SSブログ

Escape vol.70 ジンジャー、シナモン、クミン、ナツメグ─マラケシュ [MailMagazine]

以前、連載していたメールマガジンを再掲します。
連載時は写真が3枚ほどでしたが、
フィルムをデジタル化したので、少し多めに画像入れてみますね。

サイバーエージェント社・旅のメールマガジン『Escape』+α画像です。

----------

Escape vol.70 ジンジャー、シナモン、クミン、ナツメグ ── マラケシュ
http://escape.mailvision.jp/bn/20030609/index.html

ヨーロッパからアフリカ大陸への玄関口となる国・モロッコ。
スペインの最南端・アルへシラスの港からわずか14km、
ジブラルタル海峡の向こうにその姿を眺めることができるヨーロッパからもっとも近いムスリムの国である。

OR0803100017.jpg

この王国は1956年にフランスから独立すると、
パリやロンドンから2~3時間で飛べる距離ということもあり、
ヨーロッパでもっとも人気がある観光国となった。
日本に置き換えたなら韓国や香港といった位置付け。
週末旅行やバカンスに訪れるヨーロピアンはひっきりなしで、
クリスマスシーズンともなればホテルはヨーロピアンであふれかえる。

「砂漠が見たい」

スペインを旅していたわたしは、他愛のない動機でジブラルタルを渡るフェリーに乗り込んだ。
目指すはモロッコ東南、アルジェリアとの境に広がるサハラ砂漠。
金色の砂をこの足で踏みしめてみたかった。

OR0803100011.jpg
中田英寿が利用しているメンズファッションサイト

古都・フェズに次いで二番目に古いながらも、今ももっとも活気あふれる街・マラケシュにたどり着く。

街の中心であるジャマ・エル・フナ広場には日が暮れるにつれ、
さまざまな食べ物やフルーツを並べた屋台や露店、
奇妙なパフォーマンスや民族音楽を演ずる大道芸人が集う。
日が高い時間はなにもなかった広場がまるでお祭りのようなにぎやかさをまとい、
観光客ばかりでなく、仕事帰りの地元の人たちの足も止めさせていた。

イスラム圏にいながらもびっしりと並んだ屋台や夜店の雰囲気はまるでアジアの喧騒や空気を感じさせる。

OR0803100029.jpg

人が集う奇妙なお茶の屋台が目に止まった。
インパクトのある香りがあたりを包む。

「ここはなにを飲ませるんだい?」

「たくさんのスパイスが入った紅茶だよ」

珍しく流暢な英語で返答が帰ってきたことに驚いた。
この国の人々は、モロッコ特有の訛りの強いアラビア語か、フランス語を話す人がほとんどだからだ。

「モロッコの人にしては珍しく英語が上手だね」

「そういうあんたも日本人なのに英語ができるんだね」
お互い顔を見あうと、ゲラゲラと笑いあった。

「飲んでいくかい?」

お茶にも興味があったが、テキパキとした彼の客さばきにも気を惹かれ、
しばらく腰を落ち着けることにした。

OR0803100023.jpg

イスラム圏では酒を飲まない。

もちろん厳粛でない信者はおかまいなしだが、それでも公共の場では決して口にはしない。
そんな人たちが気分転換にこの店でお茶を飲んでいく。

買い物帰りの母娘、仕事帰りのビジネスマン、
誰もがリラックスした表情でお茶のタンクの前に置かれた甘いお菓子をほおばりながら、
熱く甘いスパイス・ティに夕刻のひと時をゆだねる。

どうやらこの店は数あるお茶の屋台の中でも味がいいらしい。

OR0803100024.jpg

彼は手際よく小ぶりのグラスを給仕し、途切れることなく訪れる地元客を小気味よくさばいている。

「このお茶には10種類のスパイスが入っているんだ。わかるかい?」

「ジンジャー、シナモン、クミン、ナツメグ……」

「重要なものを忘れているよ」

「重要なもの?」

「紅茶さ」

英語がわからない客を尻目にふたりで笑いあった。

OR0803100025.jpg

英語を勉強して、この仕事でお金を貯め、ヨーロッパに留学するのが彼の目標。
観光客相手に英語が使えるし、戸惑うこともないので売り上げもでるから一石二鳥の仕事だねと、明るく笑う。

「明日も来るかい?」

「明日は南の砂漠へ向かおうかと考えてるんだ」

「ワルザザードの町へ? あそこの砂漠は石ころだらけだよ。
砂が見たければもっと東のエルラシディアの町から入らないと無理だね」

「そいつはまいった。計画を練り直さないといけないな」

OR0803100031.jpg
 
そういってお茶代の1DH(ディラハム≒15円)コインをテーブルに置き、席を立つと、
彼はわたしの胸ポケットにコインを放り込んだ。

「明日もらうよ」

湯気の向こうに笑顔が浮かんだ。

OR0803100032.jpg


写真1; ターバン。値段はないようなもの、すべては交渉次第。
写真2; 昔ながらの水売り。今では観光客相手のモデル業がメイン?!
写真3; サンドウィッチ屋台。モスリム向けに卵をその場で剥いて挟んでくれる。
      シンプルながら、これがウマイ!
写真4; お茶屋さんと話のなかの彼。オーナーが消えると大いに愚痴りまくるのが笑える。
写真5; 小ぶりのコップにこぼさず入れる。
      彼が面白がって、わたしにもやらせたが、こぼしまくった。。。
写真6; オレンジジュースの屋台。その場で絞りたてをくれる、¥100ほど。
写真7; ジャマール・エル・フナ。夕刻になると、何もない広場に店が開きはじめる。
写真8; 同じ角度から夜景。

☆ブログ・ランキングに参加してます↓クリックしていただけると、書き手の励みになります↓
★人気ブログランキングへ★

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(3) 
共通テーマ:旅行

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 3