつと行けば相乗りのタクシーもボラれることもないし、
サハラまでの車も手配するように伝えてやるよ」

目の前にあるカフェ・オ・レが冷める間もなく、砂漠への道が開けた。

OR0803100012.jpg
元サッカー日本代表・中田英寿が利用しているメンズファッションサイト

翌朝、カリムと待ち合わせ、タクシーに乗り込む。

助手席2名、後部座席4名、エルラシディアまで約2時間、思い切りギュウギュウ詰めの相乗り。
舗装されていない路面に尻が悲鳴を上げていたが、乗り合った客は慣れているのか誰も文句を言わない。

爆走を終え、エルラシディアの町に着くと、カリムはいともたやすく4WDのタクシーを手配してくれた。
しかも驚くような安い値段で。

OR0803100021.jpg

別れ際にカリムがつたない英語で言う。

「砂漠の帰りにはうちに泊まっていくといい、モロッコの食事でよければご馳走するよ」

美しいサハラの砂を眺めながら、カフェ・オ・レのグラスを傾けると、
アリの笑顔とカリムの優しい言葉が頭の中にぼんやり浮かんだ。

OR0803100032.jpg

写真1; 砂漠の中にポツンとあるホテルからの風景
写真2; 街なかの屋台。フレッシュ・オレンジジュースは一人旅の貴重な栄養源。
写真3; ホテルのキー。あたりに人もいないので、カギも質素。
写真4; わずかな風でも砂が舞う。『サハラ』は現地の言葉で「砂漠」を意味する。
      なので、「サハラ砂漠」というと「チゲ鍋」と同意義です。
写真5; 砂漠の住人。水がなくても暑くても住む方はいるようで…
写真6; ホテルで借りた自転車。まっすぐ行くとアルジェリアに突き抜けるはず。
      でもこの自転車、ペダル片っぽないんだ…
写真7; サハラの日没。真中の白い点はゴミでなく、金星。
      砂の山の上で、日没を待っていたが、日が沈むと寒くて凍えそうになった。

☆ブログ・ランキングに参加してます↓クリックしていただけると、書き手の励みになります↓
BS blog Ranking

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(2) 
共通テーマ:旅行

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 2